赤ちゃんを抱っこしていて「なんだか甘い匂いがする…」と思ったことはありませんか?
あの甘い匂い、大人から漂ってきたことはありませんよね?なんで赤ちゃんだけあんなにいい匂いがするのか、気になりませんか?
そこで、ninaru baby編集部が、小児科の先生に赤ちゃんのいい匂いの元を聞いてきました!さて、その気になる正体とは…?
【そのギモン、私が答えます】
小児科/高座渋谷つばさクリニックク武井 智昭
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
赤ちゃんのいい匂いの正体は?
ー赤ちゃんって、独特のいい匂いがしますよね。あの赤ちゃんの甘い匂いって、何の匂いなんでしょう?
武井先生
独特の甘い匂いですよね。正確にはわかっていませんが、あの匂いのもとは、肌の表面の「脂肪」や「汗」だと考えられています。
ーえ!?脂肪ですか?脂肪って油の脂肪ですよね?
武井先生
そうです。赤ちゃんから発する甘い匂いなので、「母乳の匂い」や「ミルクの匂い」と思われがちです。
でも、赤ちゃんの肌から出た脂肪を細菌が分解している過程の匂いや、汗の匂いが混ざり、あの独特の匂いになっていると考えられています。
赤ちゃんのいい匂い、なぜ大人からは出ない?
ーあの匂いが脂肪からくるものだという説は意外でした…。原因が脂肪と汗であるとして、大人の肌からも皮脂や汗は分泌されていますよね?なぜ赤ちゃんの体からしかあの匂いはしないのでしょうか?
武井先生
その前に「乳児脂漏性湿疹」って知っていますか?
ーはい。月齢の低い赤ちゃんの顔や頭などに、黄色いかさぶたのようなものができるアレですよね?
武井先生
そうです。乳児脂漏性湿疹の原因は、赤ちゃんの肌から出る皮脂の量が一時的に増加することにあります。
ー赤ちゃんの肌からは、皮脂が出やすいんでしょうか?
武井先生
ええ。赤ちゃんは、ママのお腹のなかで受けていたホルモンの影響で、生まれてから2〜3か月程度の期間は、皮脂がたくさん分泌される状態が続きます。
ーなるほど。
武井先生
また、赤ちゃんの体は新陳代謝がとても活発です。肌には汗が出る「汗口」という器官があるのですが、その汗口の数は、赤ちゃんと大人で変わらないんです(※1)。
そのため、大人に比べて汗口が密集している赤ちゃんの体では、汗が溜まりやすいんですよ。
ー生まれたばかりの赤ちゃんの肌からは、大人よりも脂肪がたくさん分泌され、なおかつ汗が溜まりやすいため、大人とは異なる匂いがするということなんですね。
赤ちゃんの匂い、強くても問題ない?
ー赤ちゃん特有の匂いが出ているということは、皮脂や汗が体の表面に多く溜まっているという可能性もありますよね?匂いが強い場合、何か病気が疑われることもあるんでしょうか?
武井先生
基本的には大丈夫です。匂いで可能性を判断できる病気には、おしっこから甘い匂いがする「メープルシロップ尿症」という病気などもありますが、それらの病気は、赤ちゃんが生まれたときに行う血液検査などで見つかることがほとんどです。
ーでは、赤ちゃんの匂いが強くてもあまり気にしなくていいということでしょうか?
武井先生
そうですね。あまり神経質になる必要はないと思いますよ。
赤ちゃんの甘くいい匂いが嗅げるのはほんの一瞬
赤ちゃんのあの独特の甘い匂い、脂肪と汗という説が有力とは、意外に思った人も多いのではないでしょうか?
赤ちゃんが成長して皮脂の分泌が落ち着くと、例の匂いは弱くなると考えられます。そのため、赤ちゃん独特の匂いは、赤ちゃんが小さい頃にしか嗅げない匂いでもあるといえますよね。
赤ちゃんの成長は喜ばしいものですが、そのいい匂いを嗅げるのは人生のほんの短い期間。赤ちゃんの育児の「今」を楽しんでくださいね。