不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記「うんでも、うまずとも。」

【連載第12回 うんでも、うまずとも。】不安だらけの“異常なし”


妊娠はするものの流産や死産を繰り返す「不育症」。原因が分かれば治療法が分かる場合もあるが、検査するもまったく異常なし。そして現在まで、いつか奇跡的に出産までたどり着けることを信じて、ただひたすら子づくりに励む日々が続く。そんななかで見つけた、養子縁組という、もうひとつの“母になる方法”。そんな42歳の編集者&バンドマンによる不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記。連載第12回、夫婦で受けた不育症検査の結果について。

不育症検査の結果は?

吉田けい うんでも、うまずとも。
検査を受けた1ヶ月後、結果を聞くため、西新橋のJ病院を訪れた。

もしも私か夫の体に、妊娠を継続することができない原因があるのなら、知っておきたい。治療できるものなら、すぐにでも治療を始めたい。

もう2度と、せっかく私のお腹に宿ってくれた命を、理由も分からず失うのはイヤだ。やっと妊娠したのに、また流産するかもしれない、と怯えながら過ごしたくない。

血液凝固機能に異常がある人は、胎盤に血栓が生じて早産や死産を招くと聞いた。自己免疫異常がある人は、胎盤の発育がうまくいかないのだと聞いた。

でも、どちらもアスピリンやヘパリンを服用することで治療できる可能性があるらしい。

私たちの身体にも、治療可能なナニカが潜んでいるのか?

夫と一緒に診察室に入り、検査結果について医師から説明を受けた。

結果は………………………………………………………………、異常なし。

私は肩を落とした。安堵からじゃなかったと思う。3度の妊娠がすべて流産という、まったく誇れない実績をもつこの身体で、これからも子づくりを続けなければならないということに対する不安からだった。

「本当に、何も異常ないんですか? 本当に?」

だって、3回も流産してるんですよ? たまたまとは言えなくないですか? 私は食い下がった。

すると医師は「うーん。あえて挙げるとしたら、血液を固める機能の数値が少し高めかな」と言った。

「でも、数値は標準値の範囲内。他に流産を招く原因となることが見当たらないので、これが原因となっているかもしれないし、なっていないかもしれない。治療が必要な数値ではないけれども、不安要素は消したいということならば……治療をしてみますか?」

アスピリンに期待を

血液を固める機能が高めならば、血液が固まらないようにサラサラにする薬を飲めばいい。医師が勧めてくれたのは、バイアスピリンという錠剤だった。

しかし。

治療が必要ではないのに薬を飲む。その点で、私は治療に対して気が進まなかった。実は、もともと私は病院ギライの薬ギライ。ほとんどの体調不良は、医者や薬に頼らず自力で治せると思っている人間だ。

それなのに、必要でないかもしれない薬を飲むのか……。

治療を開始すべきかどうか、私は迷っていた。

でも、ちょっと待って。これってそもそも“治療”なの? 治すところがないのに???

答えが出せないままの私に、夫は言った。「事態が好転する可能性がちょっとでもあるのなら、やってみる価値はあると思う」

そっか。何もしないよりはマシかもしれない。

バイアスピリンの副作用はほとんどない(でも、ゼロじゃない)らしいし、血液サラサラになるなら、妊娠に限らず、肩こり解消とか冷え性改善とか、いろんな健康効果が期待できるんじゃないの?

そんな風に、前向きな考えも浮かんだ。

頑固な私には珍しいくらい、夫のひと言で心が決まった。きっと、私も何もしないままで子づくりを続けることが怖かったのだと思う。

そして2015年3月、バイアスピリンによる抗凝固療法を開始した。

高温期に入ったら毎朝1錠飲み、生理がきてしまったら一時中断。そして、また高温期に入ったら毎朝1錠ずつ飲む。その繰り返しだ。

ちなみに、妊娠したとしてもバイアスピリンは31週6日まで飲み続けなければいけない。胎児への影響はほとんどないと説明を受けたけど……やっぱり不安。

とはいえ、胎児への影響を考えるのは、まだ気が早い。まずは血液サッラサラにして、以前よりも妊娠しやすい身体に整えようではないか! おーっ!

そうして私と夫は、力を込めた腕を高らかに振り上げた(くらいに意気揚々とした気分だった)。

バイアスピリンの効果を期待しつつ、続きは第13回にて。

写真のこと:元気が出ないときは花を買って、家に連れて帰る。すると家族が増えた感じがして、なんだか元気が出るのです。この花はケイトウ。名前を忘れちゃって、「花」「脳みそ」で検索してしまった。

【連載第13回 うんでも、うまずとも。】LGBTと子づくりと

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【連載第11回 うんでも、うまずとも。】不育症検査デトックス

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吉田けい

吉田けい

よしだ けい


1976年生まれ。編集者・バンドマン。2010年、6歳下の夫と婚前同棲をスタートして早々に、初めての妊娠&流産を経験。翌年に入籍するも、やっとの妊娠がすべて流産という結果に終わる。その後、自然妊娠に限界を感じ、40歳になる2016年に体外受精を開始。2018年11月、構成・編集を手がけた書籍『LGBTと家族のコトバ』(双葉社)を出版。