2016年6月22日、鈴木おさむさんと大島美幸さん(森三中)との間に笑福くんが誕生。その後鈴木おさむさんは、父親になるための勉強をするため、「父勉」と称して、放送作家業を休業する育休に入りました。子供が生まれたときに父親ができることはどんなことなのか?父勉をするなかで気づいたパパ目線の育児について「ママにはなれないパパ」という1冊の本にまとめました。
今回、鈴木おさむさんが「父勉」を通して感じたこと、「ママにはなれないパパ」を通して、育児に向き合うママやパパに伝えたいことを2回にわけてお届けします。
「父勉前夜」は妻のことだけを考えていた
ー鈴木おさむさんの著書「ママにはなれないパパ」には、笑福くんが産まれたあとだけでなく、妊娠中のことも書かれていましたね。一般的に男性は妊娠中に「親になった」という実感を得にくいと言いますが、妊娠中はどのような気持ちで過ごしていましたか?
僕は、子供には申し訳ないけど、妊娠中は何より妻を優先して考えていました。
うちは2回流産をしていて、周りにも同じではなくても出産時に何かあったり、障害をもって生まれたという人がけっこういるんです。だからとにかく「生まれるまで何が起こるかわからないから油断しない」ってことだけを思っていましたね。
何かあったときにどうカバーしようかとか、どうやって妻に伝えようかとか、どういうふうに対応すればいいのかとか、あらゆるパターンを頭のなかで想像していました。
だから妊娠中に父親になるって気持ちにはなれなかったですね。それは子供が生まれてからです。
子供を初めて抱きしめて、ようやくホッとしました。
ーなるほど…。鈴木おさむさんが最初に笑福くんにかけた言葉は覚えていますか?
うーん、なんだったかな。
それよりも、妻が「やっと会えた」って言ったことを強く覚えていますね。子供が元気に生まれて妻と会えて、妻が喜べたっていうのが一番良かったですよ。
父勉で最初に学んだのは「父親にできることは少ない」ということ
ー笑福くんが産まれて、鈴木おさむさんは父勉をするために育休を1年間取ったわけですが、どんな気づきがありましたか?
まず、父勉を始めて気づいたのは、「育児に関してだけいえば、生まれて半年くらいは父親のやれることが意外と少ない」ってことですね。
産後すぐに妻のお母さんが来てくれたんですが、妻のお母さんは当然母親でもあるから、子供の世話もできるんですよ。妻は子供のお世話をお母さんから習って、段々できるようになる。妻は母乳がでたので母乳で育てていたんですが、そうすると、案外父親が育児に関してやれることってないんです。
生まれたばかりのときって、母親が子供にとって全てじゃないですか。やっぱり母親の胸の中にいるのが良いし、僕も子供がそこにいられるならそれが一番だと思って。
で、じゃあ僕は育休を取った分何かをしなくちゃいけない、何ができるだろうって考えて思いついたのが、料理でした。
妻のお母さんは産後1ヶ月ほどいてくれたんですが、その間一番助かったのが、お母さんが妻のために料理を作ってくれたことだったんです。
それを見て、「自分のお母さんが近くにいない人ってどうしているんだろう?」っと思って周りに聞いてみたら、ふりかけごはんとかおにぎりとか、簡単なものや片手で食べられるものというのが多くて。
食べるものって、生活の中の1つの大切な要素じゃないですか。だったら、それを自分がやってみようと。父勉で最初に決めたのは、「子供にできることより、まずは妻に対してできることをやろう」ということでした。
ー鈴木おさむさんにとって、料理をすることは大変とは感じなかったのでしょうか?
料理はもともときらいではなかったので、むしろ探求心がどんどん出てきましたね。スーパーに行って買い物することも勉強になりましたし。
ただ、朝7時に起きてご飯作って、お昼も夜も作るっていう1日3食ご飯を作る生活をしていると、こんなに早くご飯の時間ってくるのかということに驚きました。
本当にあっという間にご飯の時間がくるんですよね。毎日3食ご飯を作るって、本当に大変!1ヶ月ご飯を作ってくれていたお母さんに感謝しました。
「おいしいね」の大切さに気づいた
出典: 鈴木おさむオフィシャルブログ ( ameblo.jp )父勉2ヶ月目の頃に鈴木おさむさんが作った鮭の照り焼き。
ー鈴木おさむさんが父勉をするなかで、一番楽しかったことはなんですか?
すべてが楽しかったですよ。子供の日々の成長も含めてすべてが発見だらけだし、夕方キッチンでラジオを聞きながらクックパッドを見て、メニューを考えて、良いものができたなって感じることも楽しいし。煮物とか煮卵とか…料理のレパートリーが増えていくのって、嬉しいですよね。
そして、それを食べた妻が「うまい」と言ってくれるとさらに嬉しい。作った料理を食べて「おいしいね」と一言伝えてくれることがいかに大事かっていうことが、作り手の目線で気づけました。
父勉をやれたことで、仮にこれまで自分の生きてきた人生が表面なんだとしたら、これまで気づいてなかった裏面を一気に知ることができました。自分が人間として忘れていたものを補うことができたっていうのはすごく良かったですよ。
ー自身の裏面に気づくって、なかなか難しいですよね
普通は気づく余裕もないですよね。
僕の場合は40代で子供が生まれたっていうのが良かったんだと思います。仕事が軌道に乗っているという意味でも。
これが30代だったら、こんな余裕は持てなかったでしょうね。
夜11時からは自由時間と決めていた
ー鈴木おさむさんと奥様の大島美幸さんとで、父勉の間に決めていたことはありましたか?
夜11時以降は、僕の自由時間にしてもらっていました。書き物の仕事をしたり、飲みに行ったり。
で、11時から飲みに行って夜中の2時か3時に帰ってくると、そこから朝ご飯の仕込みをするんですよ。里芋の皮向いたり煮物作ったり。自由時間を自分のためにも家族のためにも有効活用していましたね。
ー自由時間は奥様の大島さんと決めたことですか?
そうです、夜11時以降は基本自由にさせて欲しいと話して了承してもらいました。近所のバーとかによく行ってましたね。もちろん、子供や妻が体調崩してるときとかは別ですが。
ー夫婦でそうやってあらかじめ決めてしまえば、イライラもないかもしれませんね
もちろん妻も心に思うことはあったのかもしれません。
だけど、ちゃんと話して決めた方が良い。「夜11時以降は自由にさせてくれ、その代わり朝は早く起きるから、ご飯作るから」と。そういう夫婦の話し合いって大事だと思います。
子供と2人だけの時間が絆をつくってくれた
出典: 鈴木おさむオフィシャルブログ ( ameblo.jp )息子、笑福くんと留守番中のワンカット。
ー先ほど、父親にできることは少ないというお話がありましたが、鈴木おさむさんが「父親になれた」って思えた瞬間はどんなときでしたか?
うーん、父親になれたというか、子供との絆ができたなというのは、僕1人で寝かしつけに成功したときですかね。
生後半年くらいたって妻がイッテQに復帰して、そのときの寝かしつけは妻のお母さんと2人でなんとか乗り越えられたんですけど、そのあと7~10ヶ月目くらいにもう一度ロケに行くことになったときが大変だったんです。
というのも、妻は寝かしつけのときに添い乳をしていて、その頃にはミルクを飲まなくなっていたんです。妻のお母さんには「仕事でロケに行くようになったら苦労するから、もっとミルクを飲ませた方が良い」って言われていたんですけどね。
妻がロケでいない間の寝かしつけは、子供が結構泣いて大変でした。しかも、妻の不在の後半、どうしても妻のお母さんが地元に帰らなくちゃいけなくって、僕と子供の2人きりになったんです。そのときは本当に寝てくれなかったですね。
ベッドに置いてもだめ、僕が抱っこしてソファに座ってもだめ。よくあるじゃないですか、立って抱っこしないと子供が嫌がることって。まさにそれで、その夜はずっと仁王立ちで何時間も過ごしていました。もう腰が痛くて痛くて。
だけど、日が昇った頃に、ようやくベッドに置けたんです。
子供も僕を試していたんですかね。妻も妻のお母さんもいないという状況を乗り越えたという絆は大きかったですね。
パパは育児を強制的にスケジュールに組み込むべき
ー鈴木おさむさんが父勉で学んだことを元に、パパに向けてアドバイスはありますか?
父親は、もっと計画的に育児に参加したら良いと思う。言い方が悪いかもしれないですけど、仕事と同じように、スケジュールに入れちゃうのがいいと思います。手帳に「仕事から帰宅したら2時間育児」って書くとか。自分のなかで強制的に組み込むんです。
男の人って仕事のスイッチを入れるじゃないですか。その分、家庭ではオフになりやすいんですよね。育児はオフの時間でやろうとするから上手く行かないんじゃないかなと。僕はすべて仕事で良いじゃんって思う。育児も仕事と割り切れれば、楽だと思います。
僕の場合は、子供とお風呂に入る時間とかもスケジュールに入れていて、会議はその後、とかもよくある。不思議なもので、そうやって管理した方が楽なんです。「夫はそれだけは必ずやる」ってわかってると、妻も楽になるみたいですね。
僕は育児を「手伝う」んじゃなくて「シェア」って呼んでるんですよね。自分のなかで任務というか、仕事であると捉えたら、もっと男の人の脳みそ的に責任感が出るんじゃないかと。
ーそれをママからパパに言うのは嫌なものですか?言われてやるのがカチンとくるというか
いや、逆に「仕事と思ってスケジュールに育児の時間を入れてくれ」って言われた方が楽なんじゃないかな。すっきりすると思いますけど。
父親は何をして良いかわからないから、「何をすべきかは自分で見つけろ」って言われても無理なんですよ。だから母親はそれをわかった上で、ちゃんとやるべきことを与えてあげてほしいですね。
パパに育児のチャンスを与えてほしい
出典: 鈴木おさむオフィシャルブログ ( ameblo.jp )笑福くんが誕生して1ヶ月のころの家族写真
ーなるほど。では鈴木おさむさんからママに向けてのアドバイスはありますか?
「パパに育児のチャンスを与えないのに、パパの自信をそぎ落とさないでほしい」っていうことですかね。
子供とどれだけの時間を過ごすかっていうのが、子供との関係の深さと比例しますよね、父親が育児をする時間って、本当に大事です。生まれて半年くらいまでは、父親ができないことには多少目を瞑りながら、できるだけ育児のチャンスを与えてほしいですね。
うちの場合は、妻が仕事に復帰してからイッテQやヒルナンデスの収録で週に1回はいなくて、僕と子供2人きりになることがあるんです。
だから半ば強制的に、ご飯をあげることやミルクを飲まなくて困るって経験もして、少しずつ外に行って遊ぶこともして…。その経験が、だんだん僕の自信になってくるんです。
母親がいない日がちょいちょいでてくると、子供もそれを認識するようになります。僕と2人でいても寂しいという感じが少しずつなくなって、それも自分の自信に繋がりました。
仕事もそうですけど、やりがいを感じると自分のポジションってわかってくるじゃないですか。
世の母親が「旦那が育児に参加しない」って言いますけど、意外と母親が父親にチャンスをあげてないっていうのが一番の原因なのかもしれないなあ、とも思います。
生後半年くらいの子供でお父さんを2人きりにするって、普通に考えて怖いじゃないですか。でもうちはそういう機会があって良かったなあと。
ー勇気を出して父親にチャンスを与えるっていうのも、母親には必要なことかもしれませんね
そうですね。母親からしたら、父親に任せるのは怖いでしょう。でも父親からすると、チャンスをもらってないのに怒られるってのも、納得いかないですよね。
次回は、父勉を終える少し前から現在にかけて、鈴木おさむさんが意識している「家族のカタチ」についてご紹介します。
鈴木おさむ著「ママにはなれないパパ」
今回ご紹介した、子供との絆が深まった瞬間のエピソードをはじめ、父親には理解できない母乳神話のこと、「なんでこんなこともできないの?」と妻にいわれて気づいたこと…そんな、ママが「あるある!」と頷いてしまうエピソードや、パパが思い当たるエピソードが満載の「ママにはなれないパパ」はこちら!