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怒りを操るアンガーマネジメント(1)怒りのピークを乗り越える5つの方法

子どもに対して、夫に対して、イライラしたり、ついカッとなったり…。そもそも怒りとは、どんな感情なのでしょうか?怒りをコントロールする方法はあるのでしょうか?

この記事では怒りのピークを乗り越えるためのテクニックについて、日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実先生に伺いました。

戸田久実先生

戸田久実先生

日本アンガーマネジメント協会理事、アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役。アンガーマネジメントをはじめ、伝わるコミュニケーションをテーマに講演・研修を多数行う。著書に『「つい怒ってしまう」がなくなる子育てのアンガーマネジメント』(青春出版社)がある。

怒りも自然な感情。悪い感情ではありません

親子 イライラ 不機嫌

何度注意しても言うことを聞かない、食事の時に行儀が悪い、支度をせずにぐずぐずしている……。

日々の育児のなかで、子どもに対して怒りの感情を抱き、「何で言う事が聞けないの!?」「ちゃんと食べなさい!」「早くしなさい!」などと、どなってしまうことってありませんか?

子どもに対してだけでなく、パパに対しても「家事をするのはいつも私だけ!どれだけ私が大変かわからないでしょ!」「自分が脱いだ靴下くらい、洗濯かごに入れてよ!」など、感情的に責めてしまうことも。

そのたびに、「また怒っちゃった」「すぐにイライラしてしまう私って、最低」などと後悔したり、自分を責めて落ち込んだりするママも少なくないようです。

怒りの感情は「嬉しい」「楽しい」と同じで、私たち人間にとって自然な感情。抱いてはいけない、悪い感情ではないのです。

ただし怒りの感情はエネルギーが強いので、「感情を爆発させやすい」という特徴があります。そして子どもやパパ、実母など、身近な家族に対してより強くなる傾向もあります。

怒りの裏にある「本当に伝えたいこと」を意識しよう

怒りは「第二次感情」とも言われます。自分の体調が悪くて「つらい」、夫が家事を手伝ってくれなくて「悲しい」などといった根本にあるのが「第一次感情」。

miku アンガーマネジメント イラスト

これらの第一次感情に目を向けず、「もうイヤ!」「いいかげんにしてよ!」など、カッとなって感情をはき出すのが「怒り」です。「この怒りの元は何か?」と意識することが大切です。

第一次感情が、本当に相手に伝えたいことなのです。

「アンガーマネジメント」で
怒りの感情と向き合う

育児 ママ アンガーマネジメント

これらの怒りの感情と向き合う方法が、「アンガーマネジメント」。アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで開発された「怒りとうまく向き合うための心理トレーニング」です。

ただし、「アンガーマネジメント=怒らないこと」ではありません。「怒る必要のあることには適切に怒る。でも、怒る必要のないことは怒らない」ことで、怒り過ぎへの後悔、怒らなかったことへの後悔を減らしていくことを目指すものです。

アンガーマネジメントの理論によると、どなりちらしてしまう、きつい言葉を発してしまうなどといった怒りの“衝動”は、怒りを感じてから6秒以内に起こると言われています。

どんなに強い怒りでも、ピークは6秒。つまり、カッとしてから6秒やり過ごすことができれば、より冷静に怒りと向き合うことができ、感情的にならずにすむと考えられています。

怒りの感情を感じてから
「6秒」やり過ごす5つの方法

時間 時計

6秒をやり過ごす方法としてあげられるのは、次の5つです。

  1. 怒りに点数をつけてみる
  2. その場から離れる
  3. 数を数えてみる
  4. 深呼吸をする
  5. 心が落ち着くフレーズを唱える

上記の方法について、詳しくみてみましょう。

1:怒りに点数をつけてみる

イラっとしたとき、心の中で、その怒りに点数をつけてみましょう。例えば、10点満点として「子どもがひじをついて食べている時、6点」「夫が朝のゴミ捨てを忘れた時、5点」……という具合です。

“点数をつける”ことに意識が向くため、感情を爆発させずにすみます。

2:その場から離れる

トイレに行く、別室に行くなど、その場を離れることで、高ぶった感情をいったんリセットできます。その際は、「ちょっとトイレに行ってくる」「○○の部屋にいるね」など、必ず声をかけましょう。離れたあと、深呼吸したり、お茶を飲んだりなどリラックスを。

3:心が落ち着くフレーズを唱える

「まあ、いいか」「大丈夫」など、怒りを感じた時すぐに唱えることができるフレーズをあらかじめ考えておき、その時がきたら、そのフレーズを心の中で唱えましょう。フレーズは、かわいがっているペットの名前や好きな芸能人など何でもOKです。

4:数を数えてみる

ムカっとした時、頭の中で数を数えてみましょう。「1、2、3… 」と急いでカウントするのではなく、100から4ずつ引き算し、「100、96、92、88…」など、少し頭を使って数を数えることで、怒りにまかせた行動をしにくくなります。

5:深呼吸をする

激しく怒ると、自律神経のバランスが乱れるといわれています。カーッと血がのぼったら、鼻から息を吸い、口から息をはく深呼吸を2、3回繰り返しましょう。呼吸に集中することで、怒りの感情がおさまりやすくなります。


これらの中から自分ができそうなものを選び、まずは1週間を目標に取り組んで怒りと向き合ってみましょう。

次回は
「怒りにくい体質にする3つの方法」

いかがでしたか?次回は「怒りにくい体質にする3つの方法」についてご紹介します。

イラスト/犬塚円香 取材・文/長島ともこ
出典:miku 51号 2018年春号
※掲載されている情報は2018年3月25日当時のものです。一部加筆修正しています。
絵本ナビ編集部

ポッケ専門家チーム

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お医者さんや助産師さん、保育士さんなど、その道のプロの先生たちに、ポッケ編集部がママたちのギモンを聞く連載です。