子供がご飯を充分に食べてくれないことで心配したり、悩んでしまうママやパパは多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するエッセイの作者、3児のママであるヨリさんも、子供の「たべない」「いや」の毎日に悩んでいたひとり。
そんな時に相談した保育園の先生にもらった言葉が、ヨリさんの気持ちと、その後の食事の時間を変化させてくれたそうです。
今日はなにを食べようか
「おかぁさぁぁん、お腹すいたぁぁぁ!」
子どもが布団の上にドスンと乗っかり、私の朝がはじまる。
(うーん。今日はどっちかな?)
重た過ぎるまぶたをあけて確認すると、そこにはどアップで長女の顔。
「何食べたい?」と聞くと、「グラノーラ!」と即答。最近のお気に入り朝食らしい。
「グラノーラは牛乳かける?それともヨーグルト?」
「…牛乳、あ!やっぱりヨーグルトにする!」
「はーい。今日の朝ごはんは『ヨーグルグラノーラ』ね」
よいしょと起きあがり台所にむかうと、「ヨーグルグラだってぇ…グルグラぁ…」とクスクスと笑いながらついてきた。
がんばらなくてもいいのかも
4歳の長女は、「食べない子」だった。
最近になって「ちょっとだけ食べる子」になってきたけれど、3歳頃までは食事のたびに「いやだ」「たべない」のオンパレード。
わが子にバランスよく食べさせようと、朝早くから台所に立っていた。
こまかく刻んだ野菜ミックスとウインナーでチャーハン、オムライス、カレー、コンソメスープ。
定番のお子様メニューの数々をつくっては「今日はどうだ」とばかりに朝食にだす。
しかし。
「いや!」の一言にいつも撃沈。
「少しでも食べないと保育園でお腹空いちゃう」
「いや!!」
というラリーを出発時間ぎりぎりまで続け、なんとかバナナとヨーグルトだけを食べさせて家をでる日々。
たまらず保育園の担任の先生に相談すると、
「え?意外ですね。園ではお昼ごはんをしっかり食べていますよ」
まさか!?信じられない…という顔の私に対して、先生はこう続けた。
「園では食事の時間をとてもがんばっていますから、安心してください。朝ごはんは、食べられるものを食べてきてくださいね。バナナでも、ヨーグルトでも」
…そっかあ。がんばらなくてもいいのかな。
先生のその言葉で、食事づくりに消耗していた当時の私の心が、ストンと軽くなった気がした。
「朝は、みんな好きなものを食べようか」
そして、娘に対して「何食べたい?」と聞くことが、私の毎朝の日課になっていった。
みんながご機嫌に過ごせる朝
すこし前までは仕事をしていたので、4歳と2歳をつれて7時すぎに家をでていた(夫は子どもたちが起きる前に出社することが多い)。
いまは3人目の育休中で、すこし余裕はできた。
でも、生後間もない赤ちゃんを含む3人の子どもをひとりで見る朝の時間は「慌ただしい」の一言に尽きる。
正直いうと、チャーハン、オムライス、カレー…リクエストされても準備する時間ないよね(笑)
「何食べる?」に対する「グラノーラ」という答えに、内心ガッツポーズする私。
長女は「グルグラ、グルグラー」と拍子をつけて歌いはじめた。
しかも今朝は0歳児がまだ起きていないから、気持ちに余裕があるぞ。
「グルグラにバナナいれる?」と娘に聞くと、「あ、いるいるー」と、いいお返事。
バナナを小さく切っているうちに、2歳の長男も起きてきた。
「今日の朝ごはんはねぇ、グルグラなんだって!」さっそく弟に教える姉。
「うわぁぁぁい」と、なんでも喜ぶ弟。
スプーンとお皿、ヨーグルト、グラノーラ、バナナをみんなで手分けして運び、さあ、朝ごはん朝ごはん。
席につくと同時に、「ふ、ふ、ふぎゃぁぁぁ~」と0歳児が泣きはじめた。あららら。
「グラノーラとヨーグルトとバナナをお皿に盛り付けてもらってもいい?」
ためしに聞いてみると、「やる!」とはりきる長女。
「弟くんの分もお願いしまーす」
「わかりましたー」
4歳ともなると、こんなにお手伝いが出来るようになるのかあ…と、なんだか胸が熱くなる。
・・・・・
さてさて、ミルクをつくり、泣いている0歳児のもとへ急ぐ。
横目で2人の様子を見ると、長女が豪快に袋に手をつっこみ、グラノーラをわしづかみ。お皿へ、ぐしゃっといれる。
あーあー、テーブルにも床にもボロボロこぼれているじゃないか…。
やれやれと思うけれども、好きなようにさせておく。
次はヨーグルトの容器にスプーンをいれ、丁寧にお皿まで運ぶ…
ってヨーグルトとお皿の距離が遠いよ!途中でこぼれちゃう、かと思いきや、セーフ。
最後にバナナをちょんちょんとお皿にトッピング。
グラノーラだらけのテーブルで、口のまわりにべたべたとヨーグルトをつけて食べはじめる2人。
うん。でも、まぁ上出来な朝だよね。
子どもたちは朝から好きなご飯をたべてご機嫌だし、私も、(今のところ)笑顔。
・・・・・
「朝ごはんは、食べられるものを食べてきてくださいね。バナナでも、ヨーグルトでも。」
あのときの保育園の先生の言葉を、これまで何度もおまじないのように唱えて朝を過ごした。
3児のお母さんになった私は、ずいぶん強くなったのだ。
記事提供:ヨリ
ヨリ
作者
ポッケ編集部PICKUP育児エッセイ
作者