授乳をしているとき、「痛い!」と感じたことはありませんか?「どうやって対処したらいいの?」と疑問に感じる人も多いはず。
そこで今回は、授乳中に痛みを感じたことがあるママにアンケート(※)を実施!ママたちの体験談とともに、助産師・看護師として活躍する河井先生に聞いた対処法をご紹介します。
授乳が痛いなんて聞いてない!
授乳中に痛みを感じたことがあるママにアンケートをとったところ、なんと460人中98%のママが痛みを感じていました!ほとんどのママが授乳時の痛みを経験しているようです。
アンケートでは、こんな体験談が寄せられました。
みぃママさん
生後1ヶ月半くらいまでは、おっぱいを咥えさせる時が1番痛くて、声が出るほどでした。
このさん
赤ちゃんがなかなかおっぱいを飲んでくれず、パンパンに張って辛かったです。乳首に布が当たるのも痛くて、吸われた後も痛みが続くほどでした。
授乳中の痛みを少しでも和らげるには、どのようにしたらよいのでしょうか?
ここからは、授乳で痛みを感じたときの先輩ママのエピソードを交えながら、河井先生に対処方法を聞いてみました。
授乳が痛い原因 ①
赤ちゃんの咥え方による切れや腫れ
kumamaさん
生後間もないとき、赤ちゃんの口が小さく浅吸いだったせいか、乳首が切れて出血してしまいました。できるだけ深く咥えてもらうように工夫したところ、月齢が上がってきた頃には、いつの間にか改善されていました。
アンケートの回答で1番多かったのが、赤ちゃんの咥え方による切れや腫れ。ママも赤ちゃんも授乳には不慣れなため、適切な咥え方になっておらず乳首を傷つけてしまうことも。
また、遊びのみだったり歯で噛まれたりすることで切れてしまうこともあります。そのまま放っておくと、乳房うっ積、乳腺炎などのトラブルを起こす可能性もあるので、適切なケアや処置が必要です。(※1)
おっぱいを上手に咥えさせる方法
河井先生
「できるだけ深く咥えてもらうように工夫した」というのは正しいです。浅くなると乳頭が切れて痛むことがあります。
深く吸わせるときには、まず赤ちゃんとママのお腹が向き合っていることを確認しましょう。この基本姿勢ができていないと、乳頭と赤ちゃんの口が密着しづらいのです。
そして、赤ちゃんの口を大きく開かせ、上の図のようにアヒルのような口の形で吸わせるのがポイントです。そのとき、下顎が乳房につくようにするといいですよ。(※1)
授乳が痛い原因 ②
吸う力による切れや腫れ
tornny8さん
赤ちゃんの吸う力が強くて、乳首に亀裂ができたり内出血してしまったりしました。
産院で出してもらった軟膏を毎授乳後に塗り、縦抱きや脇抱きにするなど乳首を咥える向きを変えるようにしました。どうしても痛いときは哺乳瓶に搾乳してあげていました。
赤ちゃんがおっぱいを吸う力は意外と強いもの。吸われすぎで乳首が切れたり腫れたりすることもよくあるようです。
特に授乳に慣れていない頃は、乳首に柔軟性がなく、赤ちゃんが乳首を咥えて伸ばしたり引っ張ったりするのでさえ痛いと感じることも。①と同様、切れや腫れを放置しておくとトラブルを引き起こすこともあります。
吸う力による切れや腫れの対処法
河井先生
「乳首を咥える向きを変える」という対処方法は正しいです。授乳中の抱き方を変えるようにすると、1ヶ所に力がかかるのを防ぎ、負担が軽くなりますよ。授乳後に乳首を保湿するのもおすすめです。
ほかにも、可能な範囲で授乳時間を短くしてみてもいいでしょう。また、賛否両論はありますが、切れや腫れがひどい状態であればニップルシールド(乳頭保護器)を使用する方法もあります。
▼ ニップルシールド
授乳が痛い原因 ③
乳首を離すときに発生する切れや腫れ
しんちゃんママさん
口から乳首を離すときに引っ張るのが楽しいらしく、毎回引っ張られていました。そのうち乳首が腫れて、咥えられるだけで痛くなりました。
乳首が柔らかくなれば吸いやすそうだし離すのも楽になるだろうと乳首をマッサージしていますが、良くなっている気がしません。
おっぱいが恋しく、乳首からなかなか口を離さない赤ちゃんもいますよね。だからといって無理やり引き離すと傷ができ、やはり乳腺炎などのトラブルを引き起こしやすくなります。
赤ちゃんをうまく引き離すにはどのようにしたらよいのでしょうか。
赤ちゃんの口から乳首を上手に離す方法
河井先生
乳頭が硬いようでしたら、マッサージは良いことだと思います。
乳頭を引っ張るのはママの反応を楽しんでいることがあるので、あまり反応しないようにするのも1つの方法です。赤ちゃんがまだ言葉を理解していなくても、繰り返し痛いことを伝えましょう。
授乳が終わりそうな雰囲気になったら、赤ちゃんの口角に指を入れて、口と乳首の間に隙間を作り、ママが乳首を外してあげるのも良いと思います。
授乳が痛い原因 ④
母乳の出が良すぎることによる張り
ちゃみさん
朝起きると母乳が溜まり、乳房がカチカチに固くなっていました。赤ちゃんに吸わせるときも、固すぎて浅くしか咥えられず痛かったです。
痛みに耐えて授乳しつつ、母乳が出すぎないようにと水分補給の量を減らしたところ、母乳量が減って張りが軽減されました。
乳房内に母乳が溜まってしまうと、乳腺炎になる可能性があります。母乳がたくさん出ても赤ちゃんが飲み干せず、残った母乳の影響でおっぱいが張ったり痛みを生じたりすることもあります。
母乳が出すぎるときの張りの対処法
河井先生
どれくらいの水分を摂っているかにもよりますが、極端にママの水分補給量を減らさないほうが良いと考えます。
乳房が硬くなっている場合は、少し母乳を搾ってから授乳すると良いでしょう。または、カチカチになる前に授乳することも検討できるといいですね。
授乳が痛い原因 ⑤
母乳が出にくいことによる張り
うりもさん
産まれてすぐは母乳が出ず、赤ちゃんも吸い方がまだ下手だったので、おっぱいは張るし乳首の先が切れるしで大変でした。
特に飲み始めが激痛でした。授乳前におむつを濡らしてチンしたものを胸に当て、あたためてから授乳していました。それから、蒸らしたままにせず、乳首を乾燥させるようにしました。母乳が出るようになって、切れも治りました。
母乳が出にくい場合も、③と同様、乳房内に母乳が溜まってしまい、痛みを引き起こします。こちらもそのままにしておくと乳腺炎になる可能性があるので、注意が必要です。
母乳が出にくいときの張りの対処法
河井先生
乳腺が開いている状態であれば、乳房を温めることで血液循環が良くなり、母乳が出やすくなるため良いと思います。
乳首を乾燥させるのは、より切れやすくなる可能性もあるのでおすすめできません。乳頭専用のクリームを使用して保湿し、皮膚を守るといいですね。
▼ 乳頭専用のクリーム
授乳が痛い原因 ⑥
母乳やだ液によるただれ
りとさん
張りが強く母乳がよく漏れていたせいか、乳房がかぶれてしまい出血しました。その状態で吸われてるので悪化してしまい、痛かったです。
赤ちゃんが母乳を飲まないときは薬を塗って、授乳前に洗ってから飲ませるようにしたところ、多少痛みが引きました。
ママの肌質にもよりますが、授乳後におっぱいに付着した母乳や赤ちゃんのだ液をそのままにしておくと、乾燥して痒くなったりただれてしまったりすることもあります。
母乳やだ液によるただれの対処法
河井先生
皮膚のかぶれに薬を使用して、ひどくなる前に対処されたのは良かったと思います。
張りが強く漏れるほど母乳が出ている場合、授乳の後に乳房を冷やすのも良いでしょう。母乳は乳頭を吸う刺激で作られますので、冷やすことでその刺激を少し和らげる効果も期待できます。
また、母乳がよく漏れているときはできるだけ早く拭き取り、清潔に保つようにしましょう。母乳が汗やムレと重なって皮膚が荒れやすくなります。母乳パッドを使用している場合は授乳ごとに取り換えたり、母乳パッドが合わない場合は種類を変えたりすると良いですね。
授乳が痛い原因 ⑦
爪を立てられる事による痛み
ももママさん
授乳中、赤ちゃんが吸っていない方の乳首をつねっていたり、おっぱいに爪を立てられたりしました。手をどけさせましたが最初は嫌がってどかしません。繰り返していくうちにやめてくれました。
赤ちゃんが一生懸命なあまり、「爪を立ててしまって痛い」といった声もみられました。乳首などが傷ついていなければ乳腺炎などには直接結びつきませんが、毎日爪を立てられると皮膚に傷が残ってしまうかもしれません。
赤ちゃんが授乳中に爪を立てるときの対処法
河井先生
繰り返しやめるようにしたのは良いと思います。
ママに痛いことをして、その反応を見て楽しんでいることがあります。あまり反応せずに手を優しくどけながら、やめるように促すといいですね。
授乳中に毎回している場合は、一時的に授乳を中断して、赤ちゃんの気分を変えたり「痛い」と伝えたりすることも試してみてください。
授乳中に痛みを感じるときは
「どこが痛むか」で対処法を変えよう
授乳が痛い原因はさまざまですが、① 乳首が痛い ② 乳房全体が張って痛い の2パターンに大きく分けられます。河井先生は、授乳中の痛みについて次のようなアドバイスしてくれました。
河井先生
授乳中に痛みを感じるときの対処方法はいくつかあります。どこが痛いかで対処法を分けるようにしましょう。
① 乳頭が痛い場合
・搾乳して乳頭を休ませる
・授乳時間を短くする
・授乳の回数を少なくする
・痛い場所を冷やす
・保護器を使用する
・乳頭保湿剤を使用する
・授乳するときに姿勢を変える
・赤ちゃんの姿勢を確認し、乳頭を奥まで含ませる
② 乳房全体が張って痛い場合
・母乳が残っている場合は搾乳する
・マッサージをしてほぐす
・乳房を冷やす
・授乳姿勢を変えてみる
・熱がある場合は受診する(乳腺炎が疑われる場合)
授乳の痛みが少しでも和らぐよう、ぜひ対処法を検討してみてくださいね。
監修:河井 恵美
助産師、看護師/エミリオット助産院
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、救急、外科外来等も経験し、看護師教育や思春期教育にも関わっていました。助産師の仕事が大好きで、25年以上この仕事をしています。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。2008年から夫の仕事関係により、シンガポールに住んでいます。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務し、日本人の妊産婦さん方のサポートをしています。
Web上でエミリオット助産院を開設し、助産師オンラインサービスで様々な相談も受けています。
※ アンケート概要
実施期間:2019年6月4日~6月5日
調査対象:0~1歳の赤ちゃんがいるママ
有効回答数:460件
収集方法:Webアンケート
ポッケ専門家チーム
作者