↓前回のお話はこちら
近所のマダムに「奥さんはお子さんのお世話しないんだ」と言われる旦那さん。昔はきっと、女性だけが家事育児をするのが当たり前だった。でも今はもう、幸せの形はひとつじゃないから…。
登場人物
私(キョン):ブロガー、イラストレーター。過去病んでいたが一周回って明るい性格。突然の思いつきにより夫を振り回している。毎日の晩酌と読書は欠かせない。夫には「キョン」と呼ばれている。
夫(夫さん):元ダイニングバーの店長。飲食店歴が長く、料理はプロ。温厚で、滅多に怒らない。片付けが苦手。晩酌用のおつまみを考え作るのが好き。私には「夫さん」と呼ばれている。
息子:もうすぐ3歳。ミニカーというミニカーに狂う男児。特に好きなのは消防車で、地元の消防署の方々に顔を覚えられているほど見学に行き熱狂している。
第22話
<つづく>
あとがき
今回の原稿は、今までで一番時間がかかった原稿でした。
というのは、私の技術の問題ももちろんあるんですが、今まで私が夫さんに対して言ってきた言葉の中で、たぶん一番愛を込められたセリフで、その表情を描く、という作業。
「どんなに関係性が変わってもいつも相手に寄り添いたいって気持ちだけは変わらない」
自分はどんな顔をして言ったんだろうか。
そしてその言葉を受けた夫さんの表情が、例えるなら、ヘレンケラーが「水」という物質とその名前とが一致した時の衝撃のような感じで(例えがわかりづらくてすみません)、たぶん漠然と感じていた「愛情」の答えだと確信して衝撃を受けたような感じだったんだと思います。
この感情を表情に落とし込む作業はとても時間がかかってしまいましたが、何回も描き直す中でまた色々と考えが深まっていきました。
なんとなくですけど、以前わたしは「結婚したからには幸せでないといけない」みたいな考えがありました。
どうしてそう思ったのかなぁ…わたしの実家が両親が不仲で悲しい思いをしたので、そう思ったのかなぁ。芸能人の離婚ニュースをたくさんみたりして、漠然とそう思ったのかなぁ。
この辺の理由はあまりはっきりしないのですが、とにかくそう思っていました。
そして「夫」だから愛する。「家族」だから愛する。
「幸せ」でいるには、愛さなければならないと思っていました。
恋人だった時は「あなた」だから愛していたのに、いつからこうなったんだっけ…。
相手に対する愛情は確かにあるんだけども、お互いの立場に追われて、なんか順番逆転してない?という状態になっていました。
「あなた」は「夫」になり
「わたし」は「妻」になり
「あなた」は「父親」になり「わたしに不満をもたらす存在」となり
「わたし」は「母親」になり「夫に口うるさい存在」となっていって
純粋に「あなた」を愛していた「わたし」はいつの間にか遠い存在になったような気がしたことがありました。
けれど、ひょんなことから夫は主夫となって、わたしが家族を養う立場となって、今までの関係性がクリアになったことで、また純粋に夫はわたしを「わたし」と、わたしは夫を「あなた」として接することができた。
結果、すごくシンプルなことなんですけど、「ああそうだったね、わたしたち家族だから相手を愛してたんじゃなくて、”愛してるから家族になった”のね」と思うことができたんです。
めちゃめちゃシンプルで、当たり前じゃんそんなこと〜と昔のわたしは思うかもしれないな…。
しかし、自分にも相手にもシンプルであり続けるのはたぶん難しいんじゃないかと今は思います。
だから話し合うことが必要だし、お互い感謝する必要があって…本当に大変なことだから、できない時もあるかもしれない。今でもたまに言い合いになるし。
でも最後は寄り添えたら、どんなに関係性が変わっていこうが、そのままだろうが、たぶん大丈夫なんじゃないかな、と思っています。
次回予告
「どんなに関係性が変わってもいつも相手に寄り添いたいって気持ちだけは変わらない」。ぶつかることも、すれ違うこともあったけれど、パートナーに対する愛情はこの言葉に込められていました。
旦那さんが主夫になったことで、周りから「かわいそう」と言われることもあるけれど、家族の幸せの形は人それぞれ。弓家さん家族が守りたいものとは…。
次回は2020年11月12日(木)公開予定です。
お楽しみに!
▼漫画の感想はこちらへ!
弓家キョウコ
作者