臨床心理士連載 おやごころ こごころ バナー

「親バカ」が子どもの心を豊かにする【おやゴコロこゴコロ⑤】

皆さん、こんにちは。

「親バカ」という言葉がありますよね。この言葉に対して、「恥ずかしい。甘やかしすぎ」と、マイナスなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、親は我が子に対して、「うちの子が一番かわいい。他人が見てもかわいいのは当たり前だ!」と思っているくらいでちょうど良いと私は思います。

なぜならそんな「親バカ」な環境のほうが、子どもの心は健康に育っていくからです。

さて、今回はそんな「親バカ」と赤ちゃんの心の豊かさについて解説していきます。

「親バカ」のメリット

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ここでいう「親バカ」とは、周りの目や世間体よりも我が子を優先させ、子どもに寄り添うことができ、理由はなくても「ウチの子は可愛い、いとおしい」と思える・言える親のことです。

親バカの反対は「厳しい親」といったところでしょうか。

小さい頃から厳しく育てようとしているママ・パパが良くないとは言いません。しかし、厳しい家だと、守るべきルールを決めるために、子どもの本質よりも、世間体や常識、代々引き継がれた家族のあり方などを重視しがち。

このような家庭では、基準を家庭の外に求めてしまい、それらのルールから外れないかどうかばかりに目がいってしまうケースが多いように見えます。

ルールやマナーを教えることはもちろん大切。しかし、それらを教えることはもう少し大きくなってからでも十分間に合いますし、心がしっかりと安定した後の方が子ども達も身につけやすいという面もあります。

その点、「親バカ」なママやパパは、子どものことをよく見ていて、子どものことを中心に考えることができているので、多少の世間体や常識から外れていても、あまり気になりませんし、それを子どもに求めることもありません。

子どもに焦点が合っている分、子どもの訴えや、子どもが今何を求めているのかをしっかり把握しているのです。

乳幼児の頃は、まわりの赤ちゃんの成長が気になったり、発育曲線とにらめっこしたり、赤ちゃんの成長が遅いとか早いとかを気にする方も多いかと思います。

初めての赤ちゃんなら尚のことですが、育児に不安や心配を感じるときこそ、「親バカ」になって赤ちゃんのことをよく見ることをおすすめします。

成長はそれぞれ子どものペースですから、多少成長が遅くても、元気に過ごしているか、よく食べてよく眠っているか、笑顔でよく笑っているか、などをよく見てみましょう。

大切なことはいつだって赤ちゃん自身が教えてくれるものです。

「親バカフレーズ」を浴びせよう

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「親バカ」のコツは、親バカっぷりを声に出して、子どもに伝えることです。

次のように、とにかく前向きな「親バカフレーズ」を口に出すようにしましょう。

【親バカフレーズの例】
  • ママとパパは、こんなにあなたを愛している
  • あなたが大好きだよ
  • あなたはそのままでいい
  • 世界でいちばんかわいい(かっこいい)
  • あなたは愛されて当然なんだ
  • 大事にされるべきなんだ
  • とても大切な存在だ
  • 生まれてきてくれて本当にありがとう
  • 私たちは幸せだ
  • ママもパパもあなたに出会えて本当に嬉しい

思いつく限りの「親バカフレーズ」を来る日も来る日も声に出して浴びせて育てることで、子どもたちは

  • この家に生まれてラッキーだ
  • 私は幸せだ
  • 幸せになってもいいんだ
  • ここにいてもいいんだ
  • 必要とされているんだ
  • 家族に愛されている
というポジティブな感情を抱くようになります。

この「理由はないけど、私ってすごい」という感覚を心理学用語では「根拠のない自信」といいます。この根拠のない自信がしっかりと育つことで初めて、たくさんの感情を感じ、受け入れること・素直に気持ちを表現することができるようになります。

すると、子どもの心は豊かに、健全に育つことになるのです。

なるべく早い段階から親バカフレーズを浴びせて、「自分は幸せだ。この世に受け入れられるべき存在だ」という感覚を子どもに植え付けることが親の仕事の一つです。

親バカフレーズのポイント

さて、ご紹介してきた親バカフレーズですが、実は、ただ褒めればいいというものでもないんです。

1. 親バカフレーズに理由・根拠・条件はいらない

「こんなに早く○○できるなんて、すごい!」
「○○ちゃんより、よくできる!」
「○○(ブランド)の服を着ていて、かわいい!」

このように褒められて育つ子どもは、本当に存在を受け入れられていると実感できるでしょうか。

これらは、一見すると親バカフレーズのように聞こえますが、実は理由が付いている「条件付けの愛情」で、子どもたちは本来の自分の存在を認めてもらっているという安心感にはつながりません。

「○○ができるから、すごい」とか「誰かと比べて、よくできる」とか、この時期に条件や理由をつけて育った自信は、折れやすくとてももろいのです。

そのままの自分を受け入れる「根拠のない自信」をしっかりと安定して育てるためには、理由や条件はつけない方がいいでしょう。

2. 思うだけではダメ。きちんと言葉にして伝える

相手は子どもなので、思っているだけでは絶対に伝わりません。

だからこそ、親バカフレーズを何度も何度もくりかえして、赤ちゃんの頃からシャワーのように「浴びせる」必要があるのです。

「あなたはそのままですごい」という気持ちが子ども達の心に根付くように、理由をつけなくてもたくさんほめて、認めてあげましょう。

子ども達にとっては、親から無条件に認めてもらうことが、その後の長い人生を健やかに送るうえで最も必要なのです。

親バカフレーズを浴びて育った子どもたちのその後

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親バカフレーズをたくさん浴びて、情緒豊かに育つ子どもたちは、その後どのように成長するのでしょうか。

1. 気持ちを素直に表現できる

自分のことを「そのままでいい」と思えるので、自分の感情を豊かにそのままに素直に表現することができます。

気持ちを押し殺したり、我慢したり、逆のことを装ったり、周りに合わせて意見や考えを変えたりせずに、嬉しいときに笑って、悲しいときに涙を流すことができます。

とてもシンプルなことですが、人間関係を良好なものにするためにはとても大事なことなのです。

2. 好きなことに集中できる

自分の好きなことに関して、強い意志を持つことができます。そのため、周囲の評価や目を気にして、自分の意見を曲げる、ということがありません。

好きなことはとことん集中して頑張ることができるので、好きなことに対して自分の能力を発揮することができます。

小さいうちからスポーツや音楽を頑張って、一流と呼ばれる域に達する人たちは、親バカフレーズを浴びて育ってきた可能性が高いと思われます。

一流とまではいかなくても、「好きなことに没頭できる」という素晴らしい才能が育つのは、親バカフレーズの力が大きいと思います。

3. 他人と比べない

親バカフレーズを浴びて育った子どもは、「自分は自分、他人は他人」と思うことができます。そのうえ、自分はこのままで十分だと思えるので、他人と自分とを比べることに、価値をあまり感じません。他人と自分との間に境界線が引けるのです。

多少イヤなことがあっても、そこにこだわらずに「そんなこともある。そんな人もいる。まあ、何とかなるだろう」とサラッと受け流すことができるので、余計なトラブルに巻き込まれず、毎日をラクに過ごすことができます。

親バカな気持ちを忘れないで

赤ちゃんを授かるというのは、それだけで本当に幸運で素敵なことです。

ご縁があって、この子が我が家にやってきてくれたことで、ママがママになり、パパがパパになれたのです。

子どもが育つ過程で、「ウチの子だけみんなと違ってたらどうしよう」という不安から、他人と比べてしまうことももちろんあるでしょうし、成長が遅くて心配になることもあります。

それは、赤ちゃんを大事に思うがゆえで間違ってはいませんが、そんなときこそ、赤ちゃんを授かったときの親バカな気持ちを思い出してください。

赤ちゃんがやってきてくれたときの喜びと感動を忘れずに、親バカフレーズとして声に出して、赤ちゃんに浴びせることで、「根拠のない自信」が育ちます。

すると赤ちゃんの心はどんどん豊かになり、成長して大人になっても、毎日を自分らしく過ごすことができるでしょう。

「ママとパパに充分受け入れられた」と感じながら育つ赤ちゃんが増えていくことを願っています。

※次回は12月21日(金)配信予定です。

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佐藤 文昭

佐藤 文昭

さとう ふみあき


おやこ心理相談室 室長。カリフォルニア臨床心理大学院臨床心理学研究科 臨床心理学専攻修士課程修了。米国臨床心理学修士(M.A in Clinical Psychology)。精神科病院・心療内科クリニックの医療現場や群馬県スクールカウンセラーの教育現場での臨床経験を生かし、幼児・児童、思春期から成人に至るまで幅広い問題を扱っています。精神分析的心理療法を中心として、心理検査、知能検査なども実施。また、個人だけではなく、家族というより広い視野を持って取り組んでいます。