育児しながらラクラク骨盤矯正!専門家が教える産後の骨盤矯正法

「産後は骨盤矯正をした方が良い」と聞くものの、赤ちゃんのお世話で忙しく、「やるぞ!」と思ってもなかなかできないことってありますよね。そんなママにおすすめなのが、赤ちゃんを抱っこしたり、授乳したりしながらできる簡単な骨盤矯正方法。

今回は、累計約3万件の施術実績があり、1児の父でもある鍼灸按摩マッサージ指圧師の島田健先生に、育児しながら骨盤矯正ができるストレッチ方法や育児中に気をつけたい姿勢について、教えてもらいました。

Q. そもそも産後の骨盤の状態って?

島田先生

そもそも、「産後は骨盤矯正をした方が良い」といわれるのは、どういったことが理由なのでしょうか?

出産直後の骨盤の状態について、島田先生に伺いました。

A.産後の骨盤は、妊娠中から出ているリラキシンというホルモンと、出産による影響で骨盤が開いている状態です。

妊娠前と比べて骨盤の下半分が大きく開き、その下の恥骨結合が離れることもあります。

骨盤 イラスト

経腟分娩の場合は、赤ちゃんが骨盤の間を通って出てくるので、特に骨盤が開いています。

帝王切開の場合でも、リラキシンがでている段階で筋肉や靭帯はゆるみ、動きやすくなっているので、経腟分娩ほどではなくても骨盤が開くこともあります。

Q. 骨盤が開いたままだとどうなるの?

女性 腰

それでは、出産によって骨盤が開いたままの状態で放っておくと、どのような影響があるのでしょうか?

骨盤が開くことの影響をはじめ、普段、施術をしている経験から、最近の女性の体の傾向についても伺いました。

A.開いた骨盤は、本来なら筋肉や組織の収縮力によって元の位置に戻るのが一般的です。

しかし、普段から姿勢不良だったり、運動する習慣がなかったり、デスクワークが多くあまり動いていないという方が最近は増えていて、妊娠前から筋力が低下したり偏っているのが現状です。

筋力が低下していると、出産の影響も重なって、産後に自分の力で骨盤を戻すのが難しくなってしまいます。

そのまま放っておくと、ゆがんだ骨盤のまま筋肉が偏り、痛みなどのトラブルが起こりやすくなったり、産後の尿漏れ、体のむくみにもつながりやすくなります。

産後にしっかりと正しい位置に骨盤を戻すことで、筋肉もそれに伴って正しくついてきます。産後に骨盤矯正をすることや、姿勢を気にすることは、とても良いことなんですよ。

簡単にできる骨盤矯正方法はこの2つ!

赤ちゃん

骨盤矯正の方法はいくつかありますが、育児しながら簡単にできる方法があると一石二鳥ですよね!

その方法が、赤ちゃんを抱っこしているときや、授乳をしているとき、添い寝・添い乳をしているときなど、育児中にできるストレッチ方法。

そしてもう1つが、上記と同じときにしてしまいがちな、骨盤や体に負担のかかりやすい姿勢を見直す方法です。

ここからは、その方法をご紹介します。

育児中にできる骨盤矯正ストレッチ方法

抱っこしながらスクワット

抱っこしながらスクワット 産後 骨盤矯正

1.赤ちゃんを横抱っこ、または縦抱っこしながら、足を肩幅よりも少し開く

2.つまさきは30度くらい外側に向ける

3.背筋を天井に向かって伸ばし、お尻を後ろに突き出すようにして、息を吐きながら足を曲げる

4.足はつま先の位置から膝が出ないよう、できるだけ90度の角度をキープ(体を下ろしていくときに、膝をできるだけ外側に出すイメージで行う)

4.息をゆっくり吸いながら、足を真っすぐに戻す

抱っこしながら腰回し

抱っこしながら腰回し 産後 骨盤矯正

1. 赤ちゃんを横抱っこ、または縦抱っこしながら、足を肩幅くらいに開く

2. 腰を「右→後ろ→左→前」と大きく円を描くように回す(腰を後ろに回すときにゆっくり息を吐き、前に回すときにゆっくり息を吸う)

3. 「2」と同様の方法で、逆方向で腰を回す

授乳しながら内転筋を鍛える

授乳しながら内転筋を鍛える 産後 骨盤矯正

1.ソファやベッドにお尻の骨(座骨を)つけ、骨盤を立てるように座る

2.前傾にならないよう、授乳クッションなどで授乳する位置を調整し、背筋を伸ばす

3.クッションなどを膝の間に挟み、ももの内側(内転筋)に力を入れる

4.10~15秒したら力を抜き、これを繰り返す

島田先生

島田先生

赤ちゃんの顔を見るときは、首を長時間下げない・猫背にならないようにしましょう。

添い寝しながら内転筋を鍛える

添い寝しながら内転筋を鍛える 産後 骨盤矯正

1.赤ちゃんに添い寝するように横になる

2.クッションや枕などを頭の下に敷いて、首が疲れない高さに調整する

3.上の足を90度くらいに曲げる

4.下の足の内ももに力をいれて、息を吸いながら天井に向かってグイっと上げる

5.5~10秒キープして、息を吐きながらゆっくり足を降ろす

島田先生

島田先生

頭の高さを調節するときは、「肘枕」をしないようにしましょう。

育児中のNG姿勢とOK姿勢

抱っこ中のNG・OK姿勢

産後 骨盤矯正 抱っこ 姿勢

こんな姿勢はNG!

① 首を深く下げて赤ちゃんの顔を見る
② 赤ちゃんの重さで猫背・前傾姿勢になる
③ 片足立ちをする

意識したいOK姿勢

肩幅ほどに両足を開いて重心を体の真ん中にし、背中や首をできるだけ真っすぐにたたせます。

背中を丸め過ぎず、肩を開いた状態がベスト。赤ちゃんの表情を見るときは軽く首を下げ、適度に顔を上げるようにしましょう。

島田先生

島田先生

赤ちゃんの顔を見るときに、顎が鎖骨につくくらい深く首を下げ続けていると、肩や首を痛めてしまう可能性があります。

また、赤ちゃんを抱っこしていると、どうしても抱えている姿勢のまま猫背になりがちですが、これも肩や腰の負担に。

さらに、片足立ちをし続けていると、重心が偏り骨盤がゆがみやすくなります。どうしても片足立ちが楽な場合は、左右交互にすると良いですね。

授乳中のNG・OK姿勢 01

産後 骨盤矯正 授乳 姿勢

こんな姿勢はNG!

① 首を深く下げて赤ちゃんの顔を見る
② 猫背・前傾姿勢になる
③ お姉さん座りをする

意識したいOK姿勢

左右の座骨(お尻の骨)が床につくように、骨盤を立たせた状態で、あぐらで座ります。

授乳クッションなどをあぐらの上にのせて、背中が丸まらない位置まで高さを調整。首と背中を真っすぐにして、肩を開くようにして授乳しましょう。

島田先生

島田先生

赤ちゃんと目を合わせたり表情をみながら授乳するのは良いことですが、首を下げすぎたり背中を丸めすぎると、上記と同様に首・肩・腰に負担がかかりやすくなります。

赤ちゃんをのぞき込むときは軽く首を下げる程度にしましょう。適度な時間で首を上げて、姿勢を正すようにしてください。

また、お姉さん座り(横座り)をするのは、骨盤矯正をするうえで特にNGな姿勢。骨盤がゆがむほか、腰にも負担がかるので、気を付けましょう。

授乳中のNG・OK姿勢 02

産後 骨盤矯正 授乳 姿勢

こんな姿勢はNG!

① 首を深く下げて赤ちゃんの顔を見る
② 猫背・前傾姿勢になる
③足がつかず安定しない

意識したいOK姿勢

クッションなどで足もとに土台を置き、両方の座骨がソファやベッドなどにつくようにして、骨盤を立たせるように座ります。

背筋を伸ばして、肩を開き、首は軽く下げる程度にとどめましょう。

島田先生

島田先生

上記の授乳中の姿勢と同じく、授乳中は首を下げすぎる姿勢や猫背・前傾姿勢は首・背中・腰に負担がかかりやすいので注意しましょう。

また、足が地面につかない状態だと腰周りが安定しないため、骨盤のゆがみにもつながりやすくなります。

足がつかない場所での授乳は、赤ちゃんを支えるために腕に力が入りやすくなります。クッション、踏み台などを利用して、しっかり足裏がつくようにしてください。

添い寝・添い乳中のNG・OK姿勢

産後 骨盤矯正 添い寝 姿勢

こんな姿勢はNG!

①肘枕で頭を支える
②首を下げて赤ちゃんに覆いかぶさる

意識したいOK姿勢

頭の高さが気になるときは、クッションや枕を使って頭の高さを調整しましょう。下になっている腕は赤ちゃんの体を包むようにして、伸ばしておくと◎。

赤ちゃんを見るときは軽く頭を下げて、適度に首を元の位置に戻してください。

添い乳をすると、つい赤ちゃんに覆いかぶさるような姿勢になってしまいますが、背中も丸めないよう意識しましょう。

島田先生

島田先生

添い寝・添い乳のときにやってしまいがちなのが、肘枕。肘枕は肩回りの筋肉がねじれてしまったり、肘や首に負担がかかりやすくなります。

添い寝をしているときも、首を下げて赤ちゃんをのぞき込むと、他の姿勢と同様に首の後ろや背中に負担がかかるので、意識しておきたいポイントです。

Q. 骨盤矯正をすると痩せるってホント?

鍼灸按摩マッサージ指圧師 島田健先生

「骨盤矯正をすると痩せる」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。産後は、産後太りが気になるもの。

実際に、骨盤矯正が産後ダイエットにつながるものなのか、島田先生に教えてもらいました。

A.骨盤が開くと、骨盤の中にある内臓が正しい位置から下がり、内臓の動きが低下しやすくなります。内臓の動きが低下すると、代謝も下がりやすくなります。

開いた骨盤を戻すと内臓の位置が全体に上がり、内臓の位置が上がると動きが良くなり、代謝が上がりやすくなります。そうすると、むくみが取れたり燃焼を助けたりすることにもつながるので、痩せやすい体質になることはあり得ます。

また、正しくない姿勢が習慣化すると、筋肉の組織やバランスが変わって傾きが出てきたり、大腿骨がねじれたり、体にむくみが生じることがあります。

それにより、「太る・痩せる」ということではなく、お尻や足が太く感じるようになることもありますよ。

そのため、骨盤矯正や姿勢の見直しとともに、内ももの筋肉(内転筋)を鍛えるようにすると、足全体の筋肉のバランスが変わってハリが取れ、足やお尻のラインがすっきり見えるようにもなります。

赤ちゃんのお世話で忙しいときは楽な方法で骨盤矯正をしよう

産後は赤ちゃんのお世話が忙しく、本格的に骨盤矯正や産後ダイエットに取り組めないことが多いですよね。しかし、産後は骨盤を整えやすい期間でもあります。

島田先生によると「個人差はありますが、産後から半年くらいはリラキシンの影響が残っているので、半年くらいは靭帯がゆるんでいて、骨盤の位置や姿勢が整いやすい期間」とのこと。

忙しくて時間がとれないときは、今回のストレッチ方法や姿勢を参考に、育児中にできる簡単な方法から初めてみてくださいね。


取材協力:島田 健

取材協力:島田 健

鍼灸按摩マッサージ指圧師、IASTM、NKT、PRI、ERS


Plus March 代表。累計約3万件の施術経験。東京医療専門学校本科にて鍼灸按摩マッサージ指圧師の国家資格を取得。在学中より様々な著名人やアスリートの通う治療院に勤め、その後コンディショニング施設にて治療面とトレーニング面からの指導を行ってきたのち独立。現在は完全紹介制の出張ケアサービス「Plus March」を立ち上げ、企業やご自宅への出張施術をしながら、トップアスリートや著名人、アーティスト舞台公演帯同、メディア出演、記事監修など幅広く活動。