こんにちは。編集部の石川です。
産後の女性のメンタルヘルスとして問題となっている「産後うつ」。しかし、産後うつではなく「産後ハイ」になるママも実は多いこと、ご存知ですか?
そこで今回は、先輩ママたちの産後ハイ体験談を紹介しつつ、産後ハイになる原因と症状を、助産師の河井先生に解説してもらいました。
産後ハイとは?
「産後ハイ」とは一般的に、産後に興奮状態・ハイテンションが続き、「いつもの自分とは異なる行動をする状態」のことをさします。
ハイテンションになる、という意味では、双極性障害における「躁状態」(※)に似ている場合もあります。
ただ、産後ハイは医学的な専門用語ではないため、論文などの資料はほとんど見つかりません。
産後の女性のメンタルヘルスについては、精神的に激しく落ち込む「産後うつ」の方が医学的には深刻な問題であるために、産後ハイがクローズアップされることは少ないのが現状です。
(※)双極性障害とは、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂鬱で無気力なうつ状態という両極端な状態を繰り返す精神疾患です。「躁状態」になると、家族や周りの人が困ったり、社会的信用を失ったりするほどの、現実離れした無謀な行動を実行してしまうこともあります(※1)。
【体験談】産後ハイだった頃を振り返ると…
しかし、編集部が282人のママたちにアンケートをとったところ(※2)、なんと約5人に2人が産後ハイを経験していることがわかりました。
アンケートでは、ママたちからこのような体験談も集まりました。
いつもの自分と違う…
普段はSNSに写真を上げないのに、赤ちゃんの写真をたくさん上げたり、友達に赤ちゃんの写真を送ったり。普段会わないような、そこまで仲良くなかった友達とも連絡を取り合って会おうとして、何だかいつもの自分と違いました。
ぬっこさん
興奮が続いて眠れない…
産後すぐのとき、興奮していてお喋りが止まらなかったり、眠たい感覚があまりなかったりしました。産褥期も、暇な時間は常に何かすることを探していて、ずっとそわそわしていました。
じぇんじぇんママさん
普段以上に頑張ってしまう…
寝不足だし、貧血もあって疲れているはずなのに、元気が有り余っていて、家事を普段以上にきちんとやっていました。
みーさん
疲れているのに疲れを感じない…
眠たいのに眠れませんでした。体が軽くて動きやすいことが嬉しくて、疲れているはずなのに、ついつい家事や上の子の送迎などを自分でしていました。
ひなたんママさん
体験談を見ていると、「産後ハイ」と思われる状態のときには自覚しておらず、後から当時を振り返って気づくことが多いようですね。
産後ハイは、医学的にはまだ問題視されていませんが、産後ハイから産後うつになるケースもあるといいます。
産後ハイの状態を知っていれば、周りの人が気づいたり、自分でも違和感を察知することができるかもしれません。
そのためにも、産後ハイがどんなものなのか知っておくと良いですね。
産後ハイの症状は、産後うつの前兆…?
今回は、助産師歴25年以上の河井先生に、産後ハイについて、これまでに見聞きした経験を教えてもらいました。
– 産後ハイとは、具体的にどのような状態のことをいうのでしょうか?
私が見聞きした産後ハイの状態は、
- 常に喋っている
- 余計な一言を言ってしまう
- 活動的に行動する
- 出産報告を突然、または長くしてしまう
- 出産体験を話したがる
- 赤ちゃんの写真を送りまくる など
などがあります。
産後ハイがさらに進み「躁状態」になると
- 自信たっぷりになる
- 一晩中起きていたり、あまり食事を摂らなかったりする
- 休息を取らず、自分には子育て以外にもやるべきことがたくさんあると感じて、赤ちゃんのお世話がおろそかになる
- 現実的でない計画や行動をして、うまくいかないと怒りっぽくなる
- 自分と赤ちゃんのお世話の両方が放置される
というような、家族や周りの人が困るような症状が見られます。
– 「産後ハイから躁状態になる」ということは、産後ハイと産後うつには何か関係があるのでしょうか?
産後のハイな状態が進むと、「躁状態」や「うつ状態」に移行する可能性もあります。
また、産後ハイになって元気に動き回った結果、急に落ち込んで産後うつになる可能性も考えられます。
– そうなのですね…。しかし、産後ハイなのか躁状態なのか、周りや自分が気づくのはなかなか難しそうですね。
そうですね。産後ハイなのか躁状態なのかを自分や周りの人が判断することは、とても難しいと思います。
たまに接しているだけの人だと、「ちょっとハイになっているね」「出産後だから嬉しいんだね」と、様子を見たり距離を置いたりするということになるでしょう。
産後ハイの原因はまだ分かっていない
– 産後ハイの原因は何なのでしょうか?
産後ハイの原因は、はっきりしていないとされています。
出産中はアドレナリンが分泌されて、神経が高ぶっている状態なので、産後にもしばらくその影響を受けるのでしょう。
また、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌の著しい変化も関係しているのかもしれません。
さらに、産後の女性の多くは寝不足、疲労、緊張などを感じますので、その影響を受けている可能性も高いのではないでしょうか。
– では、産後ハイを予防するのは難しいのでしょうか?
そうですね、予防するのは難しいかもしれません。
ただ、本人や家族、身近な人が、産後には気分が高まったり、落ち込んだりと感情の揺れがあることを知っておくと、サポートをしたり、すぐに異変に気づいたりできるので良いと思います。
産後ハイには周りの気づきが必要不可欠
– もし産後ハイになってしまった場合、どうしたら良いのでしょうか?対処法はありますか?
産後の女性自身が、「自分が産後ハイになってる」と気がつくことは難しいかもしれません。
ですので、身近な人が気が付き、優しく諭すという方向で対処してはいかがでしょうか。
一般的に、うつ状態だと発見されやすく、ハイテンションなだけで健康に問題が出てこなければリスクがそれほど高くないため、医療介入されることはあまりありません。
ただし、ハイテンションなだけでなく躁状態またはそれに近い状態になる、あまりにも気分の浮き沈みが激しい、赤ちゃんの世話と産後の女性自身の身の回りのことができていない・しようとしていない、または行動が非現実的などの場合は、病院を受診することをおすすめします。
寝ていないなど、健康に影響がある場合は、薬が処方されることがありますよ。
「産後ハイ」は周囲の気づきが大切
産後ハイは、産後の興奮状態と思われてしまいがち。ですが、産後ハイは症状が悪化すると産後うつなどの精神疾患になってしまう可能性もあります。
産後の女性はメンタルがとても不安定であることを多くの人が理解し、みんなでサポートできるようにしていきたいですね。
※2 アンケート概要
実施期間:2019年2月7日~2月8日
調査対象:生後1ヶ月〜4歳の子供をもつママ
有効回答数:282件
収集方法:Webアンケート
取材協力:河井 恵美
助産師、看護師/エミリオット助産院
助産師歴25年以上。
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。現在シンガポール在住。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務。インターネットでエミリオット助産院開設中。