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君のことも優くんのことも信じてる|幡野広志「ラブレター」第25回


2017年末に余命3年の末期癌と宣告された写真家の幡野広志さん。この連載は、3歳の息子と妻をもつ36歳の一人の写真家による、妻へのラブレター。

子育ての目的は自立をさせること

コピーライト 幡野広志

「親はいつまでも子どものことが心配なのよ」

親子の絆のあらわす美しい言葉のように聞こえるかもしれないけど、34歳の妻が60歳をすぎたお義母さんにいわれていて違和感をおぼえた。

たしかにお義母さんは心配なんだろう。自分の娘の旦那が病気で助かる見込みはなく、3歳の幼子もいる。
ぼく自身が心配の種になっているから、あまりエラそうなことはいえないけど、よくもまぁなんの疑問も抱かずに親の心配を子どもにぶつけられるものだ。

親の不安や心配というのは、子どもにとってストレスにしかならない。
子どもが幼いころは出来ないことがある、それを出来るようにしてあげることが子育てだ。
子育ての目的は簡単にいえば自立をさせることだとおもう。

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子育てなんておおげさなことではなく、職場での新人教育とおなじことだ。
仕事の流れとやり方を教えておぼえてもらい、自分で考えて仕事をしてもらう。
新人の動きが遅いからと先輩がなんでもやってしまったり、新人が心配だからと一挙手一投足をチェックして口出していたら新人は息苦しい。

子どもだって新人だって数年すればなんでも出来るようになる。
すぐに親や先輩と肩を並べて、そのうちに追い越すのだ。
親や先輩を追い越してくれるから、社会はどんどんよくなる。
最悪なのは自分を追い越させないような教育だ。

お義母さんがいつまでも妻のことが心配なのは、妻が母になり成長していることに気がつかないか、妻のことを信じていないからだろう。

自立させることが目的なら、信じることが手段なのだ。

心配の種がエラそうにいうことじゃないとおもうんだけど、解消させない心配ってじつは迷惑なんだよね。
心配ならば、まずは信じてあげればいいのに。

ぼくはどんどん生きやすくなる

コピーライト 幡野広志

病気になったばかりのころは君と優くんの将来のことが心配だった。
申し訳ないなとおもっていたし、あせってもいたとおもう。

いまはどうかと聞かれれば、まったく心配はしていないし、申し訳なさはサラサラないし、心はいつも穏やかで落ち着いている。

身体的な病状がよくなったわけでもないのに、心理的にはどんどんよくなっているのは、周囲の環境がおおきいのだと実感をします。
君と優くんが成長をしているおかげだとおもいます。

優くんには失敗を恐れずに挑戦をして、失敗したらカバーできる人になってほしいと考えていた。
それができるような人になるように、ぼくたちなりの教育を優くんにしていたけど、3歳になった優くんはなんでも自分でやろうとして、問題がおこれば問題を解決しようとする子になった。

三つ子の魂百までってことわざがあるけど、本当かどうかはわからないけど、もしも3歳の魂が100歳まで続くのならば、ぼくたちはよくやったんじゃないかな。

コピーライト 幡野広志
優くんの成長を実感するたびに、ぼくの心配は消えていく。
心配が消えていくと、ぼくはどんどん生きやすくなる。

心配の種がエラそうにいうことじゃないけど、ぼくがのんびりと子育てができないぶん君も大変だったとおもうけど、二人ともよくやったよほんと。
もうほとんど子育ては達成したとおもうよ。

ぼくがいなくなっても君も優くんも自立できる、だからぼくは心配はしていない。
ぼくは君のことも優くんのことも信じてる。

また書きます。

なんで僕に聞くんだろう。幡野広志
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幡野広志

幡野広志

はたの・ひろし

1983年生まれ。
写真家・猟師。妻と子(2歳)との3人暮らし。2018年1月、多発性骨髄腫という原因不明の血液の癌(ステージ3)が判明。10万人に5人の割合で発症する珍しい癌で、40歳未満での発症は非常に稀。現代の医療で治すことはできず、余命は3年と診断されている。 https://note.mu/hatanohiroshi