赤ちゃんにおっぱいを飲ませるという行為は、人間だけでなく、ほ乳類に共通する行為です。実は2億年も昔から、ほ乳類は赤ちゃんをおっぱいで育ててきたという歴史があるそうです。
それだけ長い年月をかけて受け継がれてきたこの育児方法は、いまだに解明されていないこともたくさんあります。
そこで今回は、全国のママから寄せられた「おっぱいに関する疑問」について、助産師の菊池さんに教えてもらいました。
母乳の気になる噂、これってホント?
日本は、卒乳が早いってホント?
菊池さん
赤ちゃんの主体性に任せた場合、2〜4歳に卒乳することが多いと言われています。
世界の平均卒乳年齢は4歳2ヶ月なので、日本は早いほうになります。
日本では、かつての指導方針の名残で1歳前後での卒乳という風習が残っているようですね。
母乳の栄養は低くなっていくってホント?
菊池さん
厳密には成分は変化していますが、母乳そのものの栄養価は下がりませんよ。安心してください。
赤ちゃんの成長とともに必要になる栄養が増えてきて、鉄など、母乳だけでは補いきれない栄養素もあります。そのため、離乳食が始まるのです。このあたりから、誤解されてしまったのかもしれませんね。
母乳育児をしていると痩せやすいってホント?
菊池さん
授乳中のママは、おっぱいを通じて赤ちゃんに栄養を分け与えます。そのため、授乳中の女性は、一般女性よりも1日あたり350kcalほど多くエネルギーを摂る必要があるとされています。
栄養バランスに気をつけて、和食中心の食事を心がけるママも多いですよね。このあたりも関係して、「母乳育児は痩せやすい」と思われているのでしょう。
母乳育児をしていると、ママは便秘をしやすいってホント?
菊池さん
実は、産後のママの多くが便秘で悩まされているようです。
慣れない育児で疲労がたまったり、運動不足、赤ちゃんが気になってゆっくりトイレに行けない、会陰切開をした傷が気になっていきむのが怖いなど、いろいろな理由があるようですね。
母乳はママの血液から作られているため、母乳を与えていると体内の水分量が不足しがちです。そのため、母乳育児をしているママのほうが、便秘になりやすいかもしれませんね。
赤ちゃんにも飲み方の個性があるってホント?
菊池さん
多く相談されるのが、成長とともに周囲が気になって授乳に集中しないようになることです。また、乳首で遊ぶ赤ちゃんもいます。これらも個性の一つと言えますね。
そのような様子が見られたら、赤ちゃんが集中しやすい環境を作るようにおすすめしています。
赤ちゃんは本能でおっぱいを吸っているってホント?
菊池さん
産まれてすぐは、赤ちゃんは「探索反射」でおっぱいを探しています。そして、「吸てつ反射」でおっぱいや哺乳瓶を吸っています。
反射は正しくは原始反射と呼ばれ、「外の世界で生き延びるために、本能的に備わっている行動」のことです。
反射は成長と共に消えていき、そのころには自分の意志で上手におっぱいを吸うようになるんですよ。
ママによって母乳の味は違うってホント?
菊池さん
お母さんの食べたものによって、母乳の風味が変わることがあると言われています。
「ママがニンニクを食べたら、赤ちゃんがおっぱいをよく飲んだ」という研究結果もあるんですよ。ただ、多くのことは明確にはわかっていません。
母乳には免疫が含まれているってホント?
菊池さん
正しくは、母乳には「抗体」が含まれていて、そのおかげで赤ちゃんが病気にかかりにくくなる効果があります。
産後すぐに出る初乳にとりわけ多く含まれますが、その後に分泌される成乳にも含まれています。保育園や幼稚園などで集団生活が始まった際、母乳をあげていた子供のほうが体調を崩しにくいかもしれません。
授乳は、赤ちゃんとの大切な時間
どれだけ長い歳月が流れても、変わらない育児の一つが母乳育児です。時代や国によってこれだけ文化が異なるのに、なんだか不思議ですよね。
おっぱいには、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。
ただ一つ確かなことは、授乳は赤ちゃんとママの大切なコミュニケーションの時間であるということ。
やがて終わりがやってきてしまう授乳タイムを、大切に過ごしてくださいね。
取材協力:菊池 はるな
助産師
茨城県立中央看護専門学校助産学科卒業後、総合周産期センターの産婦人科・NICU勤務を経て、現在は横浜市内の産婦人科クリニックに勤務するかたわら、小児科での母乳外来や産後ケアも担当しています。お母さんと赤ちゃんに寄り添いながら、妊娠生活や出産、育児が楽しめるようなサポートを心がけて、日々働いています。現在、IBCLC(国際ラクテーションコンサルタント)取得のために奮闘中です。