頑張り過ぎて辛い思いをしている育児中のママが、「赤ちゃんと一緒に自分の心も抱きしめてもらえるように」と願いを込めて始めた連載「頑張り過ぎのママへ」。第3回目のテーマは、赤ちゃんの夜泣きについてです。
前回に引き続き、子育てに悩む女性から、末期の病気を患う方まで、数多くの不安な心に寄り添ってきたバースセラピストの志村季世恵さんに、お話を伺いました。
夜泣きが続いて苦しいのは、当たり前の感情
-毎晩夜泣きが続くと、愛しいはずのわが子を疎ましく思い、自己嫌悪に陥るママも多いようです。
毎日のように赤ちゃんの夜泣きが続くと、「どうして寝てくれないの?」と悲しくなったり、イライラが募ってしまうことってありますよね。
私のところにも、涙をぽろぽろこぼして相談に来るママはいっぱいいます。
一時的なものと分かっていながら、睡眠不足で体調を崩したり、気力も体力も奪われて辛い日々が続くと、時には赤ちゃんを疎ましくさえ思ってしまう。
でも、イライラしてしまう自分を、まずは責めないであげてほしいのです。
寝られる時間にまとめて睡眠を確保
-夜泣きによる寝不足で、イライラが募り苦しいとき、何か良い解決法はありますか?
赤ちゃんがお昼寝をするときに、ママも一緒に寝てしまうのはひとつの良い方法ですね。
掃除やお洗濯をしなくては…と家事が気になるかもしれませんが、まずはママが元気でいることが一番です。割り切って眠ることも大切ですよ。
それから、パパに相談してみることも重要です。
いっぱいいっぱいの気持ちになると、言葉で伝えることもできず、言わなくても理解してほしくなりがちですが、夜泣きの大変さを理解してもらい、2人で解決策を考えあえればベストですね。
パパが早く帰ってきてくれるときに、まとめて寝かせてもらうなど、今日はママが頑張る日を作ったから、明日はパパに頑張ってもらう日にしよう…など、夫婦間で気持ちを切り替えられるように工夫するのも良いと思います。
僅か20分でもリラックスできる時間を作ろう
とはいえ、パパの仕事が忙しいことだってあるし、どうしてもご実家や身近な人の協力を得るのが難しいこともあるかと思います。そんなときには、ぜひこれだけでも試してみてください。
それは、1日の中で20分だけで良いので、深いリラックスタイムを作ってあげること。
お気に入りのアロマオイルを炊いたり、好きな音楽を聴いてみたり、とにかく自分がリラックスできる環境に浸ってみてください。
赤ちゃんのことがつい気になって、最初は難しいかもしれません。でも、20分だけでも、気持ち良い時間が確保できると、脳がとてもリラックスできますよ。わずか20分、されど20分。リラックスタイムがあるとないとでは、全然違います。
心身共にどうしても辛いときは、脳の興奮を抑えて体を整える時間を、短時間でも作るように心がけてみてくださいね。
赤ちゃんが夜泣きをする原因を知ろう
-夜泣きを落ち着かせるために、知っておいた方が良いこと、対策はありますか?
赤ちゃんが夜泣きをしてしまう原因には、様々なパターンがあるんです。例えばよく聞くのが…
- 紙おむつがムレて気持ち悪いとき
- ミルク、母乳を飲み過ぎておなかが張って苦しいとき
- 日中赤ちゃんが興奮する場面が多かったとき
原因がわかるだけで、心はだいぶラクになりますよね。
あとは、お風呂の時間を変えただけで夜泣きをしてしまうこともありますよ。夕方くらいに入ったら良かったという子もいれば、夜寝る前に入る方が良いという子もいるんです。
それぞれベストなタイミングが違うので、どの時間が赤ちゃんに合っているのか、ルーティンをきっちり決めている人は、変えてみるのも良い方法かもしれません。
私自身も、子ども4人ともお風呂のベストなタイミングがみんな違いました。色々な時間で、試してみると良いですよ。
夜泣きで困ったときの授乳クッション活用法
赤ちゃんは、何かに包まれている状態だと、ママに抱っこされているような安心感を感じるからか、眠ってくれることがよくあります。
でも、毎回夜泣きの度に抱っこして寝かしつけるのは、結構大変ですよね。そんなときは、授乳クッションを活用すると便利です。
まず、U字型の授乳クッションの中央に赤ちゃんを仰向けに寝かせて、左右の先端部分を赤ちゃんの両脇から包んであげるようにします。すると、抱っこされている感覚になるのか、すぐに寝てしまうことがあるんです。
今日は抱っこして寝かしつける体力がないな…というときには、ぜひ試してみてくださいね。
添い寝は赤ちゃんの心の安定剤
あとは、添い寝もおすすめです。ただ、窒息の予防は大切ですので、寝具やベッドの位置確認は必ずしてください。
ウォーターベッドや柔らかいマットレスは添い寝には向いていません。ベッドと壁に隙間があるのもNG。赤ちゃんが落ちたり、挟まったりしないように気をつけてあげてくださいね。
リスク回避できれば、赤ちゃんと一緒に寝るのって、ママも気持ちが良いですもんね。赤ちゃんもママの温もりを感じてよく寝てくれるし、ママも赤ちゃんを感じながら眠ることができますよ。
その子によって何が落ち着くか、好みや程度は様々です。でも、ママの温もりというのは、どの赤ちゃんにとっても安心感を与える、なくてはならいものなんです。
赤ちゃんもママもお互いを守り合っている
最後に1つだけ知っておいて欲しいのは、この時期、ママはホルモンの影響で、ある程度眠りが浅くても耐えられる体の状態になっているということです。
赤ちゃんは体温コントロールが上手にできません。深い眠りは体温が下がります。それが続くのはリスクがあるので、赤ちゃん特有の眠りのサイクルがあるのです。その睡眠にあわせて、ママの眠りサイクルも変わっています。
産後は、そろそろ眠りが浅くなってきたから泣くよ…という具合に、赤ちゃんに呼応するようにママも察知できるようになっているんです。
実はこのリズム、出産前の妊娠9ヶ月くらいから始まっています。これはホルモンが、赤ちゃんの夜泣きに備えた練習期間として作用してくれているからなんです。女性の身体ってすごいですよね。
でも、ホルモンの力だけで、夜泣きの悩みを全て解決できる訳ではありません。大変な時はパパに。そしてパパ以外の人にも助けを求めることは大切です。1時間だけでも赤ちゃんを見てもらい、ママがお昼寝できたらずいぶんラクになりますよね。
夜泣きで悩んだ日もいつか良い思い出になる
-最後に、夜泣きで悩んでいるママにメッセージをお願いします。
今、夜泣きで悩んでいるママにとっては、この瞬間がずっと続くような気がしてしまいますよね。
私も、昔は赤ちゃんの夜泣きに本気で悩んだママの1人です。夜泣きがひどくて、私まで泣いたこともありました。
パパも仕事で帰りが遅くて、深夜に泣き叫ぶ赤ちゃんと2人きり。そんなことはないと知りながらも、これが一生続くかもとまで思ったほどです。
時には赤ちゃんをおんぶして、夜の街をひたすら歩き、やっと眠ったかな、とベビーベッドに寝かせると、途端に目を覚まして泣き始めるなんてこともよくありました。
今では、夜泣きで大変だった日々も、振り返ると良い思い出になっています。大丈夫、あなたにもそんな風に懐かしく思い出す日が、きっと訪れますよ。
次回、第4回目は「ワンオペ育児・主人が育児に協力してくれない」というテーマで、お送りします。夫婦間コミュニケーションのコツや、周囲を含めた人間関係を円滑にする方法も紹介します。
志村季世恵
しむら きよえ
バースセラピスト、子ども環境会議代表、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表。妊婦や子育てに悩む母、心にトラブルを抱える人をメインにカウンセリング。その活動を通し「こども環境会議」を設立。1999年からはダイアログ・イン・ザ・ダーク理事となり、多様性への理解と世の中に対話の必要性を伝えている。4児の母。著書に『ママ・マインド』(岩崎書店)、『親と子が育てられるとき』(内田也哉子氏との共著、岩波アクティブ新書)など。
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