【小児皮膚科医に聞いた】赤ちゃんをアトピーにならないようにする方法!

赤ちゃんにできるかゆい湿疹といえば、「アトピー」が有名かもしれませんね。しかし、自分がアトピーでもないかぎり、何が原因で、どのような対処をしたらいいのか意外と知らないのではないでしょうか。

そこで今回、小児皮膚科医で赤ちゃんの皮膚トラブルに詳しい、恵比寿mamaクリニックの加藤円香先生に、赤ちゃんのアトピーについてお話をうかがいました。

赤ちゃんのアトピーってどんな病気?

恵比寿ママクリニック 取材

Q.「アトピー」とは、どういう病気なんでしょうか?

加藤先生:アトピーの正式名称は「アトピー性皮膚炎」といって、カサついたかゆい湿疹が特徴です。基本的には体のどこにでも湿疹ができますが、特に顔や耳たぶの下、首、膝の裏、肘の内側など柔らかい皮膚に目立ちます。

厳密にいうと、アトピーと診断されるには3つの条件があります。

  1. アレルギー体質や皮膚のバリア機能異常など、生まれつき素因がある
  2. かゆい湿疹ができている
  3. 湿疹がよくなったり、悪くなったりを繰り返している

ただし、この3つの条件すべてがそろっていなくても、アトピー性皮膚炎と診断されることはありますよ。

とは言っても、かゆみがあって、よくなったり悪くなったりを繰り返していれば、たいていの赤ちゃんはアレルギーやバリア機能の異常を持っているものです。

Q.アトピーの定義は、はっきりしていないということですか?

加藤先生:そうなんですよ。だから、医師によってはアトピー以外の湿疹として診断することもあります。たとえば「皮脂欠乏性湿疹」「小児の乾燥型湿疹」などです。

赤ちゃんのアトピーの原因は?

ホコリ 掃除

Q.赤ちゃんのアトピーの原因は何でしょうか?

加藤先生:赤ちゃんのアトピーの直接的な原因は、汗やホコリ、汚れなどに含まれるアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)です。

しかし、その前提として、以下の2つが大きく関係しています。

  1. 皮膚のバリア機能の異常
  2. アレルギー体質

バリア機能に異常があると、アレルゲンが皮膚から体内に入っていきやすくなります。アレルギー体質だと、アレルゲンが体に入ったときに抗体が作られやすく、その結果、皮膚で炎症が起きて湿疹ができてしまうんです。

家族にアトピーの人がいると子供もアトピーになりやすいと言われるのは、皮膚のバリア機能やアレルギー体質が遺伝することがあるためです。


Q.「皮膚のバリア機能」とは、具体的にどのようなものですか?
皮膚のバリア機能

加藤先生:私たちの皮膚の表面には、ラップ1枚分くらいの厚さの「角質」という層があります。

角質には水分や脂質が含まれていて、皮膚の中に異物が入っていかないように守ってくれているんです。これを「皮膚のバリア機能」と呼んでいます。

しかし、なかには水分や脂質の量が少なかったり、角質がスカスカだったりして、異物が入っていきやすくなっている人がいるんです。

これが、皮膚のバリア機能異常とか、バリア機能が弱いと呼ばれる状態です。

赤ちゃんのアトピーの対処法は?

保湿剤 スキンケア

Q.赤ちゃんがアトピーになってしまったときの対処法を教えてください。

加藤先生:赤ちゃんのアトピーの対処法で重要なのは、湿疹ができているところを洗って清潔にすること、そして保湿剤を使って保湿してあげることです。つまりスキンケアですね。

洗うときのポイント

Q.洗うときのポイントを教えてください。

加藤先生:皮膚に汚れがついていると、バリア機能が弱くなります。そのため、汗をかいたりしたら、そのつど洗って皮膚を清潔にしてください。

ただし、洗いすぎもよくないので、石けんなどを使って洗うのは1日1回にしましょう。それ以外のときはシャワーで洗い流す程度で十分です。

石けんなどを使って洗うときは、しっかり泡立てて、その泡で湿疹を包み込むようにしましょう。手のひらなどで擦ってはいけませんよ。

石けんはしっかり洗い流してください。石けんが残っていると皮膚がアルカリ性になってしまい、バリア機能が弱まってしまうからです。

保湿するときのポイント

Q.保湿するときのポイントを教えてください。

加藤先生:洗ったらそのつど保湿剤で保湿をしてあげましょう。使う保湿剤はベビークリームやベビーローションなどでかまいません。

ただし、湿疹がひどいと刺激があったりするので、その場合はワセリンを使った方がいいと思います。できれば不純物が少ない白色ワセリン(プロペト)を使うといいでしょう。

特におすすめは「サンホワイト」ですね。これは白色ワセリンをさらに精製したもので、酸化しにくく、通常の白色ワセリンよりもさらに不純物が少ないのが特徴です。アトピーの赤ちゃんの保湿にはぴったりですよ。

保湿剤を塗る量の目安は、塗り終わった後に赤ちゃんの肌がテカテカしていて、ティッシュ1枚が貼りつくくらいと考えておけば問題ありません。

ちなみに、皮膚のバリア機能を強くする唯一の方法が保湿なんです。

赤ちゃんのアトピーは予防できる?

保湿剤

Q.赤ちゃんのアトピーは予防できますか?

加藤先生:確実な予防法は今のところありませんが、アトピーになりにくくする方法はわかっていますよ。

国立成育医療研究センターというところが、家族にアトピー患者がいる赤ちゃんを2つのグループに分けて、その後アトピーになったかどうかを調査したんです。2つのグループとは、生まれた直後から保湿しつづけたグループと、保湿しなかったグループですね。

調査の結果わかったのは、保湿しつづけたグループの赤ちゃんは保湿しなかった赤ちゃんに比べて、30%ほどアトピーになりにくいということでした。

つまり、アトピーの予防法も対処法と同じで、皮膚を清潔にして保湿することなんです。

Q.生まれた直後から保湿をしないと予防効果はないのでしょうか?

加藤先生:そんなことはありません。もちろん早く始めるにこしたことはありませんが、気づいたときから保湿をすれば、まったく保湿しない赤ちゃんよりもアトピーになりにくくなるはずです。

赤ちゃんのアトピーは病院に行くべき?

病院

Q.赤ちゃんがアトピーになったら、病院で診てもらうべきですか?

加藤先生:家庭でスキンケアをしつつ、できるだけ早く病院で診てもらった方がいいですよ。

病院へ連れて行く目安は、赤ちゃんが夜しっかり眠れているかどうかです。夜しっかり眠れていないと、赤ちゃんの成長に影響が出てしまいますし、それに対応するママやパパの負担も大きくなってしまいます。

赤ちゃんがかゆがって夜中に起きてしまったり、寝ている最中に無意識に湿疹をかきむしっていたら、病院で診てもらった方がいいと思います。

病院は小児科でも皮膚科でもかまいません。ただし、信頼できて通いやすい病院であることが前提でしょう。

Q.アトピーと診断された場合は、どのような治療を受けることになるのでしょうか?

加藤先生:重症度にもよりますが、基本的には保湿剤やステロイドの塗り薬で治療することになります。

ただし、アトピーの治療は医師によって方針が異なることがあります。ガイドラインはあるんですが、ステロイドを使わない医師もいるし、保湿剤を使わない医師もいます。

しばらく通院してもアトピーが治らないときは、セカンドオピニオンとして別の病院で診察してもらうというのも一つの方法ですね。

赤ちゃんのアトピーにステロイドを使っても心配ない?

ステロイド 塗り薬

Q.赤ちゃんにステロイドを使っても大丈夫なのでしょうか?

加藤先生:ステロイドの副作用を心配される方もいますが、専門医の指示に従って使っているかぎり、副作用が出ることはありません。出たとしても使用をやめれば、たいていの副作用はすぐに治まります。

ステロイドに不安を覚える人はいますが、それは正しい使い方をきちんと伝えてこなかった医者の責任でもあると私は思っています。

しかし、最近はそういったことが見直され、以前よりも状況は改善してきていますよ。

Q.ステロイドによる治療はできるだけ早く始めた方がいいのでしょうか?

加藤先生湿疹の原因である皮膚の炎症は、長引けば長引くほど治りにくくなります。そのため、湿疹ができたら、できるだけ早くステロイドで治した方がいいですよ。

それに、それまでステロイドを使っていなかった患者さんが、ステロイドを使うことで肌がきれいになっていくのを見るたびに、その後の人生のためにもステロイドを使って、できるだけ早く湿疹を治した方がいいと感じます。

赤ちゃんのアトピーは完治する?

疑問 はてな ?

Q.赤ちゃんのアトピーは完治するのでしょうか?

加藤先生赤ちゃんのアトピーは2歳までに70%の子が治るといわれています。2歳で治らなくても、その後に治る可能性は十分あって、小学生頃に治ったという子がけっこういますね。

ただし、一度治っても、成長してから再発する子もいます。

赤ちゃんのアトピーと妊娠中の生活との関係は?

妊婦 お腹 妊娠中 手

Q.赤ちゃんのアトピーは妊娠中の食事や生活スタイルなどと関係ありますか?

加藤先生赤ちゃんのアトピーと妊娠中の生活は関係ありませんよ。すでに述べたように、アトピーの直接的な原因はアレルゲンなので、赤ちゃんが生まれた後の問題です。妊娠中の過ごし方を後悔したりする必要はありません。

赤ちゃんがアトピーになってしまったとしても、「アトピーを完治させよう!」と意気込む必要はないと思います。

完璧を目指すと育児が苦しくなってしまうので、「薬を使いながら長く付き合っていこう」くらいの気持ちで日々生活するのがちょうどいいのではないでしょうか。

赤ちゃんのアトピーには適切に対処しよう

アイデア 電球

赤ちゃんがアトピーと診断されると、ママは大変辛い気持ちになるかもしれません。

ただ、先生のおっしゃる通り、適切なスキンケアや治療を行うことで、症状を軽くしたり、赤ちゃんがアトピーになるのを防いだりすることができます。

赤ちゃんのアトピーで悩んでいる人も、悩んでいない人も、適切に対処して、赤ちゃんの成長をサポートしてあげてくださいね。

取材協力

恵比寿mamaクリニック
恵比寿にある、ママと家族のための漢方&皮膚科クリニック。一般皮膚科だけでなく、小児皮膚科や美容皮膚科など、肌に関する悩みの総合的なサポートを行なう。


小野 佑仁

小野 佑仁

おのゆうじん

ビジネス書・自己啓発書の編集を経て、2017年末から「こそだてハック」「ninaru baby」の編集に携わる。大学院でヒトの遺伝子について研究していたため理系と思われがちだが、自分では文系だと思っている。1児の父として、家庭では主に料理と掃除を担当。なぜか社内では「ポテトさん」と呼ばれています。
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