ベビーサインを試し始めたママの多くが、こんな悩みに直面するそうです。
「赤ちゃんがベビーサインをしてくれない」
たしかに、何度も何度も語りかけをしながらベビーサインを見せているのに、赤ちゃんがいっこうにベビーサインをする気配がなかったら不安になってしまいますよね。
そこで、ベビーサイン連載の第3回となる今回は、赤ちゃんがベビーサインをしてくれるまでにどれくらいかかるのか、赤ちゃんがベビーサインをしてくれない理由と対処法などを、日本ベビーサイン協会の長屋さんにおうかがいします(前回記事は下記を参照してください)。
赤ちゃんはいつベビーサインをし始める?
−教え始めたらどれくらいで赤ちゃんがベビーサインをするようになるんですか?
日本ベビーサイン協会・長屋さん(以下長屋さん):赤ちゃんの成長には個人差があるし、教え始めた時期によっても違うので一概には言えないんですが、生後6〜8ヶ月から始めた場合は平均するとその2〜3ヶ月後くらいにベビーサインをやるようになります。
−2〜3ヶ月ですか…。ママやパパに根気が求められそうですね。
長屋さん:月齢の高い赤ちゃんの方が習得は早くて、たとえば生後10ヶ月だと2週間〜1ヶ月で覚えるということもあります。1歳以降になると覚えるのがさらに早くなりますよ。
2〜3ヶ月も待てないというママは、赤ちゃんが1歳になってから始めた方がストレスがないかもしれませんね。
−ベビーサイン教室に通うことで、覚えるのが早くなりますか?
長屋さん:そうですね。ベビーサイン教室では、ご家庭でベビーサインを効果的に教えるコツを伝えたり、使用頻度が高くなるようなアドバイスを行っているので、赤ちゃんが覚えるサインの数も多くなるし、サインをやり始める時期も独学でやるより早い傾向にありますね。
300個以上のベビーサインを使う赤ちゃんも
−赤ちゃんが覚えるサインの数の話が出ましたが、平均でどのくらいのサインを使えるようになるんですか?
長屋さん:ベビーサイン教室受講者への調査では、赤ちゃんが使えるようになったベビーサインの数は平均すると77個というデータがあります。ただし、これも個人差があって、300個以上のサインを使っていた赤ちゃんもいましたよ。
–300個ですか!?
長屋さん:そうです。1日でみると、40〜50個くらいのベビーサインを使いながら、コミュニケーションを取れるようになることが多いですね。
–赤ちゃんってすごいんですね。私は40個もサインを覚えられる気がしません…。
赤ちゃんのサインを見逃していませんか?
−では、赤ちゃんがベビーサインをなかなかやらない場合、考えられる理由としてはどんなものがありますか?
長屋さん:まず、ママがサインを見逃している可能性がありますね。
赤ちゃんがするベビーサインは、手の動きが一瞬であることが多いので、見慣れていない人は見逃してしまうことがあるんです。
赤ちゃんがベビーサインをしてくれたときに、それに気づいて受け止めてあげることはとても大事で、ママがサインに気づかずにいると、赤ちゃんはベビーサインを使わなくなってしまいます。
−ベビーサインを教えるには観察力も求められるんですね。
長屋さん:そうですね。でも、ベビーサインを教え始めると、自然と赤ちゃんをすごく観察するようになりますよ。
「くま」「魚」のサインを覚えてもらうのが大切!?
長屋さん:ママにとって便利なサインばかりを教えているのも、赤ちゃんがベビーサインをなかなかしない理由として考えられますね。
たとえば、ベビーサインの中には「くま」「魚」といった動物や「飛行機」「車」といった乗り物のサインがあるんですけど、「これを覚えて何の役に立つんだ?」と思ったりしませんか?
−確かにそうですね…。
長屋さん:赤ちゃんにベビーサインをしてもらうには、「ベビーサインって面白い」「使うとまわりの人が喜んでくれるんだ」「自分の言いたいことが伝わるんだ」と、赤ちゃん自身にメリットを感じてもらう必要があります。
だからそのために、まずは動物や乗り物などの赤ちゃん自身が興味のあるもののサインを教えていった方がいいんです。
−「ダメ」のサインなど、親にとって便利そうなものばかり教えるのはよくないんですね。
長屋さん:そうなんです。そうしたサインはママとしては育児がラクになるかもしれませんが、赤ちゃん自身が使うサインではないですからね。
「おいしい」はおいしいものを知っていないと使えない
長屋さん:似たような理由で、教えるサインが赤ちゃんの成長段階にあっていないというのも考えられますね。
−それはどういうことでしょう?
長屋さん:「痛い」「おいしい」って、痛いというのがどういうことなのか、何がおいしいのかをわかっている必要があるじゃないですか。
だから、「痛い」「おいしい」のサインを使えるようになるには、痛い・おいしいという概念を理解している必要があるんです。
色や感情表現は高度なので、ベビーサイン教室でも比較的後半に教えるようにしています。
アイコンタクトはベビーサインの下準備
長屋さん:さらに、赤ちゃんがベビーサインを理解してくれない理由としては、アイコンタクトがしっかりできていない、という可能性もあります。
ベビーサインは視覚に頼ったコミュニケーションなので、赤ちゃんの目線を捉えることが重要なんです。ママやパパがサインをやって見せても、赤ちゃんがそれを見ていなかったら意味がありませんからね。
−月齢が低いと、目をキョロキョロさせて視線が定まっていないときがあったりするので、サインを見ているようで見てないことがあるというのはよくわかります。
長屋さん:特にパパに多いんですが、ねんね期の赤ちゃんとどうやってコミュニケーションをとったらいいのかわからない、という方はけっこういますね。
でも、生後6ヶ月までに、いかに赤ちゃんとアイコンタクトをして、スキンシップやコミュニケーションをとっているかが、ベビーサインの下準備として大事なんですよ。
目線を捉えるには繰り返し遊びが効く
−では、アイコンタクトがうまくできない場合はどうしたらいいのでしょうか?
長屋さん:アイコンタクトがうまくできないということであれば、「いないいないばあ」などの繰り返し遊びをしたり、目の前でぬいぐるみを動かしてあげたりして、赤ちゃんの目線を捉える練習をしてみてください。
−特別な方法は必要ないんですね。
“発表会”をすると赤ちゃんは楽しくなくなる
長屋さん:何かを解決することを目的にしない、お稽古のようには教えない、というのも、ベビーサインの教え方のコツですね。
あと、赤ちゃんがサインをやってくれると、嬉しくなって、つい周りの人たちに「見て!見て!」と“発表会”のようなことをしてしまったりもしますが、これは赤ちゃんがベビーサインを楽しめなくなる原因なのでやめた方がいいでしょう。
−赤ちゃんはやりたいサインを、やりたいタイミングでする、ということでしょうか。
長屋さん:そうです。だから、赤ちゃんの手が動かない間も諦めずに続けてみてください。
赤ちゃんに3ヶ月教え続けてもサインをやらないからといってやめてしまうと、4ヶ月目に赤ちゃんが自分からサインをする、なんてこともあります。
でも、そのときママがサインに気づいてあげられなくて、せっかく始めてくれたサインをやらなくなってしまうということもあります。
−焦らないことが重要なんですね。
長屋さん:そうです。ベビーサインは必ずできるようになるものですから。
次回からはベビーサインの応用編!
赤ちゃんが1歳未満の場合は、ベビーサインをやってくれなくても焦らず、辛抱強く教えるのが成功するコツみたいですね。
今回までで、ベビーサインの基本的な話は終わりです。次回の連載第4回からは、後追いに効くベビーサインや赤ちゃんの危険防止に役立つベビーサインなど、より応用的な内容をお伝えします。
ご期待ください!
取材協力
参考書籍
『親子で楽しむベビーサイン』(実業之日本社/吉中みちる・まさくに著)
ポッケベビーサイン部
作者