赤ちゃんが寝ているときに歯ぎしりをしたり、急に寝言を発しながら泣き叫んだり、睡眠中のクセで悩んだ経験はありませんか?
今回は、赤ちゃんの歯ぎしりや寝言泣き、夜驚症(やきょうしょう)などの睡眠中のクセはなぜ起きるのか…その真相に迫ります。小児科医をはじめ、歯科医師や臨床心理士と、各分野のプロフェッショナルに伺った対処法も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
赤ちゃんの寝言泣き、歯ぎしり…
睡眠中のクセで気になったものは?
赤ちゃんの寝ているときのクセで気になったものを先輩ママにアンケート(※1)で聞いたところ、一番多かったのが寝言・寝言泣き。続いて僅差で指しゃぶりでした。
ママの体を触るも25%と、ママの約4人に1人が気になるクセとして回答していました。歯ぎしり・食いしばりと夜驚症は共に13%、その他の中では、首を左右に激しく振るというクセが目立ちました。
赤ちゃんの寝言泣きの原因は?
約半数の先輩ママが気になるクセとして挙げていた、赤ちゃんの「寝言・寝言泣き」。いったい、何が原因で起きてしまうのでしょうか?
日本小児科学会専門医でもある、小児科医の武井智昭先生に伺いました。
武井先生
言語や感情の発達が目覚ましい時期なので、その過程で、寝ているときにも言葉が出てしまうのだと思われます。寝言や寝言泣きはある意味、成長の証です。
赤ちゃんの寝言泣きを予防したい場合
赤ちゃんの寝言・寝言泣きが成長の過程で起きるものだと分かっていても、夜中、赤ちゃんの声にびっくりしてママが起こされてしまうなどのお悩みの声も。
少しでも予防したい場合は、どうすれば良いのでしょうか?
武井先生
寝る前に思いきり甘えさせてあげる、抱っこをするなど、とにかくスキンシップを増やすと良いですよ。
赤ちゃんが睡眠中に指しゃぶりをする原因は?
気になるクセとして寝言・寝言泣きの次に多かったのが、睡眠中の赤ちゃんの指しゃぶり。
指しゃぶりに関しては、幼児から大人まで幅広い年齢の人たちの心と向き合っている臨床心理士の佐藤文昭先生に伺いました。
佐藤先生
「お腹がすいた」とか、ママと離れて一人で寝るときに初めて感じる「さみしい・不安」という苦痛に耐えるため、自分で自分を安心させようとして指しゃぶりをしています。
ママが自分の物ではないと学習する過程でよく見られます。また、指が自分の物であることを学習しているという一面もありますよ。
睡眠中の指しゃぶりを予防したい場合
指しゃぶりは、睡眠中でなくてもよく目にする赤ちゃんのクセでもあります。しかし、睡眠中ずーっと指を離さないなど、あまりに指しゃぶりばかりしていると少し気になってしまいますよね。
予防したい場合はどうすれば良いのか、佐藤先生にアドバイスをいただきました。
佐藤先生
必要があるからやっている行為なので、無理に止めさせようとしなくて大丈夫。
赤ちゃんのペースで必要がなくなれば自然と止めることなので、「そのうちやめるだろう」くらいに構えているとママも赤ちゃんもラクですね。
また、指しゃぶりは不安のサインであることも。「この子は、今不安なんだな」と不安を受け止めて「大丈夫よ」と声をかけ、抱っこやスキンシップを通して安心させてあげましょう。すると、早めに指しゃぶりから卒業できるかもしれません。
赤ちゃんが睡眠中にママの体を触る原因は?
夜寝ているときに、「いつも赤ちゃんが体のどこかに触れてくるのはなぜだろう?」と、疑問に感じることもありますよね。
その疑問に関して、引き続き臨床心理士の佐藤先生にお話を伺いました。
佐藤先生
指しゃぶりと同じで、ママが自分と違う存在だということが分かってきて、「さみしさ・不安」を感じていることが考えられます。
ママとつながっていたい・ママが近くにいることを確認したいという気持ちから、触っているのです。
睡眠中ママの体を触るのを予防したい場合
赤ちゃんが安心したくてママの体を触るのは、とても愛しい行為。ですが、強く掴まれるあまりママが眠れなくて辛い…なんて場合も。
先輩ママからも、こんなお悩みの声が届いています。
赤ちゃんが触り過ぎてママが寝不足に…
娘は寝ているときに、なぜか私のおへそを触ります。最初は「へその緒で繋がっていたから落ち着くのかな?」なんて可愛く思っていたのですが、あまりにグリグリ触り続けるので、痛過ぎて眠れない日もあります。(つーちゃん 11ヶ月のママ)
子供の手を無理に離すのは可哀想だけど、ママも睡眠を妨げられて辛い…。そんなときにおすすめの予防方法を、佐藤先生が教えてくださいました。
佐藤先生
ママをしつこく求めてくるのは「寂しい」というサインです。同じ部屋で寝ていても、ママと離れて(分離)自分一人で寝ることに寂しさが出てくることは、とても自然なことです。
寂しさを分かってあげて「ママはいつでもここにいるよ」と声をかけ、たくさん抱きしめてあげましょう。
赤ちゃんの要求を「ダメよ」と否定するのは逆効果。更に強く執着することになりかねないので、しつこいときほど10秒くらいギューっと抱きしめる・手をにぎるなどして、しっかり受け止めてあげると赤ちゃんが安心できますよ。
成長に伴い、徐々に分離ができてくると、自然とママから離れていきます。
赤ちゃんが睡眠中に歯ぎしり・食いしばりをする原因は?
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、大人だけのクセではありません。赤ちゃんでも歯ぎしりや食いしばりをすることがありますが、どんな原因が隠れているのでしょうか。
子供から大人まで、多くの人たちの歯の治療を行なっている歯科医師の和田慎一郎先生に伺いました。
和田先生
大人は「噛んで」と言われると、無意識に噛む場所や噛む高さを合わせることができます。しかし、赤ちゃんの場合は、噛む場所や噛む高さがまだ定まっていなかったり、あるいは生え替わりの影響で噛む場所や噛む高さが変化します。
そのため、左右の噛む筋肉のバランスや、上下左右的な位置関係を合わせるために、意図的に歯ぎしりで歯をすり減らして調整しているのだと思いますよ。
歯ぎしりや食いしばりと聞くと、どうしても良くないイメージが先行すると思うのですが、大人の歯ぎしりと赤ちゃんや子供の場合は少し役割が違うため、過度に心配する必要はないと感じます。
赤ちゃんの歯ぎしり・食いしばりを予防したい場合
赤ちゃんが寝ているときに激しく歯ぎしりや食いしばりをしている様子を見ると、将来の顔の骨格や歯並びに影響しないか不安を感じるママもいますよね。
そんなときは、どう対応したらよいのでしょうか。
和田先生
個人的に赤ちゃんや子供の歯ぎしり食いしばりは、そこまで気にすることはない問題だと感じているため、基本的には何もしなくて大丈夫だと思います。
ただ、子供が「歯がしみる」「痛い」と言い出したり、歯に違和感を感じたりしているようなときは、すぐ小児歯科を受診するようにしてくださいね。
虫歯でないことが大前提ですが、歯があまりにすり減ってしみる、痛い場合には処置が必要なこともあります。
赤ちゃんの夜驚症の原因は?
夜驚症は、子供が夜中に突然起きて泣き叫ぶ、恐怖に怯えるなどの症状が見られる状態のことを言います。一般的に3〜6歳の間の子供によく見られ、睡眠時驚愕症とも呼ばれています(※2)。
子供が夜驚症を引き起こす原因は、一体どんなものが考えられるのでしょうか?小児科医の武井先生に伺いました。
武井先生
夜驚症になる子供の特徴は、眠りが浅い傾向があります。また、スマートフォンで動画を見た際などで浴びるブルーライトの影響も示唆されています。
夜驚症を予防したい場合
夜中に子供が突然泣き喚いて興奮状態になってしまったら、そばで見ているママも胸が苦しくなりますよね。少しでも予防できる方法はあるのでしょうか?
武井先生
先ほどブルーライトの影響を挙げましたが、寝る前は子供に動画をあまり見せないようにするなど、子供が落ち着いて眠れるような環境を整えることをおすすめします。
赤ちゃんが睡眠中に首を左右に激しく振る原因は?
先輩ママへ実施したアンケートの「その他」の回答で一番多かったのが、赤ちゃんが睡眠中に首を左右に激しく振るクセ。
なぜ赤ちゃんがこのような行動を取るのか、こちらも小児科医の武井先生に伺いました。
武井先生
赤ちゃんの首の筋肉が発達してくると、意思表示の1つの方法として首を振ることがあります。また、後頚部の体温上昇により不快感を感じて首を振ったという可能性も考えられますね。
睡眠中に首を左右に激しく振るクセを予防したい場合
なんだか苦しそうにも見える、首を左右に激しく振るクセ。落ち着かせるために、何かママができることがあればしてあげたいですよね。
そんなとき、すぐに実践できる予防方法を教えていただきました。
武井先生
意思表示の1つであり、成長の過程での1つのパターンなので、そこまで心配する必要はありません。自然にしなくなりますよ。
ただ、赤ちゃんが暑がっていて首を振っている様子が見られた場合は予防してあげましょう。
首が暑く感じないように冷却シートなどで冷やす、少しゆったりした服を着せるなど首元の風通しを良くするなどの予防方法がありますよ。
赤ちゃんの寝言泣きなどの睡眠中のクセと上手く付き合おう
赤ちゃんの歯ぎしりや寝言泣きなどの睡眠中のクセは、ママとしては気になるところですが、必ずしも無理にやめさせた方が良いものではありません。
ママへの寂しさや甘えから赤ちゃんが行ってしまうクセも多いので、赤ちゃんの気持ちに寄り添ってあげてください。赤ちゃんが安心できることが、一番の安眠にも繋がると思いますよ。
取材協力:武井 智昭
小児科医/高座渋谷つばさクリニック
日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。
取材協力:佐藤文昭
臨床心理士
おやこ心理相談室 室長。カリフォルニア臨床心理大学院臨床心理学研究科 臨床心理学専攻修士課程修了。米国臨床心理学修士(M.A in Clinical Psychology)。精神科病院・心療内科クリニックの医療現場や群馬県スクールカウンセラーの教育現場での臨床経験を生かし、幼児・児童、思春期から成人に至るまで幅広い問題を扱っています。精神分析的心理療法を中心として、心理検査、知能検査なども実施。また、個人だけではなく、家族というより広い視野を持って取り組んでいます。
取材協力:和田 慎一郎
歯科医師/和田デンタルクリニック亀戸
東京医科歯科大学卒業。入院施設もある北海道の大きな歯科医院にて研鑽を積み、その後、東京の会員制歯科医院にて10年間、院長として勤務。2016年より和田デンタルクリニック亀戸 を開院し、院長を務めています。綿密なカウンセリングと治療計画に定評のある会員制治療も人気。会員制歯科医院での10年の経験を生かし、世界高標準の清潔・滅菌レベルの高度な治療を多くの患者さんに実践しています。
※1アンケート概要
実施期間:2018年12月9日~12月10日
調査対象:子育てアプリ「ninaru baby」を利用しているママ
有効回答数:776件
収集方法:Webアンケート