精神科医、水島広子さんによる、女子の人間関係をうまく渡り歩く方法を紹介する連載の第3回です。
前回は、専業主婦の友達から働くことを非難されるというお悩みについて解説しました。
↓前回はこちら
後編の今回は、いよいよライフスタイルを非難してくる人との関わり方についてご紹介します。
【第3回】比べたがる「女」との関わり方
● ライフスタイルに正解はない
● ほめて相手を尊重する
● 話題を切り替える
ライフスタイルに正解はない
相手の話を「正論」として受けとめてしまうと、自分のライフスタイルを否定することになってしまいますし、自分が間違ったことをしているような気にもなります。
「子どもがかわいそう」などという罪悪感にとらわれてしまうと、結果として子どもとの時間の質さえ下がってしまう、ということになりかねません。
しかし、どのように子どもを育てるかというのは、それぞれの「領域」の中の話。
どんなライフスタイルが合うかは人それぞれ。自分の性格にも、パートナーのタイプにもよります。実家の援助の質と量にもよるでしょう。
ですから、どのライフスタイルが「正しい」ということはないのです。
人によっては、ある程度社会に居場所がないと、蓄積したストレスが子どもへの虐待として向かうことすらあります。
日中は保育園で温かい保育を受け、朝晩は親と密な関わりをする子どもと、一日中親と一緒にいるけれども虐待(育児放棄を含む)を受ける子どもとを比較して、
親が働くことが「かわいそう」「そばにいた方がよいのに」と評価を下すこともできないでしょう。
安心を提供する
どのライフスタイルが合っているかは、本当にケースバイケースなのです。それが誰の領域の話なのかの区別がつかなくなってしまうのも「女」の特徴。
ですから、この現象に巻き込まれないためには、相手が言っている「かわいそう」「そばにいた方がよいのに」ということが、
「相手がこちらの領域について勝手に下している評価」に過ぎない、ということをよく認識しておくことです。
つまり、自分とは直接関係のない、単なる「『女』のパターン」の話なのです。
これは「お母さん病」の一種とも言えるでしょう。「あなたのことを一番よくわかっているのは私」という姿勢だからです。
相手がこちらの事情も理解しようとせずに勝手に評価を下しているときは、その中身について議論する必要もなく、
単に「それはあなたが下した評価なのよね」ということを明確にすれば、領域侵害を防げます。
つまり、「子どもがかわいそう」と言われたら、「そうか、あなたはそう考えるのね。いろいろな考え方があるよね」と言えばよいだけでしょう。
実際に子どもがかわいそうかどうかを話し合う必要はありません。
「決めつけ」が強い人ほど不安が強い
また、なぜ相手が領域を乗り越えてこのような評価を下してくるのかと言えば、自分自身いろいろな焦りや逡巡がある中で、
「決めつけ」によってその不安のバランスをとろうとしているからと考えることができます。
「私が選んだ生き方、これでいいよね」「あなたの方が間違っているんだよね」という確認作業なのです。決めつけが強い人ほど、不安が強いと言ってもよいでしょう。
そんな人に対しては、安心を提供するために、「そう思って頑張っているんだね。本当にいいお母さんだよね」などと言ってあげればよいと思います。
ほめて相手を尊重する
仕事と育児を両立させているBさんに対して相手が羨望や嫉妬を持っている場合、必要以上に嫌な思いをすることもありますので、自分を守ることも考えておきましょう。
それは、基本的に相手の生き方を尊重し、対立しないことです。「自分の領域」を守ったのと同じように、「相手の領域」を尊重してあげましょう。
「私だったら一日中子どもと一緒にいるなんて、できないだろうな。本当にいいお母さんだよね」と心からほめてあげて、相手に反感を持たれないようにしましょう。
反感を買ってしまうと、妙なトラブルの火種を作ってしまうことになりかねません。
なお、「うちは両方働かないと金銭的に厳しいから」という言い方では、相手は「妬まれている」「恵まれている自分を責められている」と感じがちですが、
「本当にいいお母さんだよね」と心からほめてあげるということは、相手という存在を尊重してあげていること。「女」の癒やしにつながる姿勢です。
話題を切り替える
どんなライフスタイルを選ぼうと(あるいは余儀なくされようと)、子どもを持ち育てている、という点では同じ立場。
子どもたちのために地球環境を心配し、できるだけよい未来を作ってあげたいと思う気持ちも共有できるはずです。
話題を、「専業主婦とワーキングマザーのどちらがよいか」という小さなところに絞らず、もっと大きなこと、
例えば、子どもたちから学べること、子どもたちの今後のために心配なことなど、より一般的な話にしていけば、共感しやすくなるでしょう。
女性の人間関係は、「各論」よりも「総論」。
ライフスタイルが多様な女性が「各論」を論じている限り、どうしても「違い」にばかり目が向いてしまい、
「味方か敵か」ということになってしまいますが、「総論」であれば共感することも団結することもできるはずです。
つまり、本当のつながりができるのです。そうやって、小さな世界から、大きな世界に一歩踏み出しましょう。
「選ばれる性」、つまり受動的な存在でいる限り「女」にとどまってしまうのですが、
「子どもたちのために何ができるか」という能動的な姿勢に転ずれば、「女」が癒やされ、パワフルな存在になっていくことができます。
まさに「母は強し」なのです。
<つづく>
※この連載は『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)からの転載です。
次回予告
次回のお悩みは、「ママ友の悪口大会に嫌な気持ちになる」というDさんのケース。
どのように関わっていけばよいのかご紹介します。
2021年8月28日(土)公開予定。
お楽しみに!
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水島広子
著者