赤ちゃんが泣き止むという「まぁるい抱っこ」を紹介する企画の後編です。
前編では、「まぁるい抱っこ」で赤ちゃんが泣き止む理由をメインにご紹介しました(前編は下記参照)。
後編では、「まぁるい抱っこ」でも赤ちゃんが泣き止まないことはあるのか、泣き止まないときの4つの観察ポイントなどをご紹介します。
まぁるい抱っこでも
赤ちゃんが泣き止まない理由とは?
−まぁるい抱っこでも赤ちゃんが泣き止まないことはありますか?
辻さん
もちろんあります。まぁるい抱っこで赤ちゃんが泣き止まないということは、ニーズが違うということです。
「赤ちゃんが泣く=おしゃべりしている」と捉えてみてください。言いたいことがあるから泣いているわけです。だから、言いたいことがなくなれば泣き止みます。
言いたいことを理解するには、赤ちゃんの様子を観察して、原因を分析し、ケアする必要があります。
その結果、泣いている原因が抱っこで解消できるものだったら泣き止むし、そうでなければ泣き止みません。
−原因を抱っこで解消できるとは限らないんですね。
辻さん
赤ちゃんが抱っこに求めているのは安心感です。ママの匂いや声の近さ、体温などを通して安心感を得て、結果的に泣き止んでいるわけです。
抱っこで解決できない欲求があって、それが原因で泣いているのであれば、まぁるい抱っこをしても泣き止みません。
例えば、ウンチが原因で泣いている赤ちゃんを抱っこで泣き止ませることはできないですよね?
自分が「伝えたいことがあるのに全然違うことをされたら?」と考えてみてください。
赤ちゃんが泣き止まない!
観察すべき4つのポイントはこれ
−赤ちゃんが何を求めて泣いているのか、分析するためのポイントを教えてください。
辻さん
赤ちゃんが泣いている原因を推測するポイントは、次の4つです。
1. 泣き声
2. 表情
3. ボディランゲージ
4. 肌の様子
−泣き声でいうと、どんな違いがあるのでしょうか?
辻さん
例えば、必死な声で泣いているときは、体に関する不快な状態が原因で泣いていることが多いです。お腹が減っている、痛い、寒い、暑い、かゆいなどですね。
一方、甘えたような声で泣いているときは、「眠い」「寂しい」「ママこっち向いて」といったようなことを訴えていると思ってください。
−表情についてはどうでしょうか?
辻さん
ママのことをチラチラ見ながら泣いている赤ちゃんは、「ワタシ、泣いてるのに、ママはどうするの?」といった感じでママの様子をうかがっているはずです。
目をこすっているときは眠たくて泣いている可能性が高いし、無表情な子は緊張しているんだと思います。
−ボディランゲージや肌の様子というのは、どういうことですか?
辻さん
例えば、体が突っ張っていたら緊張や拒否などの意思表示をしていることになります。
体がフニャッとしているときは、安心を感じてリラックスし、心身ともにママに委ねていると考えられます。
肌の様子というのは、固いか柔らかいかということです。他にも、色や温度も変わります。
実は、赤ちゃんの気分によって肌の様子も変わっていて、緊張していると固くなり、リラックスしていると柔かくなるんです。
それは赤ちゃんだけでなく、子供はもちろん、私たち大人も同じです。
−赤ちゃんが泣いている原因を探るには、赤ちゃんを観察することが不可欠なんですね。
辻さん
五感による観察を通して、総合的に赤ちゃんのニーズを汲み取ることが大切ですよ。
泣き止まないときは
「正しさ」よりも赤ちゃんを最優先に
−まぁるい抱っこを実践するときの注意点はありますか?
辻さん
“方法”にこだわらない、“正しい”にこだわらない、ということですね。答えは赤ちゃんが持っています。
どういうことかというと、赤ちゃんが安全で気持ち良さそうにしていることが第一ということです。
まぁるい抱っこの大事なポイントを押さえていて、赤ちゃん本人がスヤスヤ眠っていれば問題ありません。
−「この方法じゃないとダメ!」というものはないんですね。
辻さん
そうですね。講座や書籍で紹介しているやり方は、あくまで手順が少なくて、やりやすくて、成功率が高い方法です。
赤ちゃんの安全と安心が確保されていれば、抱っこしたとき赤ちゃんは心地よさそうになります。
手順が少し違っても問題はないんですよ。
けれども、ママが頑張らないとできない抱っこの仕方であれば、考え直した方がいいかもしれません。頑張らないとできないということは、維持できないということですから。
赤ちゃんは生まれる前から
「気持ちいい」を知っている!
−最後に、赤ちゃんが泣き止まなくて困っているママに向けてメッセージをお願いします。
辻さん
ママの子宮に赤ちゃんがいるとき、ママが「気持ちいい」「うれしい」と感じると、ホルモンの作用で子宮内膜はフワッと柔らかくなると言われています。
しかも、それはへその緒を通じて赤ちゃんにも伝わるといわれています。
つまり、ママが気持ちいいと感じたり、うれしいと思ったりすると、赤ちゃんも気持ちいい、うれしいと感じるのです。
赤ちゃんはママのお腹の中にいたときから気持ちいいを知っているのだから、外に出てきてからも気持ちいいといっぱい感じてもらいませんか?
「抱く」という漢字は「手偏(てへん)」に「包む」と書きます。そして、「包む」という字は妊婦さんを模写した象形文字なんですよ。
お腹で包んだ命を、お腹の外に出てきてからも「気持ちいい」と思ってもらえるように、ふんわり優しい手で抱っこしてください。
−いつもと違った視点で赤ちゃんの感情を考えてあげると、赤ちゃんが泣き止んだり、結果的にママの負担も軽くなったりするのかもしれませんね。ありがとうございました。
前編はこちら!
参考書籍
取材協力:辻 直美
つじ なおみ
国際災害レスキューナース、まぁるい抱っこマイスター、一般社団法人育母塾代表理事。
元救命救急ナース、災害レスキューを専門とする(吹田市民病院・聖路加国際病院)。現在も救命救急災害レスキューナースとして活動中(国境なき医師団・JMTDR在籍)。救急についての講演、執筆(著者/『エキスパートナース』連載、『救急初療ケアマニュアル』など)、育児の在り方、ママと子どもの姿勢についての講演会や講座を全国で開催している。ママ向けだけでなく、病院や保育園、幼稚園スタッフに向けた講座も実施。助産師科、看護科、保育科の大学での非常勤講師も務める。著書として、『どんなに泣いている子でも 3秒で泣き止み3分で寝るまぁるい抱っこ』(講談社)が絶賛発売中。子育てで悩む母親たちのバイブルとなっている。