不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記「うんでも、うまずとも。」

【連載第34回 うんでも、うまずとも。】子宮内膜ポリープ手術<前日編>


妊娠はするものの流産や死産を繰り返す「不育症」。原因が分かれば治療法が分かる場合もあるが、検査するもまったく異常なし。そして現在まで、いつか奇跡的に出産までたどり着けることを信じて、ただひたすら子づくりに励む日々が続く。そんななかで見つけた、養子縁組という、もうひとつの“母になる方法”。そんな43歳の編集者&バンドマンによる不妊治療と養子縁組の泣き笑い日記。連載34回、ラミナリアの痛み、再び。

ラミナリアとの涙の再会

吉田けい うんでも、うまずとも。

流産手術後の安静期間を終え、「いざ体外受精にリトライ!」と意気込んで新宿Kクリニックに来た私を、待っていたのは子宮内膜ポリープだった。

「このまま様子を見るか、すぐにでも手術をして取ってしまうか」

どちらかの選択を迫られた。

体外受精を続けるために養子縁組の受け入れをストップしていることで常に焦燥感があったし、できるものならば1年でも1ヶ月でも1分でも1秒でも私の体が若いうちに妊娠したい気持ちもあった。

子宮にポリープがあるせいで、うまく着床できないこともあるという。

私には“様子を見る”なんて時間はない。

1も2もなく「すぐに手術します」と答えた。

手術は、本当に“すぐ”、3日後に決定。

翌々日には前日処置のため、再びKクリニックを訪れた。

受付を済ませ、渡された診察券を見てみると、「前ラミ」と印字された紙が添付されていた。

ラミ………、ラミってラミナリアでしょ!!!! 
“前”日に“ラミ”ナリアを突っ込むってことでしょ!!!!!

4度目の流産の手術でラミナリアを突っ込まれた時の、意識が遠のき、吐き気がするほどの痛みがよみがえる。

子宮内膜を手術するには、普段は固く閉じられている子宮口を海藻などでつくられた棒「ラミナリア」を突っ込んで広げる必要がある。

必要なんだけど、やらなきゃいけないのだけど。
途端に、手術を受けるのが怖くなった。

さっきまで、お尻のイボをチョイッと取るくらい感覚で、待合室で待っていたのに……。

なんとか平静を装い、内診室に入り、股を開いて処置を待つ。

「器具が入りますよ〜」

先生と看護師さんの優しい声とは裏腹に、クスコ的な器具が問答無用にグイグイと膣を押し広げる。

その後、グッグッグッとラミナリアが突っ込まれた。

「!!!!!!ッ!!!」

思わず上半身を起こしてしまうほどの激痛。

「気分は大丈夫ですか?」と看護師さんに聞かれるも、痛すぎて声が出ない。

滲み出た涙が頬を流れ、やっと絞り出した言葉が「…吐きそうです……」。

処置が終わり、トイレに向かおうとするも、膝が震えてうまく歩けなかった。

クリニックのトイレで籠城

這うようにしてトイレの便器に辿りつき、吐き気と便意と戦った。

上からと下から、少しだけ吐き出すことができた。

それでもまだ痛みは引かない。

便器に座りすぎて足がしびれてきた。

太ももを抱えるようにして便器に座り続けて20分ほど経った頃、Kクリニックから着信があった。
どうやら私は探されているようだ。

でも、まだ動けない。

手足はしびれ、氷のように冷たい。

そうこうしているうちに看護師さんがトイレまでやってきた。

私を呼ぶ声に、やっとのことで答え、トイレの横にある休養室に連れて行ってもらうことになった。

お手数をおかけして申し訳ない……。

ロキソニンを飲ませていただき、毛布をかぶって、あたたかなリクライニングシートに横になり、ようやくライフゲージが少しずつ回復していく感覚があった。

そのうちに夫から「いまクリニックに着いたけど、どこにいるの?」とメールが。

看護師さんには夫が迎えに来ることを伝えてあったので、夫に状況をメールし、休養室まで看護師さん同行の上で来てもらった。

結局、1時間ほど休ませていただいてから帰宅。

吐き気はずいぶんと収まったが、下腹部には鈍くて重い痛みが残ったまま。

ロキソニンは前の服用から5時間経たなければ飲めない。

「もう飲んでいいかな、もういいかな」と、ずっと時計を見つめていた。

細い棒を数本突っ込まれただけなのに、この大ダメージ。
手術当日に対する恐怖がむくむくと膨らんでいった。

続きは第35回にて。

(ラミナリアの処置に対する痛みは人によって差があるそうです)

写真のこと:実は、まだシカゴに滞在中です。朝は語学学校へ、昼は原稿を書き終えてから湖畔でギターを弾き、夜はブルースクラブをはしご。冬は極寒らしいですが、夏は極楽って感じです。湖からの風が気持ち良い〜〜〜。


【連載第33回 うんでも、うまずとも。】10回目の採卵、いかに

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【連載第32回 うんでも、うまずとも。】心拍停止、6回目の流産

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吉田けい

吉田けい

よしだ けい


1976年生まれ。編集者・バンドマン。2010年、6歳下の夫と婚前同棲をスタートして早々に、初めての妊娠&流産を経験。翌年に入籍するも、やっとの妊娠がすべて流産という結果に終わる。その後、自然妊娠に限界を感じ、40歳になる2016年に体外受精を開始。2018年11月、構成・編集を手がけた書籍『LGBTと家族のコトバ』(双葉社)を出版。