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臨床心理士が語る夫婦喧嘩の子供への影響【おやゴコロこゴコロ⑥】

皆さん、こんにちは。
毎日の育児、お疲れ様です。

さて、今回は夫婦喧嘩が子供にどんな影響を与えるかについてご紹介します。

育児中の生活は、月齢次第ではろくに眠れず、来る日も来る日もやることだらけ。そのため、ママの心が疲れてしまうこともありますよね。

そんなとき、余裕がなくてパパを思いやれなかったり、お互いに「もっとこうしてほしい」と求めてしまったりと、我慢していた感情が爆発することがあります。

そこから「夫婦喧嘩」に発展してしまうことも。

では、子供たちはママとパパの夫婦喧嘩を目の当たりにすると、どう感じるのでしょうか。

夫婦喧嘩を見た子供は、自分を責めるようになる

赤ちゃん,女の子

大好きなママとパパが、お互いを攻撃しあっているのを見ることほど、子供にとってつらいことはありません。

小さい赤ちゃんは、自分とママの存在を分けて考えることができない傾向があります。そのため、パパと争っている状況が理解できません。

赤ちゃんは親自身の都合で喧嘩していると考えることができないため、「もしかして、ボク(私)のせい?自分が悪い子だから?」と思い込むようになってしまいます。

子供の脳は、大好きなママとパパを責めずに済むように、「自分が悪いんだ」と思い込もうとするのです。

そのほかにも、夫婦喧嘩は子供に次のような影響を与える可能性があります。

【夫婦喧嘩が子供に与える影響】
  • 「いい子でいなくちゃ」と泣かない子になる
  • 愛情表現が素直にできず、ねじ曲がった性格になる
  • 嫌なことがあっても一人で抱え込むようになる
  • 家を「危険な場所」と認識し、家にいても心が安らがなくなる
  • 「自分は必要とされていない」と思うようになってしまう
  • ママを信じる力が育たなくなる

夫婦喧嘩で子供に悪影響を与えるNGワード

赤ちゃん 泣く

これだけの大きな影響を子供に与える可能性がある夫婦喧嘩。いくら冷静さを欠いていても、子供の存在を否定したり、責任を押し付けるような言葉には、十分に気をつけなければなりません。

【子供に悪影響な夫婦喧嘩のNGワード】
  • ママとパパが喧嘩しているのは、あなたのせいよ
  • お前さえいなければ、こうはならなかった
  • お前が悪い
  • お前が○○(欠点・苦手など)なせいだ

これらの言葉は、一言でも子供の人格に深い傷をつけ、健全な人格形成を妨げます。

こういう言葉を浴びせられて育つと「理由はないけど、自分はダメなんだ」という「根拠のない否定」が根付いてしまい、その後の人生で苦労することになります。

夫婦間の問題を、子供に投影して、子供に八つ当たりをしていないか、子供を利用して不安や不満を解消しようとしていないか、頭に血が上っているときこそ、よく考えなければなりません。

子供への影響を最小限にする「よりよい夫婦喧嘩」のススメ

夫婦喧嘩

これらの影響が出る可能性を理解したうえで、私がおすすめするのは、夫婦喧嘩をしないように、見せないようにと我慢するのではなく、夫婦のいざこざ、関係の変化はあって当然なこととして受け止めたうえで、子供への影響を最小限に抑えた「よりよい夫婦喧嘩」です。

「よりよい夫婦喧嘩」における最大のポイントは、子供たちへのアフターフォローです。

夫婦喧嘩の最中は冷静さを失っているので、とても子供のフォローまでは頭が回らないでしょう。だからこそ、夫婦喧嘩の後や後日になってから、「ママとパパが夫婦喧嘩をしているのは、あなたのせいじゃないのよ」と一言添えてあげてください。

この一言で、不安と自責の念から解放される子供たちがたくさんいます。これは、小さな赤ちゃんでも同じです。

少し理解ができるようになってからは、夫婦喧嘩の理由を説明したり、仲直りするところを見せて、「ママとパパも、夫婦喧嘩をすることもあるけど、基本的には仲良しだよ」とわかってもらうのも大事です。

ただし、説明する際は、パパを悪者に仕立て上げて、子供を愚痴の聞き役に利用しないように注意してください。

夫婦喧嘩の予防策、「パパのせフレーズ」を使おう

赤ちゃん 公園 パパ 遊ぶ

これらのことを考慮したうえで、日頃から夫婦関係を健全に保つことはとても大事なことだと気がついていただけたでしょうか。

パパとの関係を良好に保つことは、子育て中のママにとってはメリットが大きいのです。

育児や家事を手伝ってくれたり、気を遣わずに任せられたり、愚痴を聞いてくれたり、ママを労ってくれたり…。

もちろん、子供を育てるうえでも、パパには「父性を教える」という、なくてはならない大切な役割があります。

パパの存在は、子供にとってもママにとっても、すごく重要なのです。

そんなパパにも気持ちよく家で過ごしてもらうためには、「パパのせフレーズ」を浴びせることがとても有効です。

【パパのせフレーズ】
  • お仕事、お疲れ様
  • いつもありがとう!
  • パパ、頑張ってるね!
  • 家族が毎日元気に過ごせるのは、パパのおかげ
  • パパ、大好き!
  • パパは優秀だね~!
  • ○○(赤ちゃん)のここ(良いところ)は、パパそっくり!

最初は無理のない範囲で初めて、徐々にクセがついてくると、不思議と心からそう思えるようになってきます。

しかも、これを続けていると、同じような言葉を「ママのせフレーズ」として、旦那さんが使いはじめるという現象も起きてくるでしょう。

子供同様、「パパのせ・ママのせフレーズ」を上手く使いこなして、ありのままの自分を受け入れてもらい、家族関係を良好に保って、みんなが元気に過ごせるようにしておきましょう。

「よりよい夫婦喧嘩」は夫婦関係を強くする

夫婦 カップル 手 つなぐ

日々の育児の中で、ストレスが溜まることも、イライラすることも、誰かに八つ当たりしたくなることもあります。

そんな風に感じることはとても自然で、ごく普通のことです。

そういう感情を無理に抑えたり、我慢したり、排除しようとしたりすると、かえって大変なことになりかねません。

そういうときはパパを信じて、夫婦喧嘩をしてみるのも手です。

パパだからこそ、安心して自分の本音を出せるのです。

夫婦喧嘩は、お互いの違いを理解すること、本音でぶつかって更に強い信頼を築くこと、適度にストレス発散ができること、など夫婦にとっては多くのメリットがあります。

しかし、子供にとっては様々な影響を及ぼす可能性が高いので、子供への配慮に十分注意する必要があります。「あなたのせいじゃない」の一言だけでも、忘れずにかけてあげて下さいね。

愛するパパがいるからこそ、こんなに可愛いわが子を授かることができたのですから。

赤ちゃんへのアフターフォローを心掛けながら、大いに「よりよい夫婦喧嘩」をして、「パパのせフレーズ」を使いこなし、夫婦関係に磨きをかけてほしいと願っています。

※次回は1月25日(金)配信予定です。

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佐藤 文昭

佐藤 文昭

さとう ふみあき


おやこ心理相談室 室長。カリフォルニア臨床心理大学院臨床心理学研究科 臨床心理学専攻修士課程修了。米国臨床心理学修士(M.A in Clinical Psychology)。精神科病院・心療内科クリニックの医療現場や群馬県スクールカウンセラーの教育現場での臨床経験を生かし、幼児・児童、思春期から成人に至るまで幅広い問題を扱っています。精神分析的心理療法を中心として、心理検査、知能検査なども実施。また、個人だけではなく、家族というより広い視野を持って取り組んでいます。