夏の暑さをしのぐのに、かかせないエアコン。ただ、赤ちゃんがいると「体に悪いかも…」と使うのを躊躇する人も少なくありません。
家族や年配の人に「エアコンを使うと赤ちゃんの体が弱くなるから使わない方がいい」と言われたことがある人もいると聞きます。
そこで、生後間もない赤ちゃんのケアをしている助産師さんは、どのようにエアコンを使用をしているのか詳しく教えてもらいました。
赤ちゃんがいる部屋でエアコンを
使っても問題ない?
「赤ちゃんがいるから、エアコンを使うのに抵抗がある…」という人は少なくありません。編集部で先輩ママにアンケート(※)を取ったところ、次のような意見がありました。
きゃなたん
エアコンは体に悪いと聞いて、できるだけ使わないようにしています。
ぁいちん
エアコンを使って体がだるくなったことがあるので、赤ちゃんにはできるだけ扇風機を使うようにしています。
エアコンを使いたいけれど、赤ちゃんの体を心配してためらっている人はたくさんいます。そこで助産師の佐藤先生に「赤ちゃんがいる部屋でもエアコンを使っていいのか」聞いてみました。
佐藤先生
昔とちがって、最近では夏になると気温がかなり上がり、35度を超える日も少なくありません。赤ちゃんが脱水症状を起こしたり、熱中症になったりしたら危険なので、むしろ必要に応じてエアコンを使った方がよいと思います。
赤ちゃんは、体温を調節する機能が未発達。体温がまわりの温度に左右されやすいため、外気が暑いと赤ちゃんの体温も自然に上がり、汗もかきやすくなります。
窓を開けるだけで十分涼しく感じられるような気温なら、エアコンは使わなくてよいと思います。
平均気温が年々上がっているため、赤ちゃんにとって快適な空間を作るのに、エアコンをうまく取り入れる必要が出てきたと言えそうです。
赤ちゃんが快適か暑いのか見極める方法
赤ちゃんにとって快適な室温なのか、暑いのかはどう見極めればよいのでしょうか。佐藤先生に2つの方法を教えていただきました。
エアコンを使うかどうか、設定温度を上げ下げするときの目安にするといいですよ。
①体温が37度±0.5度か
佐藤先生
乳幼児であれば37度±0.5度が平熱なので、体温がこの範囲かどうかチェックしましょう。平熱の範囲内であれば、室温が赤ちゃんにとって適正と言えます。
もし赤ちゃんの体温が平熱より高ければ、エアコンを使って室温を下げたり、服を1枚脱がせたりして調整しましょう。
②背中や額に汗をかいていないか
佐藤先生
赤ちゃんが背中や額に汗をかいていないかどうかで、室温が適正か判断できます。
汗をかいているようなら室温や湿度が高いか、服を着せすぎている可能性があります。エアコンを使って室温を下げたり、服の枚数を調節しましょう。
赤ちゃんの手を触って温度を確かめる人もいますが、手先はつねに服やタオルケットの外に出ているため冷たく感じられることが多く、暑いか寒いかの判断に向いていません。室温が快適かどうかは背中・額を触って確認しましょう。
こまめに赤ちゃんの体温を計ったり、背中や額に汗をかいていなか確認するのはちょっと面倒…というママもいるかもしれませんね。
そこで、赤ちゃんが快適な室温の目安を佐藤先生に教えてもらいました。
佐藤先生
エアコンを使うことが多い春〜夏の赤ちゃん(1歳頃まで)の衣類は、肌着+ロンパース(おすわり以降は上下セパレートの服も可)の2枚が基本です。衣類を2枚着せた状態で、室内を以下の環境にするといいでしょう。
● 室温:24~26度
● 湿度:50~60%
赤ちゃんがねんねしたときは、タオルケットなどをかけてあげます。もし足先が冷たかったり、額や背中に汗をかいていたりする場合には、エアコンの温度を上げ下げしましょう。
赤ちゃんが1歳頃になったら肌着はなくし、上下セパレートの服1枚でも十分です。
この目安を覚えておくと、赤ちゃんに快適な環境を作りやすいですね。
教えて助産師さん!
「エアコンを使うとき、不安があります」
編集部では、これから迎える夏を前に「エアコンにまつわる不安」がないかもアンケートを取りました。
そこで、多くのママがエアコンを使うときに不安に思っている点を、助産師の佐藤先生に回答してもらいました。
第1位:朝から晩までエアコンを
つけっぱなしでもいい?
【ママの気になる度:58.5%】
エアコンを使う場合、どのくらいつけっぱなしにしてよいのか気になっているママは多いもの。約6割のママが気になると答えてくれました。
長時間の使用は避けた方がよさそうな気がしますが、実際のところどうなのでしょうか?
佐藤先生
外気温が高く、その影響で赤ちゃんにとって適正な室温を保てないようなら、エアコンをつけたままでも問題ありません。
ただし、次の2点には注意しましょう。
● 赤ちゃんの体が冷えていないか
● エアコンの風が当たっていないか
体温が36.5度以下になっていたり、タオルケットをかけた状態でも足先を触って冷たく感じられたりする場合は、少し寒すぎる可能性があります。タオルケットをもう1枚かけるなど調整しましょう。
第2位:エアコンを使うと
「赤ちゃんが強い子に育たない」は本当?
【ママの気になる度47.3%】
続いても、約5割と多くのママが気になっている内容。「汗をかかないと汗腺が育たない」「風邪を引きやすくなる」といった「エアコンを使うと赤ちゃんが強く育たない」という噂は本当なのでしょうか?
佐藤先生
そもそも汗腺は、新生児でも大人でも同じ数だけ皮膚に存在します。その割に赤ちゃんの方が体の表面積が小さいため、汗をよくかくわけです。
そのため、まだ自由に動けない赤ちゃん、特に新生児期のうちから室温を調整しないで汗をかかせようとすると、知らず知らずのうちに脱水や熱中症になる可能性があり危険です。歩いたり走ったりできるようになる小児のころに、遊んで汗をかくことで十分、汗腺は育てられます。
風邪をひきやすいかどうかは免疫の機能によるので、はっきりとした関係はわかっていません。
あまりに暑いようなら、無理をせず、エアコンを使うようにしましょう。
第3位:就寝時はエアコンを止めるべき?
【ママの気になる度36.8%】
続いて約37%のママが気になっているのが、就寝時のエアコンの使い方です。
熱帯夜やパパが暑がりだと、就寝時にエアコンをつけたくなるものですが、「寝冷えをしないのか心配…」という人もいますよね。
佐藤先生
ママの体感温度を基準に考えるといいですよ。ママがTシャツなど衣類1枚で快適に寝られる温度に設定し、赤ちゃんには1枚足して衣類を2枚着せるといった具合です。
赤ちゃんの足先が冷たいときは、設定温度が低くて赤ちゃんの体温が下がっている可能性があります。エアコンの温度を見直したり、タオルケットなどの掛け物で調節しましょう。
第4位:エアコンの冷房は何度に設定する?
【ママの気になる度33.6%】
約3人に1人のママが気になっているのが、そもそもの「エアコンの設定温度」。育児書だと「28度に設定を」などとも書かれていますが、設定温度は何度がよいのでしょうか?
佐藤先生
実は、冷房の設定が27度以下だからといって悪いわけではありません。外気温との差を4~5度以内にするのが目安です。
たとえば、外気温が31度なら、エアコンを26度くらいに設定するといった具合です。35度以上の暑い日については、26〜28度を目安に、赤ちゃんが快適に過ごせる温度に設定するとよいでしょう。
外出先から帰宅したばかりの家は熱気がこもることもありますよね。その場合は、室内が涼しくなるまで25度くらいに下げ、落ち着いて過ごせるような室温になったら1度ずつ温度を上げ、外気温とバランスを取るといいですよ。
第5位:「温度差」は赤ちゃんの体に
どんな影響がある?
【ママの気になる度24.9%】
冷えた部屋から暑い屋外に出る、暑い屋外からコンビニなどの冷房がきいたお店に入るなど、暑い環境と涼しい環境の「温度差」が気になる人もいます。
佐藤先生
外気温と室温との差を4~5度以内にするのが目安とお伝えしましたが、それはできるだけ「温度差」をなくすためです。温度差が大きいと赤ちゃんの身体に負担がかかってしまいます。
外出時に特に気をつけたほうがいいのは、冷房の効きすぎている環境。夏のおでかけで薄着、裸足の赤ちゃんをよく見かけますが、靴下、掛け物、羽織り物などを持参し、温度差を調整できるようにするといいですよ。
汗をかいたまま冷房がきいたお店などに入ると、汗冷えしてしまいます。汗をかいていたら汗をふいたり、場合によっては着替えさせてあげてもいいですね。
番外編:赤ちゃんに使う前にエアコンのフィルター掃除を!
夏に向け、赤ちゃんがいる部屋のエアコンの使い方がわかったところで、もう一つ注意を。そもそもエアコン自体が汚れていないか、使う前に確認しましょう。
佐藤先生
エアコンのフィルターが汚れていると細菌やカビの繁殖につながり、キレイな空気が出てきません。清潔な空調を保つために、あらかじめエアコンフィルターを掃除し、2週間に1度はホコリを掃除機で取り除きましょう(※1)。
赤ちゃんの様子を見ながらエアコンを使おう
年々暑さを増す日本の夏。赤ちゃんは暑いかどうかを意思表示することはできないので、脱水や熱中症を引き起こす前に、ママやパパが必要に応じてエアコンをうまく活用するようにしましょう。
背中や額が汗ばんでいるなら温度を下げる、体温が下がっていたらタオルケットを1枚かけるなど、赤ちゃんの様子を見て臨機応変に対応してくださいね。
▼スイング機能を使う時の注意点や、赤ちゃんの体を冷やしてしまう勘違いなどはこちら
取材協力:佐藤 裕子
助産師 / マタニティハウスSATO
日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助産院では、日々多くのママたちからの母乳相談や育児相談を受けています。具体的に悩みを解決でき、ここにくると安心してもらえる、そんな助産師を目指しています。
※1 アンケート概要
実施期間:2019年5月5日~5月6日
調査対象:子育てアプリ「ninaru baby」利用者
有効回答数:223件
収集方法:Webアンケート
ポッケ専門家チーム
作者