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頑張り過ぎのママへ【1】産褥期で不安定な心との上手な付き合い方

赤ちゃんがこの世にうまれてきてくれたことは、出産を終えたママにとって、とても幸せなこと。
でもなぜか気持ちが落ち込んで、涙が意味もなく流れてしまう…。そんな経験はありませんか?

この連載は、頑張り過ぎて辛い思いをしている育児中のママが、「赤ちゃんと一緒に自分の心も抱きしめてもらえるように」と願いを込めてスタートしました。

そんなママたちへのアドバイスを伺ったのが、子育てに悩む女性から、末期の病気を患う方まで、数多くの不安な心に寄り添ってきたバースセラピストの志村季世恵さん。暗闇のソーシャルエンターテインメントと名高い「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の理事を務めるなど、多方面で活躍されています。

第1回目は、志村さんがバースセラピストとして活動されるようになった経緯、そしてバースセラピストとして産褥期の不安定な心との上手な付き合い方を教えてくださいました。

幼い頃から気付けばいつも傍にこどもがいた

頑張り過ぎのママへ 第1回 志村さん 写真①
-バースセラピストになられた「きっかけ」はありますか?

私には歳の離れた姉や兄がいたので、小学校1年生で、おばさんになりました。小学校時代だけで、姪っ子や甥っ子が7人。そのおかげでいつも身近にこどもがいました

夜泣きや授乳で手こずる姉を見て、今まで見ていた姉とはまた別の姿を知りました。子育ては大変そうではあったけれど、我が子を見つめる姉が美しくてママってすごいな、素敵だなと。当時小学生の私でも分かる変化でした。

さらに母がこども好きで、近所のこどもを毎日のように預かってくるんです。私が学校から帰宅して自分の部屋に入ると、ベッドに知らないこどもが3人くらい寝ていることもあって(笑)。

母は、1人で頑張るママたちを、少しでも楽にしてあげたかったんでしょうね。家でこどもを預かっては、その間にお茶しておいでとかね。

周囲がこどもを見守る、それが当たり前の環境

-お母様がごく自然にセラピストのような活動をされていたのですね。

それから時が経ち、私も「母」になりました。

1人目のこどもを産んだのは35年前ですが、母がご近所のママたちにしていたことを、今度は私が周りからしてもらっていました

夜泣きの声が聞こえていたのでしょうね。睡眠不足の私の顔を見て「抱っこしてあげるから、ちょっと寝ておいでよ」なんて言ってもらったり。今でも育児中に助けてもらった経験は、大切な記憶として残っています。

漢方薬局の受付から、セラピストへ

頑張り過ぎのママへ 第1回 志村さん 写真②
-その時はまだセラピストではなかったのですね。

はい。もともと私は亡くなった夫と整体と共に漢方薬局を営んでいました。私はお母さんや赤ちゃんのボディケアや、手の空いたときはそこで受付をしていたんですけど、漢方薬って処方するまでに長く人を待たせてしまうんです。

その中で自然と、待たせているお客さんとじっくり会話するようになりました。そのうち、いらっしゃる方々は薬を処方してほしいだけでなく、自分の苦しみに共感してほしいという気持ちを抱いていると気づき、悩みを聞くのがメインになっていったという感じなんです。

それからは、さまざまな状況でいろいろな悩みを背負う人たちの心のケアをするようになりました。

誕生と死、命に向き合うことに変わりはない

頑張り過ぎのママへ 第1回 イメージ①
-出産、育児に関わることになったきっかけは何かありますか?

ボランティアでターミナルケアも長い間行っていたため、最初はママよりも、末期のガンを患う方のカウンセリングをする機会が多くありました。

あるとき、ターミナルケアでお世話をしていた男性が、「死と誕生は、命に直面することとして共通していると思う。生まれる人のことも見つめる…あなたは出産の方にも関わると良いよ」と言ってくれて。偶然にもその方が亡くなってすぐに、妊娠中の方のカウンセリングに入ったんです。

その女性はお連れ合いを妊娠中に亡くし、どうやって過ごして良いか分からないとても辛い状態でした。カウンセリングをする中で出産の立ち会いも、と望まれ立ち会ったんです。

その経験から出産、育児に対する関わりが深まっていった感覚はありますね。


-ここからは、バースセラピストとしてご経験が長い志村さんに、産後ママたちが真っ先に直面する産褥期の悩みや、心との付き合い方に関してお話を聞かせてください。

産褥期はホルモンの嵐!だから仕方ない

頑張り過ぎのママへ 第1回 志村さん 写真③
-産褥期は、なぜこんなにも気持ちが不安定になりやすいのでしょうか?

産褥期は「ホルモンの嵐だ」って私呼んでるんです。大切な命を授かり、妊娠期間のたった10ヶ月間で育て上げるためには、ホルモンが大きな役割りを担っています。

それが出産となるとさらに高まり、一気に上がったかと思うと、次は育てなきゃいけないよ!というホルモンも新たに生まれてくる。ここまでホルモンが激動する時期は、産褥期以外ないんですよね。

ある意味地球誕生くらいの規模のことが体内で行われているのですから、とても大変なことですよね。でもすこし考え方を変えると、そんなすごいことをした素晴らしい力が、ママにはあるということなんです。

こどもが産まれて嬉しいはずなのに、ささいなことでもピリピリしちゃう。これはこどもの命を守らなければという動物的な野生の感覚が、女性には備わっている証拠なんです。ママがどんなに浅く短い睡眠でも、かろうじて体を保てているのもホルモンのおかげ

だから、産褥期は、ある程度はもうしょうがないと割り切った方が気持ちは楽になると思いますよ。

産後のママはホルモンの影響で不安定だけど、その力があるから一生懸命育てることができている。理論的に知っておくことは、安心材料になりますよ。

余裕がないときはパパ以外の人にも頼ること

頑張り過ぎのママへ 第1回 志村さん 写真④
-頭では分かっているけど辛い…そんなときの解決方法はありますか?

ママに余裕がないときや助けてほしいとき、当然ですが一番身近なパパに相談したり、応援を求めます。でも、パパから的確な答えが返ってこなくて、ママはとてもイライラしてしまいますよね。でも、パパはママより新米さんなんです。

2人とも産後は初めての経験に動揺しています。しかもパパからすると、自分の妻が妊娠し出産し大きく変化していくことに感動しつつも驚いたり、追いつくのに精一杯なんてこともあるのです。

2人でこどもを育てるって本当に大切だけど、パパだけでなく、違う立場の人に相談するのもおすすめですよ。

こども1人につき100人の応援団を作ろう

頑張り過ぎのママへ 第1回 イメージ②
昔はこども一人を育てるには100人の人の力が必要なんて言う言葉がありましたが、確かにそうだなと私も思います。私も出会うママには同様のことを言っていますが、パパやご両親、友だちや親戚、ご近所さんなどにたくさんお願いしてみてください。

もちろんベビーシッターさんでもいいですし、少し調べれば産後のママをサポートしてくれるところは出てきますよね。

どんな人だって正確に決める必要はないんです。

ご近所さんと挨拶を交わし、お話する機会が増えればその中の何人かはこども好きな人もいるはず。先ほどお話した、私が夜泣きの赤ちゃんに手こずっていたときに声をかけてくれた人は、私があいさつを交わし、それからお付き合いが深まってのこと。

ベテランのお母さんじゃなくてもOK。色々な人たちに、こどもに目を向けてもらうことが大事なんです。

今のお母さんたちを見ていると、何でも枠にはめて選びがちだな、と思うんです。

この場合はこういう人に見てもらわなくちゃとか。できたら少しでもその枠を広げて、色々な知恵を持った人に頼ってもらいたい

こどもを違った角度から見てもらうことで、知らなかったこどもの一面にも出会えますよ。

歩けないおばあちゃんだって良い、決めつけないで、巻き込む。あらゆる人にこどもの応援団になってもらうこと。

この時間は決して永遠には続かない

頑張り過ぎのママへ 第1回 志村さん 写真⑤
-心の面で上手に付き合うコツはありますか?

今この時間は長くは続かないって思うことが大切ですね。

私もこどもを産んだばかりのときは、「これが一生続くのかしら」と思っていたけれど。

良いことにしても悪いことにしてみても、今抱えている苦しみは、そう長くは続かないものが多いんですよね。だからそれを知っておくと良いですね。

苦しいときって、なぜか何でも自分でしなきゃいけない…という気持ちになってしまうんです。

人に任せられなくなってきて、たとえばご飯も出来合いじゃなくて頑張って作らなきゃとか、勝手に手放せなくなってくる。

そうなるのは脳の仕組みらしいけれど、追い込まれる前に手放していくことを忘れないで欲しいです。

人に頼ってみようとか、ここは手放そうとか、産褥期は心をコントロールする練習期間だと思ってみても良いかもしれません。

こどもがいたらできないことを、まずは1時間

頑張り過ぎのママへ 第1回 イメージ②
-まさに「頑張り過ぎない」ことがポイントなんですね。

そうです。心がグッと苦しくなったときは、ちょっとだけ時間をもらうことも大事。

こどもを預けて美容院に行ったり、たまには1人でゆっくりお風呂に入ったり。こどもがいるとできないことを、まずは1時間だけでも誰かに頼ってやってみましょう。

そんなときにも、先ほどの応援団の存在が役に立ちます。そういう人たちを、自らどんどん招いて良いんです。遠慮しないで大丈夫。

だってこども自身が、幸せのホルモンをたくさん持っているから。ママが思う以上に、こどもは関わった人たちにも幸せを与えているんですよ。


次回、第2回目は「母乳育児のプレッシャー 母乳が出ない私ってダメなお母さんなの?」というテーマでお送りします。


志村季世恵

志村季世恵

しむら きよえ


バースセラピスト、子ども環境会議代表、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表。妊婦や子育てに悩む母、心にトラブルを抱える人をメインにカウンセリング。その活動を通し「こども環境会議」を設立。1999年からはダイアログ・イン・ザ・ダーク理事となり、多様性への理解と世の中に対話の必要性を伝えている。4児の母。著書に『ママ・マインド』(岩崎書店)、『親と子が育てられるとき』(内田也哉子氏との共著、岩波アクティブ新書)など。

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