【連載第19回 うんでも、うまずとも。】減っていく、妊娠への希望


妊娠はするものの流産や死産を繰り返す「不育症」。原因が分かれば治療法が分かる場合もあるが、検査するもまったく異常なし。そして現在まで、いつか奇跡的に出産までたどり着けることを信じて、ただひたすら子づくりに励む日々が続く。そんななかで見つけた、養子縁組という、もうひとつの“母になる方法”。そんな42歳の編集者&バンドマンによる不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記。連載19回、体外受精を繰り返すも…

採卵すれども受精すれども

吉田けい うんでも、うまずとも。

2016年夏の4回めの流産から、ようやく立ち直り、2017年は前のめりになって体外受精にのぞんだ。

3回めの採卵に向けての1ヶ月は、漢方鍋や牡蠣や燕の巣やプラセンタや……女性の身体に良さそうな食事を心がけた。そして、採れた卵は1個。しかし、受精は成功したものの、凍結前に成長が止まってしまった。

4回めの採卵は、なんと0個。タイミングが合わず、すでに排卵してしまったあとだった。そ、そんなことがあるのか……せっかちな卵め。

ちなみに、継続して体外受精を行うには、スケジュール管理が、もう本当に重要。毎月排卵日付近に採卵を行うので、余裕をもって排卵予定日前後1週間は仕事やライブの予定を入れることができない。

採卵できた卵子が受精に成功し、無事に成長して凍結することができたら、翌月は排卵日の5日後くらいに移植をするので、その前後1週間もまた予定を入れられない。

つまり、毎月最低1週間はいつ採卵日や移植日が決まってもいいようにバッチリ空けて、空白の1週間用意しておかなければならないのだ。それがなかなか大変で……。

いや、会社勤めの方に比べたら、自分でスケジュールを調整できる、私のようなフリーランスは恵まれているほうだと思う。

それでも、特にライブのオファーは3〜5ヶ月先でいただくことが多く、そんな先まで、オファーが空白の1週間にぶつからないかどうか確認する必要がある。もしもぶつかれば、どんなに出演したいライブでもお断りしなければならない。

もちろん、仕事やライブを優先することもできたのだけど、私たち夫婦にとっての最優先事項は子づくりだった。

しかも、採卵日や移植日は身体のリズムによって決まるものなので、せっかく前もって1週間空けておいても、生理や排卵が早まったり遅れたりして、ズレてしまうこともある。泣く泣くお断りした仕事やライブが「実は受けられたじゃん!」てことも当然ある。

思うように仕事の予定を組めない、ライブができない、飲みも旅行にも行けない。そんな状況が続き、ちょっとずつストレスが溜まっていった。

納得いかない“流産”

そんな2017年の4月。1つ年上の友人が、私が通う西新宿Kクリニックで体外受精の末に男の子を出産した。

4回めの流産から復帰後、2度の採卵が立て続けに失敗に終わり、我慢だらけのスケジュール調整にも鬱々していた私に、希望の光が差した。

体外受精で、ちゃんと結果を出した人が身近にいる。しかも私より年上だ。私も、きっと大丈夫!

そして5月に5回めの採卵。卵巣から採り出された2個の卵子は、無事に受精し、胚盤胞まで成長して凍結することができた。や、やった!!!

で、6月、胚盤胞を移植。総合評価は妊娠率20〜34%という微妙な数値のDだった。

それでも私は期待していた。友人から朗報を受け取った直後だ。もしかしたら奇跡が起こるかもしれない。

1週間後の判定日。妊娠反応があった。ほんのわずかだけ。先生曰く「ちょっとだけ着床したのかも」。

その1週間後。妊娠反応はゼロになってしまった。

翌月、折れそうな心を奮い立たせ、もう1個の胚盤胞を移植。こちらの総合評価は前回よりも低く、最低評価のEだった。

1週間後の判定日……また、ほんのわずかだけ妊娠反応があった。もしかしたら? いや前回もダメだったから今回もダメだろう? 心がザワザワ騒いだ。

結果は、着床が安定せず、流産という診断だった。

なんと、思いがけず、また流産。妊娠した自覚もなかったので、流産と言われてもピンとこない。しかも、先生から「流産後なので採卵は1ヶ月お休みしてください」と言い渡され、ますます納得がいかない。

しかし、私の流産カウンターは律儀に5を指していた。

奇跡が起きて、妊娠できるかも。そんな希望は消えそうになっていた。

それでも私は、心が折れないように腐らないように(気を逸らすために?)、3ヶ月前から始めた筋トレとランニングに、さらに精を出した。ちょっとでも身体機能を高めなければ、と必死だった。

と同時に、夜遊びも精一杯がんばった。

とにかくリアルを充実させようと一生懸命だった。

そんなある日、「読んでみて」と夫が私に1冊の本を差し出した。それは養子縁組に関する書籍だった。

“不妊治療強制終了”と書かれた札が、夫の手によって私の目の前に下げられたかのようだった。もう、諦めろということか……。

続きは第20回にて。

写真のこと:気分転換のため、しょっちゅう訪れる近所の公園。季節の花が咲き誇る花壇の前は砂場やブランコがあり、親に見守られながら、ちっちゃな子たちが戯れている。たいがい私は、そちらに背を向け、花の写真を撮っている。……暗いな。

【連載第20回 うんでも、うまずとも。】養子縁組という選択肢

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【連載第18回 うんでも、うまずとも。】流産後の感情コントロール

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吉田けい

吉田けい

よしだ・けい

1976年生まれ。編集者・バンドマン。2010年、6歳下の夫と婚前同棲をスタートして早々に、初めての妊娠&流産を経験。翌年に入籍するも、やっとの妊娠がすべて流産という結果に終わる。その後、自然妊娠に限界を感じ、40歳になる2016年に体外受精を開始。2018年11月、構成・編集を手がけた書籍『LGBTと家族のコトバ』(双葉社)を出版。