生後11ヶ月頃になると離乳食が3回食になる赤ちゃんも出てきます。
おとなしく食べてくれると親としては楽ですが、なかには遊び食べや手づかみ食べをしたり、好き嫌いや食べムラがある赤ちゃんもいるでしょう。思うように離乳食を食べてくれず、イライラしてしまうママやパパもいるかもしれませんね。
そこで連載6回目の今回は、ベビーサインで遊び食べなどを解決できるのか、日本ベビーサイン協会の長屋さんにお話をうかがいます(前回記事は下記を参照してください)。
遊び食べの悩みが消える、たった1つの方法
−離乳食が進むと、赤ちゃんが遊び食べをしたり、食べムラが出てきたりしますよね。
日本ベビーサイン協会・長屋さん(以下長屋さん):そうですね。食べ物をグチャグチャに潰したり、スプーンや食器をわざと落としたりしますね。
赤ちゃんが食べ物に興味を持つようになったからこそ、遊び食べや手づかみ食べをするんです。形や硬さ、感触などを確かめているわけですね。それと同時に、手指の感覚が発達した証拠でもあるので、赤ちゃんにとって大切なことなんですよ。
−でも、後片付けが大変になるし、終わりが見えないので、ついイライラしてしまう親は多い気がします。
長屋さん:そのイライラは、会話やコミュニケーションが成り立たないために生まれているかもしれないですね。でもベビーサインを使えば、喋れない赤ちゃんともコミュニケーションが取れるようになるので、遊び食べなどによるイライラを減らすことができますよ。
ベビーサインを行うようになると、育児に余裕が持てるようになります。また、赤ちゃんを見る目線も違ってくるので、もはや悩みは悩みじゃなくなるし、問題も問題ではなくなるんです。
食事を楽しくするコツは「意思疎通」
−ママやパパの内面の変化を促すのがベビーサインだ、ということですね。
長屋さん:そうです。遊び食べそのものをやめさせることはできないけれど、ベビーサインを教えれば、食事の最中に「いただきます」「りんご食べたい」「もっとお肉がほしい」「もういらないから、ごちそうさま」といったように意思表示をしてくれるようになります。
すると、赤ちゃんが何を考えて、何をしたがっているのかがわかり、意思疎通ができるようになります。だから、食事中も楽しく過ごせるようになるんです。
−では、どのようなベビーサインがコミュニケーションに役立ちますか?
長屋さん:まず、第2回で紹介した【もっと】や、第5回で紹介した【ありがとう】が使えますね。それ以外に【食べる】【いただきます/ごちそうさま】などが使えるので、今回はそれらをご紹介します。
【りんご】や【パン】といった食べもののサインも役立ちますが、数が多いので今回は省かせていただきます。
【食べる】のサインは?
長屋さん:つかんだ食べ物を口へ持っていく動作が【食べる】のベビーサインです。
このサインを赤ちゃんに教えると、お腹が空いたときにこれを使って食べ物を催促してくれることがありますよ。
「まだ食べる?」と聞きながらこのサインを見せれば、赤ちゃんに、まだ食べる気があるのかどうかを確認するサインとしても使えます。まだ食べる気があるのであれば、赤ちゃんもこのサインを使って「まだ食べる!」と意思表示してくれるかもしれませんよ。
−このサインを使えば、イライラすることが減りそうですね。
【いただきます/ごちそうさま】のサインは?
長屋さん:赤ちゃんがもう離乳食を食べる気がないとき、【ごちそうさま】のサインをしてくれるといいですよね。
【ごちそうさま】のサインは、お祈りするように両手を合わせるしぐさです。
ちなみにこのサインは、【いただきます】のサインとしても使えますよ。
【おいしい】のサインは?
−作った離乳食が赤ちゃんがおいしいと感じているかどうか、気になるママ・パパは多いですよね。
長屋さん:そういうときは、【おいしい】のベビーサインを使うといいですよ。やり方は簡単で、【おいしい】のサインは片手で頬を2〜3回軽く叩くだけです。
このサインを使って「おいしい」と意思表示されたら、離乳食作りがはかどるという人は多いのかもしれません。実際、ベビーサイン教室受講者の声の中でも、「【おいしい】のサインを初めてしてくれました!」という嬉しい報告がよくありますよ。
【おやつ】のサインは?
−おやつが欲しくてグズる赤ちゃんもいますが、グズらずに意思表示してくれると親としては助かる気がします。
長屋さん:【おやつ】のサインを教えてみるといいかもしれませんね。このサインを教えておけば、クッキーやおせんべいが食べたくてグズっているときに、ママやパパに向けて「おやつがほしい」と意思表示してくれることがありますよ。
【おやつ】のサインは、片方の手のひらの上で、もう片方の手をクイクイっと回転させる動きです。クッキーの型をとるしぐさといえばわかっていただけるでしょうか。
−赤ちゃんがグズっているときに、理由がわからず途方にくれることが減りそうですね。
次回は、ベビーサインで育った赤ちゃんのその後を紹介!
ベビーサインは、赤ちゃんとのコミュニケーション手段ですが、長屋さんによると、実践することで育児に対するママやパパの気持ちや考えに変化をもたらすそうです。
そして、ベビーサインの普及活動を始めた当初は、こうした効果をまったく想像していなかったと仰っていました。ベビーサインのメリットは、目に見えるものだけではないようですね。
さて、次回はついにベビーサイン連載の最終回です。
これまで具体的な悩みの解決に役立つベビーサインを紹介してきましたが、次回はちょっと異なります。より長期的な視点で見たときに、ベビーサインが赤ちゃんにどのような影響を与えるのかを長屋さんにお聞きします。
ご期待ください!
取材協力
参考書籍
『親子で楽しむベビーサイン』(実業之日本社/吉中みちる・まさくに著)
ポッケベビーサイン部
作者