妊娠はするものの流産や死産を繰り返す「不育症」。原因が分かれば治療法が分かる場合もあるが、検査するもまったく異常なし。そして現在まで、いつか奇跡的に出産までたどり着けることを信じて、ただひたすら子づくりに励む日々が続く。そんななかで見つけた、養子縁組という、もうひとつの“母になる方法”。そんな43歳の編集者&バンドマンによる不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記。連載27回、3日間の里親認定前研修に参加する。
里親制度のやりとりって面倒……
私たち夫婦が養親登録を申し込んだのは、民間団体のFとB、そして区の児童相談所。Fに関しては、入門研修を受けたのち、書類審査の結果待ちの状態。
Bに関しては、都の里親研修を受けることが登録の条件だった。もちろん児童相談所での登録も、その里親研修を受けなければならない。
そこで、2017年2月に3日間にわたって開催される「東京都里親認定前研修」を申し込んだ。
ちなみに、申し込みが多いため、すぐに締め切りになると聞いたので、私たちは2016年10月の児童相談所での面談時、研修についての説明を受けてすぐ、ファックスで申し込みを済ませていた。
ちなみにちなみに、民間団体FやBと同様、児童相談所に対しても書類を作成して提出する必要があったのだけど、これが、もう、なんだか大変だった。
民間団体がネット上での記入や、パソコンで作成した文書をメールで送付できるのに対して、児童相談所に提出する書類はすべて手書き。確か提出書類は10枚ほどあった。提出は郵送するしかない。
養子縁組をするという同じ目標に向かって起こすアクションにおいて、民間団体とのやりとりに比べると、とにかく面倒。
ここが改善されたら、児童相談所の職員の手間も軽減されるし、登録する側もやりとりに心が折れることはないのではないか、そしたら養親になりたい人も増えるのでは、とか思ってしまう。
3日間の里親認定前研修
兎にも角にも里親研修受講。これは、本当に、学ぶところが多くて、受ける価値ありまくりの研修だった。
1日目は10時から15時30分まで、1時間単位の座学を、昼食休憩を挟みつつ、4テーマ受ける。
1テーマ目は社会的養護や、その制度について、都の里親担当である育成支援課の方が説明。
2テーマ目は保護を必要とする児童への理解を深めるため、養護原理について児童相談所の所長さんが説明。
3テーマ目は子どもの病気に対応できるよう、乳児院の院長さんが小児医学について教えてくださった。
4テーマ目は発達臨床心理学。子どもの心がどのように発達していくかを学び、親としてどのように接すればいいかを学んだ。
そして2日目は、さらに盛りだくさんの内容だった。
午前中は、子どもを取り巻く社会環境を知り、里親としてどうあるべきかを考える児童福祉論などについて学び、午後からはグループに分かれてディスカッションなどを行った。
実際に養子縁組里親として登録して、養子を迎え入れた方の話や、児童相談所で働く方の話も聞くことができた。
記憶に残っているのは、登録できたとしても、都合よくすぐに赤ちゃんと出会えるわけではないということ。
登録して、児童相談所からの連絡を待って、待って、やっと連絡がきたけど、こちらのタイミングが合わずに断念して、さらに待って、待って、待って……やっと、ということもあるようだ。
養子縁組の話があるまで、根気よく待つということも、養親になるために重要なことなんだな、と思った。
私たちと同様、研修を受けたご夫婦の体験談も聞くことができ、さまざまな背景があって、養子縁組を目指している方々がたくさんいるのだと、改めて知ることもできた。
その多くが、私たちのように不妊治療に限界を感じて……という背景だったように思う。もちろん、人それぞれ、いろんな想いを抱えて、参加しているのだけど。
そして3日目は、乳児院を見学させていただいた。
乳児院には、どんな子どもが何人くらいいて、どんな風に生活しているのか、スタッフはどのように接しているのか。それを間近で見ることができた。
子どもたちは、年齢ごとに生活する部屋が分かれていて、印象的だったのは2〜3歳の子たち。
私たちも子どもたちの遊びに参加したのだが、当たり前のことながら、全員が顔も性格もまったく違っていて、そのバラバラな様子がめちゃくちゃ面白い。
どんな子が我が家に来てくれても、絶対に面白いだろうな。そんな風に妄想できる。
帰り際、「また来てね」という子どもの言葉が、胸にチクリと沁みた。
続きは第28回にて。
写真のこと:行きつけの寿司屋の大将から競艇の面白さを説かれ、翌日に夫婦そろって平和島へ。マークシートが記入しやすい手すり付きのベンチなど、目にするすべてが興味深い。そして、ボート自体のパワーや選手の力量など、いろんな要素から勝敗を見極めるレース……めちゃくちゃ面白いやんけ! 負け越しましたけども!
吉田けい
よしだ けい
1976年生まれ。編集者・バンドマン。2010年、6歳下の夫と婚前同棲をスタートして早々に、初めての妊娠&流産を経験。翌年に入籍するも、やっとの妊娠がすべて流産という結果に終わる。その後、自然妊娠に限界を感じ、40歳になる2016年に体外受精を開始。2018年11月、構成・編集を手がけた書籍『LGBTと家族のコトバ』(双葉社)を出版。