保育園の「保育料無償化」を詳しく紹介する企画の後編です。
後編の今回は、保育園の保育料無償化に伴う以下の疑問を全国私立保育園連盟に答えていただきます。
- 保育の質が下がるのでは?
- 保育士が足りなくなるのでは?
- 無償化の前に保育園を増やすべきでは?
- いつ正式な説明があるのか?
- 無償化の対象が狭まることはあるのか?
なお、前編は以下をご覧ください。
保育園の保育料無償化の疑問2:
保育の質が下がるのでは?
待機児童の増加と同じくらい多かったのが、保育の質が下がることを懸念する声でした。
−保育園の保育料を無償化したら、入園児が増えて保育士一人当たりの負担が大きくなり、保育の質が下がる気がします。
塚本さん
多くの保育園では、保育の質を確保するために基準よりも多く保育士を配置しています。
ですが、保育園の保育料を無償化すると、保育ニーズの増大と保育士不足が相まって、保育の質が下がる懸念は高まりますね。
−それに対し、何か対策は取っていますか?
塚本さん
保育園の保育料無償化が原因で保育の質が下がるということは、あってはならないことです。
そのため、政府は保育士の処遇改善や、保育士確保のための政策を進めていますし、自治体も研修の拡充などに取り組んでいます。
保育事業者も、保育士が研修を受けやすい環境を作ったり、ノンコンタクトタイム(保育士が勤務の中で直接子供と関わらず事務的作業などに充てられる時間)の確保などに努めていますよ。
保育園の保育料無償化の疑問3:
保育士が足りなくなるのでは?
保育園の保育料を無償化すると、入園児が増えて保育士の人手が足りなくなることも考えられます。
−保育園の保育料を無償化すると、保育士不足もより深刻化するのではないかという不安の声も上がっています。
塚本さん
保育士不足は、保育園の保育料が無償化されてない現在でも極めて深刻な状況です。
全国的に保育園の存続が危ぶまれるほど、保育士の数が足りていません。より条件のいい補助のある自治体に保育士が偏る、という現象も起きています。
−どのような対策を取っているのでしょうか?
塚本さん
保育事業者ごとに、保育園を働きやすくするための環境づくりや、今保育士として勤めている人が定着しやすくしたり、保育士として働いたことがある人に復職を勧めたりしています。
また、保育士養成学校の実習に協力したり、保育士就職フェアへの参加といったことにも取り組んでいますよ。
保育園の保育料無償化の疑問4:
無償化の前に保育園の数を増やすべきでは?
保育園の保育料を無償化する財源があるのであれば、それを使って先に保育園の数を増やしてほしいという声も少なくありません。
仕事に復帰したくても復帰できないママや、保活で負担のかかっているママからすると切実ですよね。
−保育園の保育料無償化よりも先に保育園の数を増やしてほしいという声があります。
塚本さん
それぞれ目的が違うので、なかなか難しいと思います。
保育園の保育料無償化の目的は、子育て世代の経済的負担を軽くすることで、出生率を維持・向上させることが目的です。つまり少子化対策ですね。
一方、保育所を増やして待機児童を解消する目的は、女性の就業率の上昇に対応することにあります。
だから、保育園の保育料無償化と保育園数の増加を同じ土俵で考えることはできないんですよ。
−限られた財源の中でどちらかを優先すると、一方に影響が出るのではないでしょうか?
塚本さん
日本の子育ての現状からすると、保育園の保育料無償化は、すべての家庭に対してではなく、本当に必要な家庭から行わざるをえません。
一方、すべての子供の育ちを支えるという観点からすると、保育園などの保育施設を増やすといった待機児童対策に財源を充てるべきです。
そのような立場から見ると、保育園の無償化は、待機児童対策を滞らせる心配がありますね。
保育園の保育料無償化の疑問5:
いつ正式な説明があるのか?
多くの人が注目している保育園の保育料無償化ですが、未だ保護者に対して正式な説明がありません。一体、いつ頃されるのでしょうか。
−保育園の保育料無償化について、保護者向けの正式な説明はいつ頃あるのでしょうか?
塚本さん
具体的な時期は私どももわからないのが実情です。
厚生労働省は、保育園の保育料無償化についてわかりやすい資料を作り、保育園や保護者向けに配布するとしていますが、具体的な時期はまだ示されていません。
ただ、平成31年度の政府当初予算には、保育園の保育料無償化のための予算支出の項目があるので、保育料無償化実施のための準備が進められているのは間違いないと思います。
保育園の保育料無償化の疑問6:
無償化の対象が狭まることはあるのか?
保育園側にもまだ正式な説明がされていないとのことですが、今後、保育園の保育料無償化が適用される条件が変更になったりすることはあるのでしょうか。
自分の子供が無償化の対象だと思っていたのに、後から条件が変更されて、対象外となってしまったら悲しいですよね。
−保育園の保育料無償化が実施される前に、適用される条件が厳しくなったり、対象年齢が引き上げられたりすることはあるのでしょうか?
塚本さん
保育園の保育料無償化の対象を減らす検討がされているという話は聞きませんね。
むしろ政府は、0〜2歳の低所得世帯の対象条件を広げることを考えているようですよ。
保育園の保育料無償化の動向をチェック!
全国私立保育園連盟の見解を読んで、納得できたという人もいれば、まだまだ疑問が解消していないという人もいると思います。
どちらにせよ、保育園の保育料無償化の動向に注目し、実施されるとなったときにすぐ対応できるように心の準備をしておきたいですね。
前編はこちら
取材協力
公益社団法人全国私立保育園連盟
全国各地の私立の認可保育園からなる団体。各地域における保育ニーズや、保育をとりまく状況を把握して、制度や運営のありかた、保育内容の充実のために活動している。