不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記「うんでも、うまずとも。」

【連載第23回 うんでも、うまずとも。】子どもの虐待について思う


妊娠はするものの流産や死産を繰り返す「不育症」。原因が分かれば治療法が分かる場合もあるが、検査するもまったく異常なし。そして現在まで、いつか奇跡的に出産までたどり着けることを信じて、ただひたすら子づくりに励む日々が続く。そんななかで見つけた、養子縁組という、もうひとつの“母になる方法”。そんな43歳の編集者&バンドマンによる不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記。連載23回、少しずつ養子縁組の仕組みを頭に入れつつ、7回目の採卵。

ほとんどが産みの親に……

吉田けい うんでも、うまずとも

民間団体F主催の「夫婦のための特別養子縁組入門研修」を受け、年間12万人以上の子どもが虐待を受けていることを改めて知り、愕然とした。

厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」によると、虐待死してしまった0歳児のうち、生まれた日に死亡した子は87%。加害者は実母が87%。そのうち、望まない妊娠は80%。

つまり、亡くなった赤ちゃんのほとんどが、望まない妊娠を理由に産みの親に殺されてしまっている。

……文字にするのさえも、つらい。

前回も書いたように、社会的養護が必要となる子どもの産みの親には、いろんな事情がある。虐待に陥ってしまった事情もさまざまだろうと思う。

でも、自分が産んだ子どもを喜んで手にかける親はいないと思う。

きっと、どうすることもできず、苦しんで苦しんで苦しみながら……そうなってしまったのだと思う。

それでも、どんな事情であれ、手にかけてしまったら、子どもを殺した犯罪者になってしまう。

たとえ、レイプされて妊娠してしまったのだとしても、難病を抱えていて育てられなかったのだとしても。

そんな悲しいことってあるか……!

自分が育てられないのであれば、誰かに育ててもらう方法があるのだと、その産みの親が知ってたら、そんなことにならなかったかもしれないのに。

私は、「子どもの虐待を減らしたいから育ての親になりたい」なんてことを言うつもりはない。

もちろん、虐待はなくなってほしいと思う。

けど、私は「親になりたいけど産めないから産まれた子どもを育てたい」。

それだけ。

母に似た孫を待っている父

入門研修を受けたあと、民間団体Fから電話があり、ようやく初めてのヒヤリングが行われた。

研修で感じたことや、養子を迎えた際の育児方針などを聞かれたと思う。でも、育児方針なんてものは考えてなくて、子どもが「産まれてきてよかった」と思えるように育てたい……くらいしかなかった。

いちばん突っ込んで聞かれたのは、養子縁組について両親の理解があるかどうか。

そこでようやく、「あ、親に言ってねーや」と気づいた。

そういえば、母のことが大好きな父は、うちら夫婦の未来の子どもを勝手に想像して、「お母さんそっくりな女の子がいいなぁ」と言うくらいに、母と私と孫との血のつながりを楽しみにしているような人だ。

血のつながらない孫を愛してくれるだろうか。

電話ヒヤリングがあったのは12月。ちょうど1月にお互いの実家に帰省しようと思っていたので、そこでゼロから説明しようと思った。

が、わずか2日の滞在期間のうちに、ちゃんと説明ができて、理解してもらえる自信がない。

そこで、以前私が夫から受け取った養子縁組の本を双方の実家に送りつけておき、あえて詳しく説明せずに「これ読んどいて〜」とメールを送信しておいた。

実家に帰ったら、ゼロではなく、イチから説明することにした。

そんな風に慌ただしく過ごしていた2017年の年末。実は並行して7回目の採卵を行なっていた。

2個採卵できて、正常に受精したけれど、どちらとも凍結前に成長が停止してしまった。

体外受精は、またゼロスタートか……。

続きは第24回にて。

写真のこと:1月に我が家に迎え入れたウメモドキの枝。2月になったら小さな芽が出てきた……! 懸命に生きようとしている姿が、めっちゃ愛おしい! 春になったら挿し木にチャレンジしてみよう! 切り花が挿し木できるのか、分からないけど……。

【連載第24回 うんでも、うまずとも。】血のつながらない孫

【連載第24回 うんでも、うまずとも。】血のつながらない孫


【連載第22回 うんでも、うまずとも。】育ての親のための入門研修

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吉田けい

吉田けい

よしだ けい


1976年生まれ。編集者・バンドマン。2010年、6歳下の夫と婚前同棲をスタートして早々に、初めての妊娠&流産を経験。翌年に入籍するも、やっとの妊娠がすべて流産という結果に終わる。その後、自然妊娠に限界を感じ、40歳になる2016年に体外受精を開始。2018年11月、構成・編集を手がけた書籍『LGBTと家族のコトバ』(双葉社)を出版。