自閉症スペクトラム障害をもち、周りのものには全く興味のなかった長男よっぴ。
しかしSexyZoneの中島健人くんに出会ったことで、彼の世界は一気に広がったのである。そんな彼が、ケンティーに会いたいと言う。
これは、長男よっぴ(5歳)とSexyZoneのコンサートに参加するまでの奮闘記である。
↓第1話はこちら
よっぴは、ひっそりと耐えていた
5月5日 こどもの日。
会場である横浜アリーナ周辺は彩り鮮やかなお嬢さん方で溢れかえっていて、夕方でも日が照ってとても暑かった。
よっぴは興奮し過ぎてお昼寝出来ず、16時30分開場なのに結局14時過ぎには会場付近に着いてしまった。
予行練習で何度か横浜アリーナまで連れてきたとはいえ、この人混み、暑さ、そしてお昼寝失敗、待つことが嫌いな性分で、すっかりよっぴは疲弊していた。
開場時間まで近くの公園の木陰で涼んでいた。
それでも帰りたいとは言わなかった。
泣いたり、パニックにもならなかった。
ひっそりと耐えていた。
ケンティーに会いたいもんね。すっごく成長したね。
全くもって私のペース配分ミスで、よっぴには申し訳なかった。
16時、コンサートに一緒に入ってくれるお友達と合流した。
よっぴは全く目も合わせなかったけど、通常運転でこれなのでこの場をお借りしてごめんなさい。
はじめての世界に、ドキドキ。
さて入場!
デジタルチケットをピッとかざすとカシャカシャカシャーとチケットが出てきた。チケットが出たこの時点で初めて席番が分かる。
初めての親子席のイメージは天井席だった。ずっと座っていられるだけありがたや。子供が騒いでもすぐ出られるように、きっと出入口近くに違いない。
そんなつもりで実際に発券された席に行くと…
まさかの神席。
メンバーが通る通路の前から3列目くらいだった。
ひえぇ…ご褒美がすぎる。
ジャニーズはなんて子どもに優しいんだ…。
開演前の会場は涼しく、モヤがかかりレーザーの光がボヤけとても幻想的だった。
よっぴは何を言う訳でもなくてぼんやりと眺めていた。
開演すると目の前で勝利くんが登場し、何度もマリウスくんが行き来してた。ケンティーだって走り抜けてった。風磨くんは髪が真っ赤でりんごちゃんだった。
よっぴは椅子にもたれかかって、目の前に広がるショーをやっぱりぼんやり見ていた。
たまに口ずさみながら。
普段の彼を知らない人が見たら、つまらなそうに映ったかもしれない。
でも、私には彼がワクワクして楽しんでることが伝わってきた。
それだけで胸がいっぱいなのに、私の前でも同じだけ素晴らしいエンターテインメントが広がる。
彼らは私たちを楽しませようと全力で会場を走り回ってくれている。
よっぴ、お母さんもSexyZone大好きになったよ。
連れてきてくれてありがとうね。
終演後、お友達との挨拶もそこそこに急いで帰った。
よっぴ、私の世界も広げてくれてありがとう。
その日、寝る前によっぴからたくさん感想が出た。
彼の言葉がこんなに出ることが珍しかったのでとても驚いた。
「勝利くんは本物の銃をうったよね」
そうだったね!おまわりさんにはないしょね!
「ジャニーズはやっぱり魔法がつかえるんだ」
嵐の松潤のMJウォーク(※1)を見て以来、私もそう信じている。
「ケンティーさいしょわかんなかった」
髪色が違ったもんね。
「でもカッコよかった」
わかりみ。
「あのね、しろいケンティーがね鏡の黒いケンティーにおどろいてね、キャンディー落としたから涙流してね、このこわい曲になっちゃったんだよ」
ケンティーソロ曲についての彼なりの解釈。
「ケンティーがランドセル赤かったからよっぴも赤にする」
私の中のマリウスがジェンダー論を…これについては保留してもらった。ごめんマリウス。
他にもいろいろ言ってたのに、メモがこれしかなかった…。
とにかく楽しかった。
当日の写真は、まったくない。
はぐれないよう、手を繋ぎ、気持ちを折れさせないよう、声をかけ、不安にさせないよう、肩を抱く。
シャッターを切る余裕はなかった。
会場には関係者各位からのお花が盛大に飾られていて有名人の名前も!
ミーハー心がウズウズしたけれど、私と彼の心に残れば写真として残さなくても良いかな。
いつの間にか物事の価値観や優先順位がかわった自分に驚き、なんか、母になってたんだな(6年目にして)(遅い)。
(※1)嵐のコンサートで松本潤が披露した、ワイヤーで吊るされた状態で空中を歩く演出のこと。
君の世界が、もっともっと広がりますように
興奮して熱を出したら困るから当日の朝。
「おはよう、今日はケンティに会いに行くよ」
と伝えた時の歓声をあげて嬉しさがこぼれた顔。
当日用に買った青いお菓子や一生懸命作ったうちわ。
タオルや着替えをリュックに入れながら何度も「お母さんありがとう!」「本当にケンティーいるかな?」とジェットコースターな感情。
青い帽子(メンバーカラー)と黒い帽子(ソロ曲の衣装っぽい)で心底悩んでる姿。
会場までの道、ぎゅっと繋いだ手に力が込められてワクワクが伝わってくる。
みんなが同じグッズを持って、みんなが楽しそうで、よっぴの目もキラキラしてて。
なんか覚えがあるなぁ。
母に手を引かれて舞浜から夢の国へ歩いた小さな自分を思い出した。
よっぴのおかげでSexyZoneを好きになれたし、SexyZoneのおかげでよっぴは好きを力にしてる。
今回のSexyZoneのライブ「PAGES」のコンセプトは、”Photo Album Gathered Emotion SexyZone”。
まさにその通りのライブだった。
私が今まで行ったライブで1番いろいろな感情が湧いて、たくさんの想い出を作ってもらった。
私は湧き出るいろいろな感情をかき集めて、心の中のアルバムにそっとしまっている。
5年後、10年後、20年後、
あなたが大きくなって、ジャニーズなんて、って言う年頃の男の子になっても、私はきっとこの記憶が蘇るたびに胸がぎゅっと締め付けられるんだろうな。
素敵な想い出を本当にありがとう。
おしまい
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ちびと
作者