職場復帰にあたって「断乳」を検討したり、乳歯が生えそろってきて「卒乳」を意識し始める人もいるのではないでしょうか。
ですが、「断乳」と「卒乳」のどちらが赤ちゃんやママに合っているのかは、状況によって異なります。
そこで、助産師の河井先生に「卒乳と断乳の決め方」について教えてもらいました。
先輩ママの体験談も併せて紹介するので、赤ちゃんとママに合った方法を選ぶ参考にしてくださいね。
そもそも断乳と卒乳の違いとは?
「卒乳」とは、赤ちゃんが母乳を卒業して飲まなくなることを言います。
一方、「断乳」とは、ママや家族が期限を決めて、母乳を飲ませるのをやめることを言います。
WHO(世界保健機関)では、2歳ごろまでは母乳育児を続けることを勧めています(※1)。
母乳は栄養のためだけでなく、子どもの精神的な安定やスキンシップにもなるという考えからのようです。
ですが、ママの職場復帰や薬の服用、2人目の妊娠、おっぱいのトラブルから断乳を選択する人も少なくありません。
断乳と卒乳、どちらが多いの?
ninaru babyで、すでに卒乳・断乳をした人、これからする予定の人にアンケート(※)をとったところ、断乳がわずかに多い結果となりました。
断乳を選択したママの多くが、その理由に職場復帰や2人目の妊娠・妊活を挙げていました。
どちらがよい・悪いではなく、卒乳と断乳は家庭の事情から判断していることがわかります。
断乳と卒乳、いつしたの?
「卒乳」と回答したママに、いつ頃したのかを聞いたところ、多くの赤ちゃんが1歳前後に卒乳していることがわかりました。
この頃になると、栄養は3回の離乳食から摂るようになります。ママやパパと一緒に食べるご飯がおいしくて、自然とおっぱいから卒業できる赤ちゃんも多いようです。
「断乳」と回答したママにも、いつ頃したのかを聞いてみました。上のグラフを見比べると、実は、断乳と卒乳の時期に大きな差はないことがわかります。
「断乳」する時期には、おっぱいを卒業する準備がすでにできていた赤ちゃんが多いのかもしれませんね。
《助産師監修》
断乳・卒乳の決め方チェックリスト
助産師の河井先生に、断乳と卒乳の決め方について教えてもらいました。
ちなみに、かつては母子手帳に「断乳」という記載がありましたが、2002年からは「卒乳」という表現だけが使われるようになっています。
□赤ちゃんもおっぱいを飲みたがっている
□3回の離乳食で栄養を摂れている
□夜もしっかり眠れている
□ママのおっぱいにとくに問題はない
□断乳を検討する理由がない
□夜泣きがひどく、睡眠不足が続いている
□妊娠している、もしくは希望している
□保育園に預ける予定がある
□ママが薬を服用する予定がある
□ママのおっぱいにトラブルが多い
断乳を検討したとしても、すぐに断乳できるわけではありません。
断乳を選択する場合、赤ちゃんやママに負担がなるべくかからないようにするために、いくつかクリアする条件があります。
断乳をするためにクリアする条件とは?
断乳をしても、赤ちゃんが十分な栄養と水分を摂れる状態にあることが、絶対の条件になります。
● 離乳食は固形物もしっかり噛める
● 栄養の8割は、離乳食から摂れている
● 体重の増え具合に問題がない
● 赤ちゃん、ママの体調が悪くない(持病がある場合は、主治医からOKが出ている)
1歳を過ぎてもおっぱいが栄養の中心になっている場合は、離乳食の量を少しずつ増やしていくようにしましょう。
ただ、赤ちゃんが食材を噛むことや消化することに慣れていない可能性もあります。
以下の記事を参考にして、赤ちゃんに無理のないように離乳食の割合、離乳食の量を増やしていってくださいね。
先輩ママに聞きました!
実際、断乳・卒乳でよかったですか?
それぞれの事情で断乳・卒乳を選んだママたちに、その選択に後悔はなかったか聞いてみました。
赤ちゃんのペースに任せる「卒乳」のほうがややよい結果となりましたが、全体では大きな差はありません。そして、断乳・卒乳のそれぞれを選択したことを、後悔しているママは1人もいませんでした。
断乳したママの体験談
ご飯をよく食べるようになりました
うちは、2人目を考えていたので1歳で断乳しました。下の子におっぱいをあげている様子を見て寂しそうな表情をするので、「ごめんね…」と思ってしまうことも。
でも、断乳後はごはんをよく食べるようになったし、朝までぐっすり眠れるようになったので、断乳してよかったと思っています。
naruママ
生活リズムが整いました
離乳食もしっかり食べられていたこと、虫歯が心配だったことから1歳で断乳しました。
断乳したことでもっと食欲が旺盛になり、さらに、長く眠れるようになったので生活リズムも整いました。
なつママ
卒乳したママの体験談
自然に止められたので楽でした
わが家は、1歳4ヶ月のときに卒乳しました。離乳食をしっかり食べるようになったので、「そろそろかな?」と思っていたら、自然とおっぱいとバイバイ。
おっぱいを欲しがって泣くこともなかったので、精神的にも楽でした。
ぴょこママ
少し子離れできました
息子が自然とおっぱいを飲まなくなり、卒乳しました。それまでは、添い乳で寝かしつけをしたり、とにかくおっぱいが大好きでした。
きっと、私がいつまでも踏ん切りがつかなくなりそうだったので、息子が背中を押してくれたのかな?と思っています。
アルママ
教えて!助産師ママ
「断乳ってかわいそうですか?」
断乳を検討しているママからは、「赤ちゃんが泣くと聞いて、心が痛い」という声も聞かれます。
おっぱいとバイバイすることを、赤ちゃんはどのように感じているのか、助産師の河井先生に教えてもらいました。
おっぱいとのバイバイは成長の一つです
ママが断乳を検討したり、卒乳を意識する中で、赤ちゃんが激しく抵抗を示すことなく受け入れた場合は、ちょうどいいタイミングだったと考えてください。
おっぱいとバイバイできることは、赤ちゃんにとって成長の一つです。寂しく思ったり、中には罪悪感を抱いてしまうママもいるかもしれませんが、前向きに喜んであげましょう。
ある程度の年齢になると、母乳は体の栄養から心の栄養に変わると言われています。心の栄養は、抱っこやハグ、笑顔で接する、一緒に遊ぶなど、毎日の生活の中で十分に与えることができますよ。
赤ちゃんとママの状況で断乳・卒乳を選ぼう
とくに断乳をする必要がなくても、周りの人からの一言で「そろそろおっぱいをやめた方がいいのかな…」と思ってしまうママもいるようです。
断乳と卒乳は、どちらがよい・悪いではなく、赤ちゃんとママの状況で選ぶことが大切です。
今回のご紹介した断乳・卒乳の決め方と先輩ママの意見を参考に、赤ちゃんとママにとってよい方法を選んでくださいね。
もし、気になることがある場合は、母乳外来などで相談してもいいですね。
取材協力:河井 恵美
助産師、看護師/エミリオット助産院
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。救急、外科外来等も経験し、看護師教育や思春期教育にも関わっていました。助産師の仕事が大好きで、25年以上この仕事をしています。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。2008年から夫の仕事関係により、シンガポールに住んでいます。2人の子どもを育てつつ、現地の産婦人科に勤務し、日本人の妊産婦さん方に関わっています。
※アンケート概要
実施期間:2019年2月7日~2019年2月10日
調査対象:「ninaru baby」を利用しているママ
有効回答数:220件
収集方法:Webアンケート