産後の体調不良のうち、周りのママにもっとも聞きにくいトラブルは「痔」かもしれません。
成人の3人に1人は痔に悩まされた経験があるという調査もありますが、「薬を購入したり、病院に行ったりするのは恥ずかしい」という理由から、女性は痔を悪化させてしまうケースが少なくありません。
そこで今回は、人に聞きにくいからこそ気になる、産後の痔について迫ります。
約6割のママが産後の痔に悩まされている
編集部で産後のママにアンケート(※)を取ったところ、約6割ものママが産後の痔に悩まされていることがわかりました。
症状を詳しく聞くと、妊娠や出産を機に痔ができたり悪化したりした人、産後の便秘や下痢で痔ができたり悪化したりした人が大半を占めました。
妊娠や出産を機に痔に
妊娠後に痔ができ、出産で悪化
妊娠後期、お腹が大きくなってきたときに痔ができて出血。そのままの状態で出産し、病院に行くタイミングを逃して症状が悪化しました。
まあみママ
後陣痛の痛みがひどく、気づかなかった
出産後すぐ、外痔核ができました。後陣痛の痛みがひどかったのでまったく気がつかず、看護師さんに言われて初めて痔に気づきました。
えるママ
産後の便秘や下痢で痔に
排便時に出血しました
産後の便秘がひどく、カチカチになった便をいきんで出したときに肛門が避けました。出血があったので、驚きました。
りーママ
便秘が引き金になりました
便秘がひどく、硬い便を排出するときに切れるようになりました。やがてイボが飛び出すようになり、指で押してもなかなか引っ込まなくなってしまいました。
めぐぐめママ
そもそも痔ってどういう状態?
「痔」とは、肛門や肛門の周辺に起こるトラブルの総称です。代表的な痔は以下の3種類で、原因やできる場所などが異なります(※1)。
痔に悩まされつつも「痔についてあまり知らない」というママが多かったので、以下でご説明します。
①妊娠・出産でなりやすい「いぼ痔」
「いぼ痔」は痔核(じかく)とも言い、痔の中でもっとも多く見られます。痔ができる場所によって「内痔核」「外痔核」に分けられます。
痛みはないが出血しやすい「内痔核」
● 症状:痛みはないものの、排便時に出血することがあります。排便時にいぼが肛門の外に飛び出るようになると、痛みを感じるようになります。
症状が進行すると、痔が肛門から出たまま戻らなくなります。
● 原因:長時間に渡って同じ体勢を取り、力を入れていきむことで起こります。妊娠・出産をきっかけになるほか、慢性的な便秘や頻繁な下痢が引き金になることも。
出血はしないが激しく痛む「外痔核」
● 症状:出血することはまれですが、腫れて激しい痛みを伴います。
● 原因:冷えやストレス、座りっぱなし、アルコールや刺激物の摂りすぎなど生活習慣が影響します。便秘や下痢も原因の一つに挙げられます。
②便秘がちな女性に多い「切れ痔」
● 症状:排便時に激しい痛みと出血があります。排便後も、痛みがなかなか治らないことも。
● 原因:硬くなった便を押し出そうとして強くいきむことで肛門の皮膚が切れたり、裂けたりします。下痢をくり返しているうちに炎症を起こして発症することも。
③女性には少ない「あな痔」
● 症状:肛門腺というくぼみから細菌が入り、膿が溜まります。肛門の周辺が腫れて痛み、発熱することも。炎症をくり返すと、膿の通り道(細菌の入り口と、膿が皮膚を突き破って流れ出る部分まで)ができます。
● 原因:強いストレスによる免疫の低下と下痢が原因です。男性のほうが多い傾向があります。
産後の痔、先輩ママの対処法と効果は?
産後の痔が悪化しないように、もしくは痔ができないように気をつけていることを教えてもらったところ、以下の結果となりました。
1位 | 水分を積極的に摂る |
2位 | ウォシュレットを使い清潔に保つ |
3位 | 便秘にならない食生活を意識する |
4位 | 便意をガマンしない |
5位 | 体を冷やさない・温める |
多くのママが実践している対処法を、助産師で看護師の河井先生のアドバイスと共にご紹介します。
①水分を積極的に摂る
産後、便が固くなっている気がします。痔が悪化しないように、水分を摂るようにしています。
カナママ
河井先生
水分はこまめに摂取するのがおすすめ
成人は、1日あたり2.5リットルの水が必要とされています。スープなどの食事から1リットル、水分補給で1.2リットルの水分を摂取するのが目安です(※2)。
母乳を与えているママは水分が失われやすく、便が固くなりやすい傾向があります。目安よりも多めに水分を摂取するように意識しましょう。水分は、こまめに摂取するのがおすすめですよ。
②ウォシュレットを使い清潔に保つ
産後は、トイレに流せるウェットティッシュとウォシュレットを併用し、お尻を清潔に保つようにしています。
フルママ
河井先生
刺激が少なく、よい方法ですね
トイレットペーパーだと、こすったときに刺激が強く痛いかもしせません。ウェットティッシュやウォシュレットなら刺激が少なく皮膚にもやさしいので、良い方法だと思います。
③便秘にならない食生活を意識する
ヨーグルトや納豆などの発酵食品を意識して摂り、腸内環境を適切に保つようにしています。
かえでママ
河井先生
便通が整うと痔の治りもよくなります
便通がスムーズになると肛門への刺激も少なくなり、痔の治りも早くなると思います。ヨーグルトなどの発酵食品は、便通を整えるのにおすすめの食品です。
空腹時は胃の中の酸性度が高くなっているので、ヨーグルトを食べても、ヨーグルトが持つよい菌が腸まで届きにくいと言われています。ヨーグルトは食後に食べるのがおすすめです。
④便意をガマンしない
便意をガマンしているうちに便秘になり、痔が悪化してしまいました。今は、便意がきたらガマンせず、すぐにトイレに行くようにしています。
ほっちママ
河井先生
便意を感じたらトイレに行きましょう
便秘のときは、トイレに座ることを習慣化することもよい方法だとされています。赤ちゃんがいると難しいこともありますが、便意を感じたらガマンをせずにトイレに行くことから意識しましょう。
⑤体を冷やさない・温める
体を冷やさないように気をつけています。毎日湯船に浸かって、血行をよくするようにしています。
せりママ
河井先生
肛門部分のうっ血が解消できます
座りっぱなしなどで肛門部分の血流が悪くなることで、いぼ痔が引き起こされます。湯船に浸かったり体を温めるなどし、血流がよくなると肛門部分のうっ血が解消されるので効果的です。
また、血流がよくなると腸の動きが活発になるので、便通にもいい影響が期待できますよ。
そのほか、「排便をするときは息を少しずつ吐きながら、静かに便を押し出すようにすると肛門に負担がかかりにくいですよ」と教えてくださいました。
産後の痔、受診の目安は?
痔の薬を購入したり、受診するのをためらったりすることで、痔を悪化させてしまうことが女性は多いそうです。
赤ちゃんのお世話に追われている産後のママだと、忙しさから、なおさら産後の痔を放置してしまいがち。
ですが、痔は自分で状態を確認できないため、「気になったら早めに受診したほうがいいでしょう」と河井先生はおっしゃいます。
河井先生
1ヶ月健診で診てもらいましょう
出産を機に痔ができた場合は、退院時の診察で痔の薬が出されることが一般的です。1ヶ月健診でもう一度診てもらい、必要に応じて薬を出してもらうようにしましょう。出産を機にできた痔は、自然とよくなっていくことが一般的です。
ただ、産後2〜3ヶ月経っても痔がよくならない場合は、外科の肛門科を受診することをおすすめします。痔は自分では状態を確認しにくいので、専門医に診てもらったほうが安心です。
出産前から痔ができていたり、産後の便秘や下痢が引き金となって痔ができた場合も、早めに受診して薬を処方してもらうことをおすすめします。
ママの体にかかる負担はなるべく減らそう
河井先生は、産後のママから「痔は治るのか?」「いつ治るのか?」「肛門科に行かなくてはいけないのか?」という3点をよく質問されるそうです。
痔が気になりながらも、赤ちゃんのお世話を優先させている様子が伺えますね。
出産を機にできた痔はじきに治ることが多いようですが、体調が思わしくなかったり、下痢や便秘をくり返しているうちに悪化してしまうことも珍しくありません。
症状が気になるときは早めに受診して、薬を処方してもらってくださいね。ガマンは禁物ですよ!
監修:河井 恵美
助産師、看護師/エミリオット助産院
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わっていました。助産師の仕事が大好きで、25年以上この仕事をしています。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。2008年から夫の仕事関係により、シンガポールに住んでいます。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務し、日本人の妊産婦さん方のサポートをしています。Web上でエミリオット助産院を開設し、助産師オンラインサービスで様々な相談も受けています。
※アンケート概要
実施期間:2019年5月26日~2019年5月27日
調査対象:子育てアプリ「ninaru baby」利用者
有効回答数:232件
収集方法:Webアンケート