赤ちゃんは生後6ヶ月頃に免疫が切れて風邪を引きやすくなる、って本当?

「母乳の免疫のおかげで赤ちゃんはしばらく風邪をひかない」と聞いたことがある人も少なくないでしょう。一方で、先輩ママから「6ヶ月過ぎたら急に風邪をひくから気をつけて」と言われたことがある人もいるかもしれません。

生後6ヶ月を過ぎると本当に赤ちゃんは体調を崩しやすくなるのでしょうか。その頃の母乳には免疫が含まれなくなるのでしょうか。

そんなママたちが気になる疑問を、小児科医の先生に聞いてきました。もし本当なら、その対処法も教えてもらっちゃいましょう!

【そのギモン、私が答えます】

小児科/高座渋谷つばさクリニック武井 智昭

武井 智昭

日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担当しています。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として診療を行っています。

生後6ヶ月頃に風邪をひいたり体調を崩す赤ちゃんが多い?

武井智昭,小児科医

ーそれまで健康だった赤ちゃんでも、生後6ヶ月くらいから発熱や鼻水など、急に体調を崩すようになったという話をよく聞きます。これって本当なのでしょうか?

武井先生

武井先生

本当です。そういう傾向は確かにあると思いますよ。

ーやはりホントなんですね…。その理由として「母乳の免疫が切れるから」という情報を聞いたことがあります。

武井先生

武井先生

確かに、原因として考えられるのは「免疫力の低下」です。ただ、原因は母乳だけではないですよ。

生後6ヶ月前後まではママのお腹のなかにいた頃にもらっていた免疫のおかげで、体調を崩しにくい状態が続きます。

ーそうなんですか。

武井先生

武井先生

ええ。それに加えて生後6ヶ月頃は、離乳食を始める時期でもあるので、それまで母乳から免疫力をもらっていた赤ちゃんは、離乳食期にはそれが少なくなります。

つまり正確には、「母乳の免疫が切れるため」ではなく、「胎児のときにもらった免疫が弱くなるタイミングで、母乳から免疫をもらう機会がそれまでより少なくなるため」と言ったほうがいいでしょう。

ーなるほど。胎児の頃の免疫が弱まるのと授乳の機会が減る時期が重なるのが、原因でもあるのですね。

生後6ヶ月頃、免疫力が低下した頃の赤ちゃんがかかりやすい病気は?

ー生後6ヶ月前後の赤ちゃんは、免疫力が低下する傾向があるために、体調を崩しやすくなるとのことでしたね。かかりやすい病気などはあるのでしょうか?

武井先生

武井先生

やはり風邪でしょう。特に、秋から冬には咳や喘息を引き起こすRSウイルスなどへの感染が心配です。また、嘔吐や下痢の原因となるロタウイルスも、乳児がかかりやすい病気の代表です。

ーロタウイルスは予防接種がありますよね?予防接種をしていても感染するのでしょうか?

武井先生

武井先生

ロタウイルスのワクチンは初めて感染したときの重症化を防ぐものです。ロタウイルス自体は5歳までにほとんどの子供が感染すると言われているほど、感染力が強いウイルスなので、ワクチンを接種したとしても、感染を完全に防ぐのは難しいのです。

免疫力が低下した時期の赤ちゃんを病気にさせない方法は?

佐野家 赤ちゃん 寝顔

ーでは、免疫が減る時期の赤ちゃんを病気に感染させないためには、どのようなことに気をつけたほうがいいのでしょうか?

武井先生

武井先生

完璧に防ぐ、というのは正直難しいかもしれません。ただ、ある程度は日々の行動で予防することができます。一番簡単にできるのはママ・パパや兄弟姉妹たち家族の手洗い・うがいですね。

ーまずは家族からうつさないようにすることが大切、ということですか?

武井先生

武井先生

そうですね。しかし、RSウイルスなどは、大人や一度かかったことがある子供が感染しても、鼻水などの一般的な風邪症状くらいしか現れないことがほとんどなんです。

ーじゃあ、RSウイルスに感染しているかどうか、判断するのは難しいですよね?

武井先生

武井先生

そうなんです。そのため、上のお子さんに鼻水と咳の症状が出ていて、そのうち下の赤ちゃんがRSウイルスに感染していた、という例も少なくないですよ。

ーつまり、家族に風邪のような症状が見られたら、できるだけ赤ちゃんには接しないほうがいいと。

武井先生

武井先生

本当はそうなんですが、現実的に完全に隔離するのは難しいですよね。だから、ママ・パパのどちらかが体調不良のときは、できるだけもう一方が育児をするなどして、できる範囲で赤ちゃんとの接触を減らすのがいいでしょう。

免疫力が低下する生後6ヶ月頃の赤ちゃんを守るために、まずは家族から予防を!

家族 夫婦

生後6ヶ月頃の赤ちゃんが、体調を崩しやすいというのは、やはり本当でした。

しかし、その理由は「胎児の頃の免疫力が弱まる」のと、離乳食への移行によって「母乳からの免疫をもらう機会が減る」ためということでした。

細かい理由はどうあれ、免疫が減る時期の赤ちゃんには、病気にかからないための予防策が必要なのは間違いありません。

赤ちゃんは自分で自分の身を守ることはできません。そのため、ママやパパ、お兄ちゃんお姉ちゃんなど、まずは家族が病気にかからないように心がけましょう。

そして、もし発熱や咳、鼻水や嘔吐など、病気のような症状が赤ちゃんに現れたら、なるべく早めに病院を受診してくださいね。