PICKUP育児エッセイ

君がいない人生はもう10年以上も前のことなんだ。|PICKUP育児エッセイ#33

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「元気な女の子ですよ!」

10年前の6月9日。ママの10時間以上に及ぶ死闘の末、君はこの世に生をうけた。

出産に立ち会ったパパは君がうまれたとき、正直、感動より安堵の方が大きかった。それほどに出産とは心身ともに削られるのだ。まあ、ママからするとパパのそれなんて、鼻くそみたいなものだけれど。

当時、パパとママは22歳だった。周りに比べて、どちらかというと早めの結婚になるとおもう。あれからもう10年がたつのか。

そう考えると、平凡な我が家だけど、やっぱり感慨深いものがある。あらためて振りかえると、本当にいろんなことがあったなと。

小さかった君は

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君は、おむつを替える数分ですらじっとしなかった。

お風呂に入れるだけでも一苦労だった。徐々に力がついてくると、何が楽しいのか、君はびよんびよんとカエルのように足で湯舟をけった。

そのせいで、君を支えていた手が外れ、君が湯舟の水面下へ行ってしまったこともあった。

首が座りはじめると、パパの寝ころんだお腹に君を座らせて遊ぶのがよくある日常の一コマとなった。お腹をプカリと浮かしてやると君はよく笑った。寝たふりをして、いきなり「うわぁ!」と大きな声をだしてやる。

そんな、ベストオブ面白くないことにも、君はケラケラと笑ってくれた。

ご飯を食べながら眠ってしまう君は、今でもよく思い出すほどに可愛かった。

頭がポロンととれて、どこかその辺りに転がっていくのではないかというぐらい、君は頭をこくんこくんと揺らし、口いっぱいにご飯をほうばっては、いつも幸せそうに眠った。

ママが大好きな君は、ママが家にいないだけでいつも涙目になっていた。パパに迷惑をかけてはいけないと子どもながらに思ったのだろう。小さい体でなんとか涙をこらえる姿が、逆に泣けた。

いまでもマンガが大好きな君だけれど、うんと小さいころから、君はよくアニメを見ていた。なかでも、カレーパンマンには並々ならぬ愛情があった。なかなかに渋い推しメンだよなぁと、夫婦で笑った。

あと、そやつのぬいぐるみを見つけるのには、思いのほか苦労した。

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少しお姉さんになった君は

弟ができた君は、しっかりしたお姉ちゃんになろうと君なりに頑張っていた。ママの口調をまねて弟を叱ったりしていた。

悩みごとなんて、まだそれほどないだろう赤ちゃんの弟に、なぜか勇気を与えるような、励ましのメッセージを贈ったりもしていた。

今でも仲良しの兄弟であることを、パパはとても嬉しく思っている。

幼稚園に通いはじめた君は、人見知りをかなり爆発させていた。

家では変顔や意味の分からない一発ギャグ、奇妙な動きのダンスと個性豊かにふるまう君だけど、幼稚園ではそうもいかなかったらしい。

大丈夫かなと、とても心配した。でも、そんな親の心配は杞憂に終わった(親の心配事のほとんどがそうであるように)。徐々に幼稚園に慣れた君は、友だちができたと日々はしゃいでいた。

絵を描くことが昔から、そして今でも大好きな君は、幼稚園時代、たくさんの賞を貰った。そのことが親として、とても誇らしかった。親のひいき目があるにしても、君の絵はまわりより数段うまい。審査員の目も確かだなと、偉そうに思ったりもした。

小学生になった君は

ランドセル 小学生 女の子

小学校に上がった君は、いくつかの問題にぶち当たっていた。だんだん、そんなことも増えていくんだろうなと、自分のことでもないのにとても胸が締め付けられた。それでも、君はがんばって、自分の力でどれもこれも乗り越えた。

今では大人に負けず劣らずの冷静な思考に、それはちょっとたくましすぎるだろうと思うことすらある。

そして、小学四年生を迎えた君は、今年で10歳になった。


君にはたくさんの苦労をかけたと思う。

今でこそそんなにないけれど、若いときはパパとママもよくケンカしたし、そのことで君が大泣きしたこともあった。

まだまだ人間として未熟すぎたパパは、自分の機嫌で君にやつ当たりしたこともある。凄く理不尽な振る舞いをしてしまったこともたくさんある。

それでも、君はいつも「パパ、大好き!」と、無条件の愛をくれる。どんなときでも、家に帰ると真っ先に出迎えてくれる。そのことに、パパはとても感謝しています。

振りかえってみると、パパが君に与えられたものなんて少なく、いつだって、君がパパにたくさんのことを与えてくれた。君がパパを成長させてくれた。そんな気がします。


これからを生きる君に

家族 後ろ姿 女の子

君は優しすぎるから、パパとママに苦労をかけまいと、無意識なのか意識的なのか、自分を我慢させているように思うときがパパにはある。

それは、パパの性格や理不尽でそうなってしまったのかもしれない。そうおもうと、本当に申し訳なくおもう。気をつけているつもりだけど、君の大切な何かの芽をつんでしまわないよう、これからはより一層気をつけていきます。

だから、君は好きなことを、できる限り楽しんでください。

生きることで一番大切なこと。それは、毎日をできる限り楽しむことなのだから。


これから先、色んなことがあるとおもう。

死にたい。と、つい呟いてしまうぐらい辛いことも、きっとあるとおもう。でも、何があっても、君の家族は君の味方です。何かあったらいつでも、いつまでも頼ってほしい。パパに言いにくかったら、ママに言えばいい。

月並みなコトバだけど、そのことだけはどうか忘れないで下さい。


君がいない人生は、もう10年以上もまえのこと。今では、君のいない人生なんて考えられないほど、パパは君が大好きです。

あらためて、お誕生日おめでとう。

これからもよろしくね!


記事提供:読書が愛人


読書が愛人

読書が愛人

作者


本と寝る男。年間百冊は抱かれている。元ギャンブル中毒のニートがゼロから這いあがり、いつか本を出すってのが憧れ。だから短編小説やコラムをnoteに書いてます。シャラポワと同い年。Twitter(@dokushogaaijin

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