不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記「うんでも、うまずとも。」

【連載第21回 うんでも、うまずとも。】児童相談所と民間団体と


妊娠はするものの流産や死産を繰り返す「不育症」。原因が分かれば治療法が分かる場合もあるが、検査するもまったく異常なし。そして現在まで、いつか奇跡的に出産までたどり着けることを信じて、ただひたすら子づくりに励む日々が続く。そんななかで見つけた、養子縁組という、もうひとつの“母になる方法”。そんな43歳の編集者&バンドマンによる不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記。連載21回、養子縁組の仕組みの複雑さに難儀しつつ、養親になるための第一歩を踏み出す。

普通と特別、どっち?

吉田けい うんでも、うまずとも。

ところで、普通養子縁組と特別養子縁組。どちらも血のつながらない子どもを家族として迎え入れることを指しますが、その違いって分かりますか?

“普通”のほうは、おそらく多くの人が養子と聞いて思い浮かべる感じの養子縁組。戸籍には「養子/養女」と記載され、養子となる子どもの年齢には制限がない。

昔のドラマで、子どもが自分の戸籍に「養子」の文字を見つけてガーーーンってなるシーンを思い出す人も多いのでは。

1988年に特別養子縁組が施行されるまでは、養子縁組と言えば、そんな感じだったのかなと。

でもね。今は「血のつながった親だと思ってたのに……」と子どもがショックを受けないように、幼い頃から真実を伝えていくことが奨励されているので、ガーーーンってなることはないはずです。

また、特別養子縁組は、血のつながった子どもの場合と変わらず、例えば第一子の場合は戸籍に「長男/長女」と記載される。ただし、子どもの年齢は6歳未満(対象年齢拡大が検討されています)と制限がある。

私たちは、できるだけ子どもとのつながりが深くもてるように感じられた、特別養子縁組を希望した。

特別養子縁組を仲介しているのは、行政による児童相談所と民間団体の2パターン。

私たちは、児童相談所に“養子縁組里親希望”として面談を申し込むと同時に、2つの民間団体に“育ての親希望”として登録を申し込んだ。

ちなみに里親制度とは、養子として迎え入れる入れないに関わらず、産みの親と一緒に暮らせない子どもを家庭に受け入れて育てることを指す。

里親制度には、子どもにとって必要な期間だけ育てる養育里親と私たちが希望しているような養子縁組里親があり、児童相談所ではどちらも“里親”と呼ばれるので、ちょっとだけややこしい。

機関によってイロイロ……

さて、「養親になりたい!」と申し込んだ、その後。段取りもスピードも、児童相談所でも2つの民間団体でもそれぞれイロイロだった。

まず、もっとも返事が早かったのが、民間団体B。

夫婦の基本プロフィールのほか、健康状態や年収について、また、子どもを迎え入れたいと思ったきっかけや、子どもに障がいがあると分かった場合はどうするかなどの質問に対して、手書きで回答した書類を提出して仮登録を申請。

3週間ほどで仮登録合格の通知がきた。

ただし、養親として登録するには東京都が実施する里親認定前研修を受ける必要があり、とりあえずは仮登録合格の段階でストップ。

次に連絡があったのは、民間団体F。

Bと同じような内容を、ネットの申し込みフォームに記入して送信すると、「電話でお話をしたい」とメールで返信があった。

しかし、団体の相談員と私の予定がなかなか合わず、スケジュール調整に1ヶ月ほどかかってしまった。

そして、担当者と連絡をとるまで、一番苦労したのが児童相談所。

こちらから連絡する手段は電話のみなのだったのだが、いつ電話しても、担当者は不在。めちゃくちゃ忙しいらしい様子が、ものすごく伝わってくる。

それでもなんとか面談の日程を決め、申請して2ヶ月後に児童相談所を訪れることができた。

しかしそこで、児童相談所からの紹介では新生児を養子として迎えるのは不可能だと知った。

子どもと親との愛着が形成されるのは、生まれてから5〜6ヶ月の期間が重要……。

そうか、児童相談所からだと……、そうか……ムムム。

続きは第22回にて。

写真のこと:鉄という素材が好きです。もっと言えば、錆が好きです。さらに言えば、塗ったペンキが剥がれて見える錆が好きです。ぽってりと柔らかなペンキの隙間から覗く、ザラッとした表情にハッとします。ギャップ萌え……ですかね。

【連載第22回 うんでも、うまずとも。】育ての親のための入門研修

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【連載第20回 うんでも、うまずとも。】養子縁組という選択肢

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吉田けい

吉田けい

よしだ けい


1976年生まれ。編集者・バンドマン。2010年、6歳下の夫と婚前同棲をスタートして早々に、初めての妊娠&流産を経験。翌年に入籍するも、やっとの妊娠がすべて流産という結果に終わる。その後、自然妊娠に限界を感じ、40歳になる2016年に体外受精を開始。2018年11月、構成・編集を手がけた書籍『LGBTと家族のコトバ』(双葉社)を出版。