女性はホルモンバランスの影響から、男性と比べて便秘をしやすいと言います。さらに、母乳を与えているママは体内の水分が失われやすいので、便秘をしがちという話も聞きます。
ですが、産後は下痢に悩まされているママも少なくありません。
そこで今回は、なぜ産後は下痢に悩まされるのか、先輩ママの体験談や専門家に聞いた対処法とともに解説します。
産後、下痢に悩まされているママは3割
先にも触れたとおり、女性はどちらかというと便秘に悩まされがち。
生理中はホルモンバランスの影響でお腹がゆるくなりますが、それでも生理中に下痢に悩まさている女性は約2割という報告もあります。
編集部の調査(※)で、産後ママはさらに多い3割もの人が下痢に悩まされていることがわかりました。
助産師で看護師の河井先生も、健診などでママから下痢の相談をよく受けるそうです。
河井先生
下痢は産後のマイナートラブルの一つ
産後のママから「最近、お腹の調子が悪くて…」という相談はよく受けます。深刻な状態であることは少なく、下痢が数日間続いている以外に症状はないことが多いですね。
下痢も含め、産後はマイナートラブルが起こりやすいということ知っておいてほしいと思います。
産後の下痢、他のママはどんな症状?
下痢の話って、他のママにはなかなか聞きにくいですよね…。だからこそ、産後の下痢に悩まされた経験のあるママたちに、それぞれの症状を教えてもらいました。
産後の下痢に悩まされているのは、あなただけではないのです。
前触れがないので困ります…
これまで下痢に悩まされることなんてなかったのですが、産後は下痢に悩まされています。
なんの前触れもなく、突然キューッとお腹が痛くなって、もよおしてしまうので困っています。子どもにミルクをあげている最中にもよおしたときは、本当に困りました。
よしおママ
腸がねじれるような痛みを感じます
妊娠前も下痢をすることはありましたが、産後は痛みが強くなり、トイレにこもる時間が長くなりました。
急に腸がねじれるような強い痛みを感じて、水様性の便が出ます。しばらくしても痛みは治まらず、10分以上経ってもトイレから出られませんでした。その後も不定期に痛みが続きます。
れなママ
揚げものと冷たい飲みものに反応します…
産後は、下痢にも便秘にも悩まされています。
とくに前触れもなくお腹が痛くなるときもあるし、揚げものと冷たい飲みものを摂ったあとにお腹が痛くなることもあります。
トイレから出られなくなるほど痛むときもあるので、揚げものはなべく控えるようにしています。
なーちゃんママ
赤ちゃんには「ちょっと待っててね」が通用しないので、急な下痢は本当に困ってしまいますよね。なぜ、産後は下痢に悩まされることが多いのか、河井先生に教えてもらいました。
産後の下痢はなぜ起こるの?
産後、下痢に悩まされる原因は、大きく4つあるそうです。以下の生活習慣など、思い当たる人も多いのではないでしょうか?
産後の下痢の原因①
ストレスや疲労による自律神経の乱れ
河井先生
産後は、慣れない赤ちゃんのお世話で疲労が溜まりやすく、さらに睡眠不足になりがちです。疲れとストレスが溜まると自律神経が乱れやすく、下痢を引き起こすことがあります。
産後の下痢の原因②
消化機能の低下
河井先生
自律神経の乱れが長引くと胃腸の働きが弱くなり、下痢を引き起こしやすくなります。
揚げものを食べると下痢をするママがいましたが、消化機能が低下しているかもしれませんね。
産後の下痢の原因③
水分の摂りすぎ
河井先生
母乳を与えているママは意識して水分を多く摂っていると思いますが、水分を摂りすぎると下痢を引き起こすこともあります。
大人は1日に2.5リットルの水が必要。食事でスープなどから1リットル摂り、0.3リットルは体内で作られるとされています。そのため、水分補給で摂取するのは1.2リットルが目安です(※1)。
ミネラルウォーターを好んで飲む人もいますが、ミネラルウォーターにはマグネシウムが含まれているので、飲みすぎると便が柔かくなり、下痢を引き起こしやすくなります。ミネラルウォーターを飲みすぎないように注意してください。
産後の下痢の原因④
骨盤底筋への負担
河井先生
分娩時間が長かったり、赤ちゃんが大きく生まれたりすると骨盤底筋にかかる負担が大きく、肛門をしめる感覚が鈍くなる・下痢をしやすくなるなど、排便に影響を及ぼす可能性もあります。
今は下痢に悩まされていなくても、これらに当てはまる人は注意が必要です。
産後の下痢、先輩ママの対処法と効果は?
産後の下痢の原因がわかると、対処法を知りたくなりますよね。
そこで、産後の下痢に悩まされているママが実践している対処法に対して、河井先生からアドバイスをもらいました。
産後の下痢の対処法①
冷たい飲みもの・食べ物は控える
河井先生
効果的だと思います。冷たいものは刺激となり、腸のぜん動運動を異常に高めてしまいます。すると、消化物や便が腸を通過する時間が短くなり、腸が便の水分を十分に吸収できないまま排泄されるので、下痢になります。
下痢をしているときに冷たいものを口にすると、下痢の症状がひどくなったり、いつまでも治らないこともあります。
暑い時期は冷たいものが欲しくなりますが、なるべく常温や温かいものを摂るようにしましょう。
産後の下痢の対処法②
辛いもの・揚げ物は控える
河井先生
これも効果的ですね。
刺激の強い食べものや揚げものは、胃腸に負担がかかります。下痢をしやすい人は揚げものや辛いものを控えたり、調子がよくないときは避けるようにしましょう。
産後の下痢の対処法③
体を冷やさないようにする
河井先生
効果的だと思います。
身体が冷えると血行が悪くなり、胃腸の調子にも影響を与えます。夏場は冷房で身体が冷えやすいので、冷え対策を意識しましょう。
産後の下痢の対処法④
締め付けの強い下着・衣服は避ける
河井先生
産後の体形を気にして、ボディラインを整える下着を着用する人もいます。ですが、締め付けのきつい下着で血行が妨げられると、胃腸の調子に影響を与えることがあります。
正しい姿勢を意識したり、程よく身体をサポートする下着を選び、血行は妨げないようにしましょう。この対処法も効果的だと言えますね。
産後の下痢の対処法⑤
腸内環境を整える食べものを摂る
河井先生
バナナ、ヨーグルト、納豆には整腸作用があるので、下痢をしやすい人は意識して摂りましょう。効果的な対処法です。
下痢をしているときはりんご、軟らかいご飯やうどん、脂分の少ない白身魚、豆腐など消化しやすい食べものがおすすめ。みかんやいちごは下痢を引き起こしやすいので、控えるようにしましょう。
このほか、「産後は、身体にも心にもストレスがかかりやすい時期です。十分な休息は難しいかもしれませんが、できる限り身体を休めてリラックスするようにしてくださいね」と、河井先生は教えてくださいました。
「泣いているのに…」「外出先で…」
下痢でトイレにこもるとき、赤ちゃんは?
産後の下痢の予防策をとっても、不意にキューッとお腹が痛くなってしまうことはあります。
外出先、自宅で赤ちゃんと2人きりのときに下痢でお腹が痛くなったら、ママ達は赤ちゃんの安全をどのように確保しているのでしょうか?
トイレを出たり入ったり…
下痢便の中に菌が入っているかもしれず、子どもに感染させるのが嫌なので、自宅では子どもが泣いていても自分だけトイレに入るようにしています。
その代わり、ちょっと落ち着いたらガマンしてトイレを出て、子どもの様子を確認するようにしています。
ははママ
トイレから見える位置でスタンバイ
私の姿が見えなくなると泣いてしまうときは、トイレのドアを開けたままにして、私の姿が見える位置に寝かせています。
はるママ
ベビーゲートとお菓子を活用!
後追いが激しいので、急な下痢には本当に困っています。
後追いが激しいのでベビーゲートの中に入れ、大好きなお菓子を渡して子どもの気を反らすようにしています。
よしおママ
多目的トイレの場所を確認
突然、下腹部がギュルギュル音を立てて痛くなるので、普段からこまめにトイレに行くようにしています。外出するときは、多目的トイレの場所を必ず確認しています。
はるくんママ
携帯用トイレを買いました
家に子どもと2人でいるときは、子供が泣いていてもトイレにこもっています。
外出先では、コンビニなどのトイレがあるところに駆け込むことが多いです。トイレがないときのことも考えて、携帯用トイレも購入しました。
るみりんこママ
多くのママが、自宅ではバウンサーやベビーゲートで赤ちゃんの安全を確保してからトイレに駆け込んでいました。
赤ちゃんが泣いていてもトイレから出られない辛さ…。下痢が落ち着いたあとは、しっかり赤ちゃんとスキンシップをとって落ち着かせてあげるという声も多数聞かれました。
産後の下痢、こんな症状は受診を!
産後のマイナートラブルとして現れる下痢は数日程度で治まり、発熱などほかの症状はないことが多いようです。
ですが、ノロウイルスなどの食中毒や感染症によって下痢を起こすこともあるので、以下の症状があるときはすみやかに受診してください。
- 血便が出ているとき
- 吐き気がしたり、嘔吐したとき
- 発熱しているとき
ひどい下痢をしているときは、体内の水分が急速に失われていきます。常温のイオン水や経口補水液、水を少しずつ、こまめに飲むようにしましょう。
水分が摂れないときも、早めに受診してください。
便の状態はママの健康状態の現れ
休息と適度な運動を
産後の下痢はマイナートラブルの一つではありますが、下痢が続くとママの体力も消耗してしまいますよね。
赤ちゃんのお世話で疲れが溜まっていたり、睡眠不足が続いているママも多いかと思います。
便は健康のバロメーター。産後は無理をせず、休めるときは休んで、体力の回復に努めてくださいね。
監修:河井 恵美
助産師、看護師/エミリオット助産院
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。救急、外科外来等も経験し、看護師教育や思春期教育にも関わっていました。助産師の仕事が大好きで、25年以上この仕事をしています。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。2008年から夫の仕事関係により、シンガポールに住んでいます。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務し、日本人の妊産婦さん方に関わっています。
※アンケート概要
実施期間:2019年5月19日~2019年5月21日
調査対象:子育てアプリ「ninaru baby」利用者
有効回答数:858件
収集方法:Webアンケート