今回は、5歳の息子さんを育児中の上田ちまきさんのエッセイをご紹介します。
お願いごと
うちの母は、初詣に行くといつもわたしに
「神さんにはお願いごとをするんとちゃうで。誓いをたてるんや。こういうことがんばりますから応援してくださいって言うねん」
と教えてくれた。
わたしもその言葉を素直に受け取って、息子にも神社を参拝するときはそんな風に話している。
ところが、
孫が生まれてから、母はしっかりばっちり神さまに「お願い」をするようになっていた。
うちの母は、初詣では孫たちのしあわせだけを祈る。
「あれもこれも言うのは強欲やからな。孫たちのことだけはどうかよろしくお願いしますって言うねん」
なるほど。
やはり「孫」というのは特別な存在なのか。
と思ったのだけれど、どうもそれだけではないらしい。
「子どもがしあわせやったら親もしあわせ、親がしあわせやなかったら子どもにも降りかかるやろ。そやから、孫のしあわせさえお願いしといたら、みんながしあわせでいられるんや」
あ、なに、その裏技みたいの。とんち?
「あれもこれも言うのは強欲やから」て、どの口が言うねん。欲のかたまりすぎやし、そんな下心、神さまにはお見通しやろ。
そう言うと、母は笑う。あかんかなあと言って、笑う。
きっと今年の初詣も、母はたった一枚の五円玉を投げて、孫たちのしあわせ、ひいては子どもたちのしあわせ、ひいては自分たちのしあわせを願うのだろう。
わたしはそれを、うれしく思う。
だれかに想われていることは、しあわせなことだ。
今年も母の願いどおり、息子のしあわせを全力でサポートしようと思うし、自分自身もしあわせでいられるようにがんばれるだけ、がんばろうと思う。
記事提供:上田ちまき
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